発売から18年が経過しても、なお販売台数を伸ばし続ける驚異のミニバン、三菱 デリカD:5。なぜこれほどまでにデリカD:5は売れるのでしょうか? この記事では、カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが、デリカD:5が好調な理由を徹底分析。さらに、2025年12月に実施された最新のマイナーチェンジによるデザインや走りの進化点、グレード構成まで詳しく解説します。 三菱 新型デリカD:5 外観18年経過しても販売倍増! デリカD:5が売れている4つの理由 今の日本車は、発売されてから6年前後を経過すると、フルモデルチェンジを受けて新型になります。ところが三菱 デリカD:5は、2007年に発売されてから、一度もフルモデルチェンジを行っていません。 (左から)ビックマイナーチェンジ前の三菱 デリカD:5、2019年のビッグマイナーチェンジ後の三菱 デリカD:52019年にフロントマスクからエンジンまで幅広く刷新していますが、基本的に同じクルマを18年間にわたり造り続けています。 そのデリカD:5が、改めて比較的規模の大きな改良を実施しました。変更点の話をする前に、まずはデリカD:5が現在どれくらい売れているのか、その実績を整理してみましょう。 そして、なぜ18年を経過してもこれほど堅調に販売されているのか、その理由を探っていきます。 販売から売れ行きを維持し、15年経過時に異例の「販売倍増」 デリカD:5が長寿を保っている直接の理由は、売れ行きが下がらないからです。 現行デリカD:5は前述の通り2007年に発売され、2010年の1か月平均登録台数は約1270台でした。 この後、2015年には約930台、2020年も約930台でしたが、2025年1〜11月には約2000台まで跳ね上がっています。デリカD:5は、2022年ごろから売れ行きを増やしました。 発売から15年以上を経過した車種が、登録台数を2倍以上に増やすのは、きわめて珍しいことです。デリカD:5は、三菱の小型/普通車カテゴリーでは、国内で最も多く売られています。 三菱の販売店舗は全国に約520箇所あり、トヨタの約12%です。販売網の規模で換算すると、三菱の1か月平均2000台という販売実績は、トヨタなら1万8000台に相当します。 また、販売急増の背景には、2019年に実施された大幅な改良に加えて、特別仕様車の追加なども挙げられます。野性的な雰囲気の特別仕様車として、シャモニーやジャスパーがあり、精悍なブラックエディションも設定されています。 三菱 デリカD:5 シャモニー(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)理由1:ライバル不在! 「SUVのようなミニバン」の独自性 デリカD:5が以前から根強い人気を得ている一番の理由は、ほかのミニバンでは得られない複数の魅力があり、ライバル車が不在であることです。 デリカD:5ならではの魅力として、筆頭に挙げられるのは、ミニバンでありながらSUVのようなクルマ造りをしていることです。フロントマスクには野性味があり、大径タイヤも装着され、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は185mmに達します。 三菱 デリカD:5の悪路走破イメージ(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)このボディには、悪路のデコボコを乗り越えやすいメリットもあります。 デリカD:5の4WDシステムは、以前から悪路走破力を高める4WDロックモードを装着するなど、SUVに準じた機能を備えています。デリカD:5は、外観が野性的なだけでなく、悪路走破力の高いミニバンが欲しいユーザーにとっても唯一の選択肢です。 理由2:国産ミニバン唯一のディーゼルエンジン 直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載することも、デリカD:5の大切な特徴です。現時点で新車として販売されている国産ミニバンで、ディーゼルを搭載する車種はデリカD:5だけです。 三菱 デリカD:5の走行イメージ(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)デリカD:5のディーゼルは、最大トルクの38.7kg-mを2000回転で発生させます。実用回転域で、3.5Lのガソリンエンジンに相当する駆動力を発揮するため、力強い運転感覚を味わえます。 しかもディーゼルが使う軽油の価格は、レギュラーガソリンに比べて1L当たり20円ほど安いため、燃料代は2.0Lのノーマルガソリンエンジンを搭載するトヨタ ノア&ヴォクシーや日産 セレナの4WDよりも安く抑えられます。 (左から)トヨタ ノア、トヨタ ヴォクシー, 日産 セレナ(左から)トヨタ ノア、トヨタ ヴォクシー, 日産 セレナ理由3:ミドルサイズミニバンNo.1を誇る3列目の居住性 デリカD:5は居住性も優れています。身長170cmの大人6名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間が握りこぶし2つ分になるようスライド位置を調節した場合、デリカD:5では3列目の膝先に握りこぶし3つ分の余裕ができます。 三菱 デリカD:5の3列目シート(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)ちなみにライバル車のノア&ヴォクシーは握りこぶし1つ半、ホンダ ステップワゴンは2つ分、セレナは2つ半です。 トヨタ ノア&ヴォクシーの3列目シート, ホンダ ステップワゴンの3列目シート, 日産 セレナの3列目シートトヨタ ノア&ヴォクシーの3列目シート, ホンダ ステップワゴンの3列目シート, 日産 セレナの3列目シートトヨタ ノア&ヴォクシーの3列目シート, ホンダ ステップワゴンの3列目シート, 日産 セレナの3列目シートLサイズミニバンのトヨタ アルファード&ヴェルファイア、日産 エルグランド、ホンダ オデッセイを除くと、3列目の居住性はデリカD:5が最も優れています。 これらの機能的な特徴を備えるために、デリカD:5の人気は根強いのです。 理由4:SUVブームと圧倒的なリセールバリュー 市場環境としては、最近はSUVが注目されています。トヨタ ハリアーやヤリス クロスのような都会的なSUVが膨大に増えた結果、トヨタ ランドクルーザーやスズキ ジムニーノマドのような悪路向けのSUVに人気が集まっています。 トヨタ ランドクルーザー250, スズキ ジムニーノマドトヨタ ランドクルーザー250, スズキ ジムニーノマドこの市場動向も、野性味を表現しているデリカD:5の人気を押し上げました。 以上のようにデリカD:5は人気が根強く、価格は400万円を超えるため、中古車を希望するユーザーも多いです。その結果、デリカD:5は高値で売却することが可能で、デリカD:5を何台も乗り継ぐユーザーが多いです。 販売店のスタッフは「今なら200万円で下取りできます、とお客様に提案すると、乗り替えていただけることが多いです」とコメントしました。 デリカD:5では、残価設定ローンの3年後の残価は新車価格の55%です。一般的には40〜48%が多いため、デリカD:5は高い部類です。ローンを終了した車両を中古車市場で高値で販売できるため、残価設定ローンの残価も高く設定されています。 新型デリカD:5(マイナーチェンジ)の4つの進化点 デリカD:5は、三菱にとって国内の主力車種です。デリカD:5の商品力をさらに高めるため、2025年12月に比較的規模の大きな改良を実施しました。 進化点1:外観と内装 今回の改良により、デリカD:5はどう変わったのでしょうか。まずは外観と内装の進化点から見ていきましょう。 外観の進化点 新型デリカD:5のフロントビュー最も注目される変更点は外観でしょう。従来型は標準ボディとアーバンギアに分かれ、前者のフロントグリルはメッシュ状でした。 (左から)三菱 デリカD:5(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)のアーバンギア、標準ボディ改良後はアーバンギアはなくなり、標準ボディのフロントグリル、フロントバンパー、リアバンパーをシンプルに仕上げています。 新型デリカD:5のリアビュー,三菱 デリカD:5(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)のリアビュー新型デリカD:5のリアビュー,三菱 デリカD:5(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)のリアビューリアゲートに装着された「DELICA」のロゴは、横長のガーニッシュ(装飾パネル)に組み込んでいます。以前はロゴをガーニッシュの下に配置して豪華に見せていましたが、改良後はシンプルです。 新型デリカD:5のサイドビュー,三菱 デリカD:5(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)のサイドビュー新型デリカD:5のサイドビュー,三菱 デリカD:5(2019年ビッグマイナーチェンジモデル)のサイドビューボディの側面には、ワイドなホイールアーチモールが張り出しています。これにより外観が従来以上に力強い印象になりました。 新型デリカD:5の18インチタイヤ・ホイール新しいデザインの18インチアルミホイール、グレーとブラックの2トーンボディカラーなども採用しています。 内装の進化点 新型デリカD:5のインパネ,新型デリカD:5の8インチカラー液晶メーター新型デリカD:5のインパネ,新型デリカD:5の8インチカラー液晶メーター内装では8インチのカラー液晶メーターが備わり、金属調の装飾を配置するなど質感も高めています。 新型デリカD:5の1列目シートシートには撥水加工を施したスエード調の素材と合成皮革を使うなど、見栄えや肌触りも良くなっています。 進化点3:「S-AWC」採用で走りも強化 新型デリカD:5のドライブモードセレクター新型デリカD:5の走行性能に関係するメカニズムでは、全車に標準装着される4WDを「S-AWC」に進化させました。 走行モードは、ノーマル、エコ、グラベル(デコボコの少ない未舗装路)、スノーに分かれています。走行状態に合った走行モードを選べます。 電動パワーステアリングのセッティングとタイヤも変更することにより、操舵感や静粛性を向上させました。動力性能や足まわりの基本的な設定に変化はありませんが、運転感覚や乗車感覚を洗練させています。 進化点4:自転車や障害物検知など安全性も向上 新型デリカD:5の衝突被害軽減ブレーキは、自転車の検知が可能になり、車両付近の障害物をメーター表示と音で知らせるパーキングセンサーも装着しました。 ドライバーの死角を補うマルチアラウンドモニターは、車両の両側と先端部分を見せる両サイドビュー+フロントビュー画面、車両を上空から見たように表示するマルチアラウンドビュー+透過フロントサイドビュー画面なども備わります。 両サイドビュー+フロントビュー表示, マルチアラウンドビュー+透過フロントサイドビュー表示両サイドビュー+フロントビュー表示, マルチアラウンドビュー+透過フロントサイドビュー表示新型デリカD:5のグレード展開とおすすめグレード グレード展開と価格 新型デリカD:5のグレードは以前に比べてシンプルで、ベーシックな「G」(451万円)、中級の「Gパワーパッケージ」(474万6500円)、上級の「P」(494万4500円)の3つです。 従来型に比べると、装備の充実などによって、GとGパワーパッケージは約19万円、Pは約27万円値上げされました。 おすすめグレード 推奨グレードはGパワーパッケージです。運転席の電動調節機能、ステアリング/前席シートヒーターなどを標準装着しています。 Gパワーパッケージを選び、安全性を高める後側方車両検知警報、後退時交差車両検知警報のセットオプション(5万5000円)を装着すると良いでしょう。 新型デリカD:5の納期 気になる納期は、販売店によると「改良を受けたデリカD:5の納期は3〜4か月で、半年には達しません」とのこと。あまり待たずに買えることも、デリカD:5が人気を得た理由のひとつでしょう。 【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:森山 良雄/茂呂 幸正/和田 清志/MOTA編集部 画像提供:三菱自動車】 2026〜2027年登場予定の新型車18選! 価格や発売日を予想・解説【全75枚】三菱「新型デリカD:5」を写真でイッキ見! 気になる内装・外観デザインをチェックついに復活! 新型パジェロの予想価格は530万円~! なぜ今なのか? いつ登場する?