12/09/2025 · 3 日前

ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)を解説|前期型の登場から約13カ月でビッグマイナーチェンジ

ホンダを代表するオートバイの1台、当時登場したレーサーレプリカの中でも代表格としても挙げられるホンダ NSR250R。その性能は他を凌駕するものがあり、当時はもちろん、今もなお多くのファンを持つ。ここでは1989年に大幅なマイナーチェンジを受けたMC18・後期型を解説していく。

文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING

▶▶▶写真はこちら|ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)(16枚)

ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)特徴

Honda NSR250R(MC18後期) 1989年総排気量:249cc エンジン形式:水冷2スト・クランクケースリードバルブV型2気筒 シート高:780mm 車両重量:149kg販売当時価格:59万9000円

スラントノーズの新作カウル、スイングアームを採用したMC18後期型

MC18は1989年2月10日にビッグマイナーチェンジを図る。これはMC18前期型の登場から約13カ月後のことで、当時の車両開発サイクルの短さを再認識させる。ここではそのマイナーチェンジ後を便宜上、MC18後期型として紹介する。

最大の特徴はアッパーカウルの造形を改めたことで、フロント部を寝かせる=スラント化して空力特性を改善している。また、前期型のフロントカウルはアッパーと左右サイドの三分割だが、後期型ではアッパー+左右サイド+左右アンダーの五分割式となり、フロントウインカー後方の開口部も位置と形状が改められた。シートカウルも微妙に変化しており、ニーグリップする部分にあった三本の縦スリットがなくなった。

燃料タンクの造形は変わっておらず、容量16Lも同じ。カラーリングは「ブラック×シードシルバーメタリック」。これは当時の全日本選手権でNSR250を走らせたシードレーシングチームのカラーリングに倣ったもので、SEEDは西武グループのアパレルブランド。

この他にも1989年に登場したSPモデルでは、一般にもバイクが大ブームとなっていたこの頃は多分野の企業がレーススポンサーとして参入し、オートバイ業界もまさにバブル景気だった。

90度Vツインエンジンの基本は同じだが、キャブレターは可変エアジェットを二個備えたPGMキャブレターIIに。点火系も前後気筒の各点火タイミングを独立演算化し、最適な点火時期を決定するPGMイグニッションIIに。

RCバルブもスロットル開度を変数に加えたPGM RCバルブと、制御系が進化している。フレームの基本は同じだが、スイングアームは部材をメインフレームに近い変則5角形断面へと変更。リアブレーキキャリパーもフローティングマウント化された。

1989年 NSR250R SP(カラー:ロスホワイト×テラシルバー×ノーベンバーシルバー)

レース使用時にはHRCサービスショップで販売、組み付け/調整されるサーキット専用のチャンバーや、キャブレターのセッティングパーツ、リミッター解除ユニットなどを投入することで68PS/11250rpmという高出力を得ることもできた。

MC16からMC18、そして前期から後期型へと、またもや大きな変化をすることで、最強・最速路線へとNSRは進化した。

ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)各部装備・ディテール解説

▶エンジン

画像1: ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)各部装備・ディテール解説

更なる進化を遂げた後期型のパワーユニット

6速ミッションはMC16以来のカセット式で、エンジンをフレームから降ろさずに整備できる利点を持つ。

MC16からMC18前期型に移行する際に変速比は①2.624→2.846 ②1.800→1.941 ③1.380→1.500 ④1.125 →1.272 ⑤1.000→1.136 ⑥0.916→1.045 に改めたが、MC18後期型では①はそのまま②2.000 ③1.631 ④1.368 ⑤1.250 ⑥1.173へと変更した(2.360の一次減速比はそのままで、2次減速比は2.733→2.800と異なる)。

この時にクランクピンもΦ24mmからΦ25mmにされた。車体も全長/全幅/全高は1980/650/1060mmで、前期型に比べて全長-5mm、全幅+10mm、全高-45mmとなった。シート高は+10mmの780mm、乾燥重量は+4kgの131kgを公称。

画像2: ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)各部装備・ディテール解説

二連式のキャブレターはMC18前期型と同様にフラットバルブを装備するが、コンピュータによる制御技術を高性能化。

前期型では、スロットル開度とエンジン回転数を検知し、ひとつの可変エアジェットをコンピュータで制御して空燃比を最適化したが、このMC18後期型では二個のソレノイドバルブを使ってふたつの可変エアジェットをコントロールし、より高回転化を実現していた。

▶そのほか注目のポイント

チャンバー後端部にレゾネーターを新設し、排気ガスが通過する部分とチャンバー外壁の間に空間を設け、テールパイプの管共鳴音を低減、さらにインナーパイプのうち中央部の一本に角度を持たせ騒音低減を図っていた。

フロントフォークはΦ41mm正立でフォークオフセットは35mm。ブレーキは異径対向4ピストンキャリパー+Φ276mmフローティングディスクを継続するがインナー(ハブ)の色をゴールドからブラックに変更。

リアブレーキは片押し1ピストンキャリパー+Φ220mmソリッドディスクだが、キャリパーの支持方法を改めた。キャリパーサポートの動きを規制するトルクロッドを、フレームに固定するフローティング式とした。

丸型二灯のテール/ストップランプやシートカウル後部の形状はMC18前期型と同じ。シートカウルと並列させた細身のサイレンサーは前モデルから全長を20mm短縮したことでスッキリとした見た目に。

ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)主なスペック・販売当時価格

ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)カタログ

▶1989年 NSR250R(MC18後期)カタログ

画像1: ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)カタログ

五角断面アームと新形状カウルを採用した後期型

MC18後期型のカタログ表紙。最大の特徴でもあるスラントノーズを強調するようなカットが使われている。

基本的なグラフィックは継続されるが、ラインの太さがMC16やMC18前期型と変えられている。カラーは「ブラック×シードシルバーメタリック」と「ロスホワイト×テラブルー」の2色、価格はMC18前期型+2万円の59万9000円。

1989年5月下旬には、HRCワークスカラーの「ファイティングレッド×ロスホワイト」が追加された。

カラーバリエーション

▶1989年 NSR250R SP(MC18後期)カタログ

画像2: ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)カタログ

画像3: ホンダ「NSR250R」(MC18後期・1989年)カタログ

乾式クラッチ・マグホイール・調整式サス搭載の特別仕様車

MC18後期型ベースのNSR250R SPは1989年4月1日発売。初代SPに準じるマグテックホイール(3.00-17/4.50-18サイズ)に加えて、新たに乾式クラッチを装備。またフロントには伸び側減衰力、プリロード可変タイプのカートリッジ式フロントフォークを採用し、リアショックもリザーバータンク別体式で伸/圧減衰力、プリロード可変タイプを装備。

カラーリングは1988年から世界GP参戦した「味の素TERRA・ホンダ・レーシングチーム」のNSR250をイメージした「ロスホワイト×テラシルバー×ノーベンバーシルバー」。

なおゼッケンスペースの緑は当時の世界GP250クラスでゼッケンスペースに指示された色(500クラスは黄、125クラスは白)で、カタログ裏面の「SP」にも反映。ここからもレーシングイメージを強めていた。

文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING

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