かつてWRCを席巻した「セリカ」が復活へと動き出した。2024年11月のラリージャパンのステージイベントでのトヨタ担当役員による「セリカやります!!」という発言から始まったセリカ復活騒動。長年ファンから待ち望まれてきたセリカの復活だが、関係者の話によれば、本当に開発は進んでいるという。はたして、新型セリカはどのような姿で登場するのか、期待と現実のあいだにある現在地を整理してみよう。【画像ギャラリー】GRヤリスの究極形!! オジェ仕様のワールドチャンピオンエディションをチェック!!(12枚)文:吉川賢一/写真:TOYOTA、ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部復活説の発端は「セリカ、やります!」発言 「セリカ復活騒動」の発端は、2024年11月のラリージャパン開催中に行われたベストカー主催のステージイベントだった。観客の多くがWRCファンという状況のなか、豊田章男会長に「セリカ出るんですか?」という直球の質問が投げかけられ、豊田会長は「僕は会長でCEOでもないから、執行(役員)に聞いてみよう」と、隣にいた中嶋裕樹トヨタ自動車副社長(商品担当)に振り、その中嶋副社長から「やります!」という言葉が飛び出したのだ。 この発言が「復活宣言」と受け止められ、「セリカ復活」が一気に拡散したのだが、この場は正式な発表の場ではなく、具体的な車両像や開発スケジュールが示されたわけでもない。実際、その後に「まだ白紙状態で、いまは影も形もない」という趣旨の発言もあるなど、当時の時点で、量産確定プロジェクトとして確定していなかった可能性もある。 それから1年が経過したが、いまもセリカ復活に関する公式発表も、具体的な開発スケジュールも示されていない。ただ、車名が公の場で肯定的に語られ、完全否定もされていないという事実は重い意味を持つし、どこまで進んでいるのかはわからないが、ベストカーが入手した情報では、開発は確実に進んでいるという。少なくとも「完全な与太話」ではないことだけは確かなようだ。93年と94年にマニュファクチャラー選手権を連破したグループAの5代目セリカ(ST185型)GRヤリスとの「世代交代」として登場か 新型セリカが市販されるとすれば、最大の論点は「ポジション」だ。現在のトヨタGRラインアップには、ライトウェイトスポーツのGR86、ハイパワースポーツのGRスープラ、コンパクトスポーツ4WDのGRヤリス、5ドアハッチのスポーツ4WDのGRカローラ、さらにはフラグシップスポーツのGR GTまでがそろっている。この充実したラインアップのなかに、単純なスポーツクーペとして新型セリカを追加しても、役割が曖昧になる可能性が高いのは明らか。 セリカという車名に多くのファンが重ねるのは、ST165型やST205型GT-FOURに象徴される「WRCベース車」というイメージだ。もしその文脈で復活するなら、ラリー活動との強い結びつきが求められるが、現在ラリーの象徴的存在はGRヤリスだ。セリカがその役割を担うとすれば、GRヤリスの立ち位置をどう整理するのかという問題が生じる。役割の継承か、棲み分けか。それともまったく異なる方向性を打ち出すのか。 筆者は、セリカをラリーの象徴として再定義し、それと入れ替わるかたちでGRヤリスが第一線を退くというシナリオがもっとも筋が通っていると考えている。輝かしい戦績を築いてきたGRヤリスが引退するのは寂しいが、世代交代と考えれば、仕方のないことかもしれない。国内外のラリーレースで活躍し続けるGRヤリスセバスチャン・オジエ選手通算9回目のドライバーズチャンピオンを記念したGRヤリス特別仕様車のインテリアハッチバックか、2ドアクーペかという永遠のテーマ 搭載されるパワートレインは、GRヤリスの1.6L直列3気筒ターボエンジンと4WDシステムの発展型が有力視されている。コンパクトながら高出力を誇るこのユニットは、ラリーとの親和性も高く、走りのセリカ復活というイメージとも合致する。WRCのハイブリッド規定に合わせてベースモデル側も電動化される可能性も高いだろう。「ミドシップレイアウト」など大胆な構想も噂として語られているが、量産前提で考えるとコストや販売台数規定といった現実的なハードルは小さくない。夢のあるパッケージと市場性のバランスをどこで取るのかは焦点になる。 もっとも感情を揺さぶるテーマがボディ形状だ。近年のWRC車両はハッチバックが主流で、競技上の合理性は明らか。しかし、セリカと聞いて思い浮かぶのは、低く流れるような2ドアクーペのスタイリングだろう。理屈を取るか、伝統を取るか。この選択は単なるデザイン論ではなく、「セリカとは何か」というブランド定義そのものに直結する。ここに新型セリカ最大の難しさがあり、デザイナーと開発チームの腕の見せどころとなるだろう。SEMAショー2024に登場した、次世代ラリーマシンのコンセプトカー。GR86ベースに4WDを搭載したマシンだった◆ ◆ ◆ セリカは単なる過去の名車ではなく、トヨタのモータースポーツ史そのものを象徴する存在だ。もし復活するのであれば、それは単なるノスタルジー商品ではなく、現代の技術と市場環境を踏まえた再定義になるはず。トヨタの技術力と企画力、そしてファンに対する本気度に大いに期待したい!!