全長約4.3m、1.6L自然吸気エンジン、電動化なし。南米でデビューした日産の新型コンパクトSUV「カイト」は、最近の日産のSUVとしては珍しく、肩の力を抜いた成り立ちの一台です。サイズも装備も価格も、無理をしない。その「割り切りのよさ」は、車両価格の上昇が続く日本市場から見ても、参考になる点は少なくありません。 ■従来型キックスをベースとする姉妹車新型「カイト」は、日産がラテンアメリカ市場向けに投入したコンパクトSUVです。ベースとなっているのは、従来型キックス(P15型)。プラットフォームやパワートレインを共有する姉妹車という位置づけになります。ボディサイズは、全長約4,300mm×全幅1,760mm×ホイールベース2,620mm。キックス(4,290×1,760×1,605mm)とほぼ同等で、いわゆるBセグメントSUVとして王道の寸法。ラゲッジ容量も432Lとキックス(2WD)と同値で、9インチのゴルフバッグなら3個積載可能とされています。特別に大容量というわけではありませんが、日常使いから週末のレジャーまでを無理なくカバーできる、実用性を最優先にまとめられたパッケージといえます。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 全長約4.3mという扱いやすいボディサイズは、都市部での取り回しを重視したもの。最近のコンパクトSUVとしては、むしろ新鮮に映る ■デザインと装備は「盛らない」けれど、足りなくもないエクステリアは、基本骨格こそキックス譲りですが、バンパー下部を強調したSUVらしい造形や新デザインのLEDヘッドライトなど、フロントマスクを中心に大きく手が入れられています。テールランプや17インチホイールも従来型キックスとは異なるデザインが採用されており、明確に差別化されている印象です。一方で、Vモーショングリルの要素は残されており、日産SUVとしてのアイデンティティもきちんと守られています。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 派手な演出はないが、Apple CarPlayや運転支援機能など、日常で必要な装備はきちんと押さえられている。過不足のないまとめ方が印象的だ インテリアも同様で、華美な演出はないものの、インパネやメーター周りの意匠を刷新し、質感の底上げが図られています。8〜9インチのマルチメディアディスプレイはApple CarPlay/Android Autoに対応。全方位カメラや自動ブレーキ、車線逸脱防止支援といった運転支援機能も用意されており、ラテンアメリカ市場で求められる装備水準はしっかり満たしています。「最新装備で驚かせる」タイプではありませんが、日常で不足を感じる場面は少ないという「肩の力を抜いたつくり」が、このクルマらしさといえます。 ■パワートレインは1.6L+CVTながら、エタノール混合燃料にも対応するフレックス燃料仕様パワートレインは、1.6リッター直列4気筒エンジンにエクストロニックCVTを組み合わせた構成。最高出力はガソリン使用時で110PS、最大トルクは146Nmと、数値的には突出したものではありませんが、カイトは、ガソリン専用ではなく、エタノール混合燃料にも対応するフレックス燃料仕様である点が特長です。 1.6L自然吸気エンジン+CVTという堅実な構成に、フレックス燃料対応を組み合わせた点が特徴。価格と実用性を優先した割り切りが見て取れる 燃料価格の変動幅が大きいラテンアメリカでは、燃料を選べること自体が実用性につながり、電動化をあえて採用せず、既存技術を活かし切ることで車両価格とランニングコストの両立を図るという設計思想はきわめて現実的。実際、価格はエントリーモデルで約11万7,990ブラジルレアル(約333万円)からと、従来型キックス(P15型)とほぼ同水準に設定されています。現地ではすでに新型キックス(P16型)の販売が始まっていますが、その価格は約16万6,990レアル(約471万円)からと、新型カイトの1.4倍。カイトは、最新モデルでありながら、あえて価格を抑える方向で成立させたモデルなのです。 ■ぜひ国内向けにもこうした「割り切り」を!!サイズや装備、パワートレイン、価格というすべてにおいて無理をせず、実用性とコストのバランスを最優先に考えた新型カイト。その成り立ちは、車両価格の上昇が続く日本市場においても、ぜひ参考にしたい考え方です。最新技術を盛らなくても、日常はちゃんと回る。肩肘を張らず、使う人の現実に寄り添う。日産には、こうした姿勢を国内向けモデルにも期待したいです。Text:吉川賢一 Photo: 日産