6速MT×左ハンドルの「カナダのWRX」とは! ここ数年、スバルは「そんなクルマが欲しいよね」という声が社内で出ても、「できない理由ばかりで先に進まない」ということが多かったと聞きます。 いわゆる規模が大きくなると起きる“企業病”ですが、そんなやり取りを何度も見てきたCTOの藤貫哲郎氏はこのように反省しています。MTを搭載するカナダの「WRX スポーツ」「あえてスバルを選んでくださるお客様のために、何をすべきなのかを真剣に考える必要があり、いま社内で色々議論しているところです。【画像】超カッコいい! これがMT仕様の「スポーツAWD」です!(30枚以上) これは『我々がやりたい』ではなく、『お客様が望んでいることをやっていく』ということだと思っています。 それは何かというと、『拡張性』と『柔軟性』だと思っています。 直近で言えば今ある技術アセットをうまく使った魅力あるクルマ、もうちょっと先にはさらに尖ったクルマを作っていきたい」 お客様が望んでいることは、恐らくスポーツAWDのMTモデルでしょう。 2019年の「WRX STI(VAB)」の生産終了以降、日本市場のWRXは「S4」(=2ペダルモデル)のみの設定となっています。ちなみに海外向けには6速MTの設定が用意されているのは、スバル好きには周知の事実です。 ただ、日本では「台数が出ない」「ユーザーは騒ぐほど買わない」という課題もあり、導入はされていません。 一方で、スバルが将来に向けて掲げた「ブランドを際立たせる」の実現のためには、ラインナップがあったほうがいいと筆者(山本シンヤ)は考えています。 そんななか、スバルから「左ハンドルのWRX、それも6速MTの広報車を用意したので、乗りませんか?」というお誘いが……。「なぜ、このタイミングなの?」ということは後で記しますが、貴重なチャンスですので早速乗ってみました。 今回のモデルはカナダ仕様の中で最もベーシックな「WRXスポーツ」になります。ちなみに日本仕様(WRX S4)に対してステアリングが左になっただけでなく、細かい仕様・装備などが異なります。 エクステリアは「GT-H」グレードに近い印象ですが、リアに装着されるサイドマーカー、前後の「WRX」エンブレムが異なります。ほかにも、ヘッドランプがフルLEDじゃない、リアワイパーレスなど細かい部分で違いが見られました。カナダ仕様の「WRX」のMTシフト インテリアはパッと見は日本仕様と同じように見えますが、センターコンソールは6速MT専用となっており、手引きサイドブレーキの装着も相まってレイアウトが異なります(VABに似ている!?)。 そのため、近代的なインパネ上部とのマッチングには苦労の跡が見て取れました。 さらにメーターはアナログ式、SIドライブ無し、リアヘッドレストが大型、助手席シートが手動式、ドアミラーが格納機能無しなど、装備もシンプルです。日本でMTのWRX復活か!? カナダ仕様のWRXスポーツのパワートレインはWRX S4と同じ2.4リッター水平対向4気筒ターボ「FA24」ですが、出力は271hp(275ps)/350Nmと、日本仕様(275ps/375Nm)よりもトルクが低い理由は、トランスミッションに合わせたセットアップとしたからです。 また、搭載される6速MTはWRX STIに搭載されていた「TY85」(約700Nmまで対応)ではなく、「レガシィ」などに搭載されていた「TY75」(約360Nmまで対応)がベースとなっており、トルク容量の観点からスペックが抑えられているそうです。MTを搭載するカナダの「WRX スポーツ」 スペック重視の人からは「何だよ!」と言われそうですが、カナダ仕様のMT車に実際に乗ると実用域は日本仕様よりもターボラグが少なく、ドライバビリティの良さが光ります。 また、MTならではのダイレクト感も相まって、小気味良さすら感じる回転フィーリングとレッドゾーンの6000rpmまでストレスなく回る伸び感など、「FA24ターボって、こんなに良かったっけ?」と思うくらい好印象。 とはいえ、重箱の隅を突くと、ゼロ発進時に若干トルクの細さやパンチの薄さを感じますが、「モッサリ→スッキリ」になったエンジン特性で帳消しです。 6速MTは軽い操作感で、シフトストロークは他社スポーツ系のそれと比べると若干長めですが、「カチっ」よりも「スコっ」といった節度感のフィーリングは、洗練されたエンジンフィールとマッチしています。ただ、クラッチは最近のクルマにしてはやや重めです。 エンジンレスポンスが過敏でないのとペダル配置もいいので、シフトダウン時の回転合わせは楽ですが、最新モデルらしくブリッピング機能はあっても良かったかなと思いました(ハイパフォX(ST-Qクラスに参戦中の開発車両)には装着されている)。 もちろん、アイサイト(ACC+ステアリング制御)も装備されているので、ロングドライブも苦になりません(30km/h以下で全車追従がキャンセルされるのはBRZのMT車と同じ)。 フットワーク系はフルインナーフレーム構造のスバルグローバルプラットフォーム(SGP)、ジオメトリー最適化のサスペンション、2ピニオン式EPSをはじめとする基本部分は同じですが、4WDシステムはMT車用のビスカスLSD付センターデフ方式AWDを採用。サスペンションのセットアップは仕向け地の嗜好に合わせたものとなっています(タイヤは変更無し)。 その走りは、AWDとは思えない「一体感」と「コントロール性」、そして「良く曲がる」という点は日本仕様と変わりませんが、ステア系は俊敏さを重視、サスペンションは硬めなのに加えて、コーナリングの“様”は日本仕様よりもより自然、かつスッキリ曲がる印象です。 この辺りはシンプルなAWDシステムによるものが大きいと予想していますが、まさに素性の良さが滲み出てくるハンドリングだと思います。 味付けのイメージ的には、スポーツとコンフォートのバランスが、日本仕様は6:4なのに対して6.5:3.5くらいのバランスで、個人的には日本の路面では日本仕様より軽快さがあるもののバネ下の重さ(若干ドタバタ)が気になりましたが、海外でのWRXのキャラクターを考えるとわかりやすさは大事でしょう。 日本仕様のWRX S4は、良くも悪くも“背伸び”をしたAWDスポーツですが、左ハンドル6速MTの海外モデルは等身大のAWDスポーツセダンといった印象です。 確かにスペック的には劣るところもありますが、そこはカスタマイズパーツでカバーできる範囲。そういう意味では、“美味しい素うどん”を食べた満足感に近いかもしれません。※ ※ ※ 冒頭の、なぜこのタイミングで海外仕様のMTのWRXの試乗のお誘いがあったのか、ということですが、この記事を見た「スバルファンの反応を確認したい」と考えると素直だと筆者は推測します。 つまり、この仕様に近いモデルが日本でも間もなく登場する可能性があり、もちろんカナダ仕様のような素のモデルというわけにはいかず、なんらかの“プラスα”があると思っています。そして、Xデーはそう遠くないと思っています。 ちなみに2025年12月25日に、スバルは「東京オートサロン2026」の出展概要を発表していますが、ブースのイメージ画像を見るとセンターに置かれたモデルが真っ黒なシルエットとなっており、車種が判別できません。 なお、その車両の後ろのスクリーンにはWRX S4の走行シーンが映し出されていますが、ということは……。東京オートサロン2026での発表を楽しみに待ちましょう。【画像】超カッコいい! これがMT仕様の「スポーツAWD」です!スバル新型「小型SUV」まもなく発売! 斬新ツルツル顔ד光る六連星”エンブレム採用! 338馬力の高性能4WDもある新型「アンチャーテッド」米国で発表!MTのみ! スバル「凄い“4人乗り”スポーツカー」に購入希望殺到! 究極のエンジン×シフトアシスト機能を搭載! 限定車「BRZ STIスポーツ タイプRA」が争奪戦に!