三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 三菱デリカD:5 P(4WD/8AT) 一周回って人気者 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。 やはり売れている 撮影のために出かける山の中や海辺などのアウトドアフィールドでよくご一緒するおなじみさんが三菱の本格4WD車だった。さすがに最近は、いかついボディーをウインチやアニマルバーでさらにたくましく装った「パジェロ」や「デリカ スペースワゴン」を見かけることは減ったが、「車中泊」が話題になったちょっと前から代わりに目立つようになったのが「ランクル」や「RAV4」などの人気SUVに交じったデリカD:5である。今も根強い常連客に支えられているのだな、とは感じていたが、実際にいつの間にかお客さんが増えているらしい。 紆余(うよ)曲折あった三菱は今ではずいぶんとモデル数が絞られているが、そのなかで現行型デリカD:5の販売台数はじわじわと増えており、2024年は2万2000台、昨2025年はおよそ2万4000台を販売(自販連の車名別ランキングでは29位で三菱の登録車トップ)、過去最高台数を更新したというから驚きだ。何しろ現行型デリカのデビューは2007年、その後何度か大規模なマイナーチェンジを加えられているとはいえ、もう19年目なのである(「日産GT-R」と同い年!)。その余勢を駆ってというわけではないだろうが、2025年12月にまたもマイナーチェンジが行われた。再びデリカの時代がやって来たのかもしれない。 他に似たものがない デリカD:5には当初ガソリン車もFWDモデルも存在したが、2019年のビッグマイナーチェンジ(あの“電気シェーバー”顔を採用)の際にパワートレインは現行のディーゼル4WDに一本化されており、グレードも今や「G」「Gパワーパッケージ」「P」と3種類のみ(全車に2列目キャプテンシートの7人乗りと8人乗り仕様を設定)、先日のマイナーチェンジで価格は30万円ほど上昇しているが、それでも最上級グレードのPで500万円を切っている(主要なオプションはカーナビぐらい)。自動車の価格が軒並みアップするなかで、性能装備の割に比較的手ごろであることも人気の理由だろう。今回はスタッドレスタイヤを履いたそのPで、解け残った雪道を探して信州を目指した。 従来のデリカの特徴は力強さを押し出したフロントグリルに大きすぎないボクシーなボディー、シートアレンジなどの多用途性、そしてたくましいトルクを生み出すディーゼルターボに本格的な4WDパワートレインというもの。と並べるとなるほど同類はない。発進時だけモーターが後輪をアシストする“ちょっとだけ4WD”ではなく、前後アクスルが機械的に結ばれた本格的な4WDミニバンとなると、今やデリカしか残っていないのだ。 滑らかでたくましいディーゼルターボ マイナーチェンジを受けた新型は、“シェーバー顔”よりもギラギラ感が抑えられたフロントグリルに加え、リアもバンパーやガーニッシュのデザインを一新してたくましさを演出している。末っ子というべき「デリカミニ」の好調に倣ったデザイン変更と見て取れる。またホイールアーチモールが追加され、そのために全幅は従来型よりも20mm(1815mm)拡大されている。 パワートレインは従来どおりの2.3リッター直4ディーゼルターボ+8段ATである。4N型ディーゼルターボは(2.4リッター版の4N16は「トライトン」や「日産キャラバン」にも搭載)、2012年のマイナーチェンジでデリカにも搭載された三菱の主力ディーゼルユニットで、可変ジオメトリーターボやオフセットクランク、精密燃料噴射などのトレンド技術を備えるうえに2019年の大幅改良時に尿素SCRシステムが搭載され、同時にATが6段からスポーツモード付き8段に進化している。 今回のマイナーチェンジではパワーユニットについては言及がないものの、実際に乗ってみると、おやっと思うほど従来よりも洗練されている印象を受けた。最高出力&最大トルクは145PS/3500rpmと380N・m/2000rpmと特に目覚ましいものではないが、ほぼ2tの車重に対して非常に扱いやすく、しかもトップエンドまで滑らかに静かに回る。快適に遠くまで(できれば経済的に)移動したいアウトドアファンには打ってつけではないだろうか。電子制御カップリング式のデリカは「エコ」モードを選ぶと基本的にFWD走行となるが、直進性にも乗り心地にも不満はない。というより他の車高の低いミニバンよりもむしろ安心して高速走行できた。 ちょっぴりレトロがむしろいい? インテリアは基本的には従来型を踏襲しているが、メーターはアナログからデジタルに一新され、センターコンソールに備わるドライブモード切り替えのダイヤルが「エコ」「ノーマル」「グラベル」「スノー」に変更されている点が新しい(以前は「2WD」「4WDオート」「4WDロック」だった)。今回デリカにもヨーコントロールやスタビリティーコントロール、4WDシステムを統合制御する三菱自慢の「S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)」が搭載されているのだ。 ただし、シャーベット状の雪が日陰に残るだけの山道ではその威力を十分には試せなかった。というより、ブリヂストンの最新スタッドレスである「ブリザックWZ-1」がこのような“ゆるい”雪では思いのほか心もとなかったのだ(どうも最新タイプはアイスバーン優先らしく、それ以外は従来型よりもちょっと不安だ)。あらためて言うまでもないが、本格的4WDシステムとはいってもあらゆるコンディションでフールプルーフなわけではない。 とはいえ開発された時代を感じさせる部分もやはりある。ステアリングコラムにはテレスコピック機能が備わらず、チルトも調整幅が大きくない。したがってドライビングポジションはキャブオーバー型ワンボックスのように、ステアリングホイールをやや上から抱えるような姿勢となるから、乗用車ベースのSUVやミニバンに慣れている人は戸惑うかもしれない。 3列目シートも左右にはね上げる操作が重く渋く、慣れが必要だ。いかにも昔のクロスカントリービークルを思わせるが、こういうちょっと洗練されていない“道具感”がむしろ魅力なのかもしれない。かつてのパジェロやデリカに比べれば軟派になったというオジサンたちもいるけれど、何しろ今や他に同類は存在しないのである。 (文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=三菱自動車) テスト車のデータ 三菱デリカD:5 P ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4800×1815×1875mm ホイールベース:2850mm 車重:1980kg 駆動方式:4WD エンジン:2.3リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ トランスミッション:8段AT 最高出力:145PS(107kW)/3500rpm 最大トルク:380N・m(38.7kgf・m)/2000rpm タイヤ:(前)225/55R18 102Q/(後)225/55R18 102Q(ブリヂストン・ブリザックWZ-1) 燃費:12.9km/リッター(WLTCモード) 価格:494万4500円/テスト車=582万0760円 オプション装備:オリジナルナビ取り付けパッケージII<ステアリングオーディオリモコンスイッチ、ステアリングハンズフリー/ボイスコマンドスイッチ、ステアリングカメラスイッチ>(2万2000円)/後席モニター取り付けパッケージ(9900円) ※以下、販売店オプション ブラックエンブレムパッケージ<フロントエンブレムパッケージ、リアエンブレムパッケージ>(5万8520円)/アルパイン製デリカD:5専用11型ナビゲーション(34万4300円)/12.8型後席用モニター<ルーフ取り付けタイプ>(14万8500円)/フロアマット<吸遮音機能付き>(10万0100円)/前後ドライブレコーダー<スタンドアローン>(12万6170円)/ETC2.0車載器<専用ナビゲーション接続用>(6万3470円)/三角停止表示板(3300円) テスト車の年式:2025年型 テスト開始時の走行距離:2524km テスト形態:ロードインプレッション 走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2) テスト距離:560.3km 使用燃料:52.3リッター(軽油) 参考燃費:10.7km/リッター(満タン法)/11.2km/リッター(車載燃費計計測値)