08/09/2025 · 7 日前

ホンダの新型「プレリュード」試乗 シビックTYPE Rゆずりのシャシーが生み出すグライダーのような乗り味とは?

2025年9月4日 発表

伊豆修善寺の自転車の国サイクルスポーツセンターにて新型プレリュードに試乗する機会を得た

ハイスピードなシーンで新型プレリュードに試乗

ついにホンダの新型プレリュードが登場した。以前プロトタイプをテストコースで試乗した模様をお伝えしたが、今回はもう少し現実的といえる伊豆修善寺の自転車の国サイクルスポーツセンターが舞台となる。前回試乗した状況とは違い、もう少しハイスピードなシーンを試せそうだ。

試乗前にさまざまなことがようやく明らかにされた。事前の予想通り、シャシーは「シビックTYPE R」のものをベースとしつつ、パワーユニットは「シビックe:HEV」という構成で登場となった新型プレリュード。

新型プレリュード。ボディカラーはフレームレッド

ボディサイズは4520×1880×1355mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2605mm、トレッド幅はフロント1625mm、リア1615mm、車重は1460kg

ボディサイズを見てみると、プレリュードの全長×全幅×全高は4520×1880×1355mm、ホイールベースは2605mm、車重は1460kgとなる。ちなみにシビックTYPE Rの全長×全幅×全高は4595×1890×1405mm、ホイールベースは2735mm、車重は1430kgだ。

トレッドはともに共通でフロント1625mm、リア1615mm。e:HEVのパワーユニット、そしてリアアンダーにバッテリを搭載することもあり、シビックTYPE Rの重量までは軽くならなかった。だが、ホイールベースをトレッドで割るアスペクトレシオ比はおよそ1.6を実現し、旋回性重視な設定となる。この数値は「CR-X」や「S2000」「CR-Z」、そして「NSX」に近い数値。直進安定性方向の数値を示すシビックTYPE Rの1.68とは違っている。

装着タイヤはコンチネンタルタイヤの「Premium Contact6」でサイズは235/40R19

シビックTYPE Rと同様のシャシーを使用することもあり、基本構成はデュアルアクシス・ストラットサスペンションとアダプティブ・ダンパーシステムという組み合わせも変わらない。だが、ロール剛性はやや落とされており、スプリングレートやダンパー減衰力セット、そしてスタビライザー剛性やリアコンプライアンスブッシュはややしなやかな方向にセット。

タイヤも19×8.5Jの大径ホイールを採用しているが、235/40R19サイズのコンチネンタルタイヤの「Premium Contact6」をチョイスしている。これだけを見ても狙っているところはシビックTYPE Rとは大きく異なることが理解できる。

ただ、細かなところでいえばステアリングシャフト径もシビックTYPE Rと同等の剛性の高いものが採用されており、フィーリング面に気を遣った仕上がりであることは間違いなさそうだ。

ステアリングはDシェイプ形状で、12時の位置にアルカンターラのワンポイントが入る

シートはとてもホールド性が高いが、助手席のみ両ももを支えるサイドパッドが乗り降りしやすいように柔らかい仕様となっている

それはグランドコンセプトに「UNLIMITED GLIDE(アンリミテッド・グライド)」という言葉を掲げているからだろう。「どこまでも行きたくなる気持ちよさ×非日常のときめき」を大切にしたというプレリュードは、動力を使わず滑空していくグライダーを走りも見た目もモチーフとしている。

グライダーは上昇気流を読み、それを捕まえながら遠くまで飛んでいくものらしいが、その時の反応のよさは絶品なのだとか。パイロットの意思にきちんと反応を示し、狙った通りに上昇気流を捕まえるグライダーのように走りたいということなのだろう。シャシーを程よく引き締めたことで、これなら日常域からワインディングまで、いつでもどこでも手の内に入りそうな気がする。

ドライブモードは、「コンフォート」「GT」「スポーツ」「インディビジュアル」の4つ

「Honda S+Shift」OFF状態のGTモード

「Honda S+Shift」OFF状態のスポーツモード

「Honda S+Shift」ON状態のスGTモード

「Honda S+Shift」ON状態のスポーツモード

一方、パワーユニットのe:HEVは、基本的な部分ではシビックe:HEVとの変化はない。最高出力104kW(141PS)、最大トルク182Nmで燃費は23.6km/Lをマーク。モーター出力は135kW(183PS)、最大トルク315Nmとなる。だが、シビックe:HEVと圧倒的に違っているのは「Honda S+Shift」を採用している点だ。

このe:HEVのエンジンは基本的に発電機として使っているため、極端にいえば常にマックス回転で回し続けているほうが出力は得られる。だが、そうは使わず有段ギア(8速想定)の変速フィーリングを生み出しているところが興味深い。

搭載する直列4気筒2.0リッターエンジンは、最高出力104kW(141PS)/6000rpm、最大トルク182Nm/4500rpmを発生。電気式CVTに内蔵されるモーターは最高出力135kW(183PS)/5000-6000rpm、最大トルク315Nm/0-2000rpmを発生する

アップシフトを行なう際には瞬間的にモータートルクを抜いて段つき感を与え、次のギアに見立てたトルクを瞬時に与えることで、キレのよさを生み出している。一方でダウンシフト時にはブリッピングを行なってくれるところが面白い。

かつてのリニアシフトコントロールにはこの部分がなく、単に回生ブレーキが強くなるだけだったところが残念だった。それがどう改善されているのかが楽しみだ。また、ASC(アクティブ・サウンド・コントロール)は、リアに備えられたサブウーファーから排気音を奏でることで、より気持ちのいいサウンドを感じさせてくれるという。

新たに「Honda S+Shift」が採用されているのがポイント

シビックTYPE Rとはまるで違う世界観

コンフォートモードはとてもマイルドでフラットな乗り味

さて、事前説明を受けてついに試乗だ。程よくホールドしてくれるドライバーズシートに収まり走り出す。適度にタイトな空間と、フロントフェンダーの盛り上がりにより車幅感覚がつかみやすい視界は、タイトなワインディングでギリギリまで行けそうだ。

まずは「コンフォートモード」に入れて静かに走ってみる。乗り心地はとてもマイルドであり、けれどもフワつかずにフラットな乗り味だ。パワーユニットはバランサーシャフトもあってか滑らか。このモードではASCは音を出していないため静粛性も高い。

続いて「GTモード」に入れてみると、足まわりは少し引き締まり、パワーユニットのレスポンスはややよくなってきた。アクセルをグッと入れればASCが動きだし、少しクルマが目覚めてきた感覚がある。ロングドライブで運転を楽しむならこのモードということなのだろう。すべてがバランスされた感覚だ。このようにサイクルスポーツセンターの初めの1周はこんな感じで穏やかに走ることで駆動用バッテリの充電はバッチリ。F1の予選アタック前の充電ラップの感じか!?

GTモードはロングドライブで運転を楽しむのによさそうだ

2周目に入ったところで、いよいよ「スポーツモード」を試す。足まわりもパワーユニットもASCもすべてのキャラクターが一転するかのようなこのスポーツモードは、思わず笑みがあふれる感覚だ。

キビキビとした身のこなしはとても気持ちよく、回頭性が豊かになったことを味わえる。シビックよりも130mmも短くなったホイールベースの恩恵は肌で感じられるもので、リアタイヤがよくついてくるところが心地いい。

スポーツモードはキビキビとした身のこなしが気持ちいい!

前述した昔の名車たちが頭に浮かんでくるほどだ。足は引き締められたとはいえガチガチにはならず、ピッチもロールも程よく残してあるところが好感触。荷重がどの車輪に乗っているかを常に感じながらワインディングを駆け抜けることが気持ちいい。

こうした動きを後押ししているのが「アジャイルハンドリングアシスト」だ。フロントイン側のブレーキをわずかに使い、ロールの抑制やコーナリングのアシストを行なうというシステムだが、プレリュードでは初めてブレーキペダルに足を乗せているコーナーアプローチ時にも使うようになった。

アジャイルハンドリングアシストがタックインのような挙動を生み出してくれるので曲がるきっかけを作りやすい

これがタイヤのグリップ範囲内ではいい効果を発揮しているようで、タックインのような挙動を生み出してくれるのだ。曲がるきっかけを作りやすいとでもいえばよいだろうか? ただ、グリップを超えるような走り方をするとその恩恵にはあずかれないようだ。

のちに一度止まって試しにスタビリティコントロールがすべて切れる整備モードに入れて走ってみた。するとアジャイルハンドリングアシストも切れるのだが、その差を体感すると制御のありがたみがよく分かる。

ただ、素の状態でもコントロール性は高く、ブレーキングでリアを振り出すことも可能だった。その際、リアが一気にブレイクせず、リアのイン側のタイヤが路面をつかんだまま、ジワリと滑り出す動きが扱いやすい。しっかりと伸びて路面をとらえる足、そしてバッテリをリアフロア(後席下部)に備えることでFFにしてはリアが軽すぎないことがよさにつながっていそうだ。

ただ、正直にいえばすべてオフの状態でタイヤのグリップがもう少しあれば、もっと面白くなりそうだとも思えた。それは次のお楽しみといったところだろうか? いずれにしてもシャシーは手の内に収まりやすく、どんな速度域でも心地よく楽しめる。限界が高くサーキットじゃなきゃすべてを楽しめないシビックTYPE Rとはまるで違う世界観だ。

Honda S+Shiftにより走りのフィーリングは最高!

パワーユニットは「Honda S+Shift」のおかげでフィーリングは最高だ。パドルを使って程よく楽しむのもアリだし、全開時はオートモードでお任せ状態で走るのもイイ。かつての高回転域までブン回して楽しむVTECエンジン時代のような音の演出もなかなかだ。

仮想ギアが次々にアップダウンを繰り返し、そのたびにクッ、クッと体が揺さぶられるところも自然。ブレーキングと同時にリズミカルにシフトダウンしている音も気分を盛り上げてくれる。

お任せ状態でも仮想ギアが次々にアップダウンを繰り返して気持ちよく走れる

シビックe:HEVも比較試乗したが、やはり「S+Shift」がないと物足りない。ホンダは今後「S+Shift」をe:HEVモデルに広く展開していく意向とのこと

最後は思わずほとんど全開で走ってしまった。そうなるとコース後半の登り勾配ではバッテリ残量がなくなり、エンジンが発電する電力でのみ動いている状態に陥る。バッテリを大きくするか、はたまたエンジンをパワーアップするか、もっと先が欲しくなるのもまた事実。

もちろん、公道じゃそこまで使い切ることはなさそうだが、ここまで気持ちよくなるとサーキットでも通用しそうなバージョンが欲しくなってくる。こんなに楽しいスポーツカーを誕生させたのだから、じっくりと育てていってほしい。

サーキットバージョンの登場を期待したくなるほどの仕上がりだった

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