初代プリウスがデビューした時、ハイブリッドはあくまでもエコのための技術だった。しかしそれから四半世紀以上が経ち、今やその考えは完全に覆されている。レベルこそ違うがレーシングカーだってハイブリッド。そう、「ハイブリッド=エコカー」という時代は完全に終わったのだ【画像ギャラリー】快足を楽しめるハイブリッド車たちをもっと見る(12枚)文:木内一行/写真:スズキ、トヨタ、日産、ホンダ「ハイブリッドSUVとは思えぬハイパフォーマンス」 トヨタ・カローラ クロスエクステリアは専用デザインのフロントバンパーとグリル、アッパーモールで独自のマスクを創出。さらに、各所にあしらわれたブラックパーツで精悍さがアップしている。19インチアルミホイールも専用品だ 60年近い歴史を持つカローラシリーズにおいて、初のSUVモデルとなったカローラ クロス。タイで先行発売され、日本国内では1年強遅れてのデビューとなったが、その人気は想像以上。瞬く間にカローラの主力モデルとなったのだ。 そんなヒットメーカーが、2025年5月にマイナーチェンジを受けた。それと同時に追加されたのが、スポーティグレードのGRスポーツだ。 GRの名を冠しただけあり、内外装に専用パーツを投入してスポーティかつ精悍なルックスを実現。ボディや足まわりの強化にも抜かりはなく、サスペンションは専用チューニングを施すとともに高硬度ブッシュも採用。ボディ剛性を高めるリアバンパーリインフォースも投入された。 そして、本気度が伺えるのがパワーユニット。 GRスポーツはハイブリッドの4WDモデルがベースなのだが、エンジンは標準車よりも排気量が大きい2リッターのダイナミックフォースエンジンに換装。 フロントモーターはパワー/トルクともにアップし、システム出力は199psを達成した(標準車は140ps)。加えて、ドライブモードにも専用モードを設定するなど、ドライブフィールだけでなく絶対的なパワーも手に入れたのだ。 ハイブリッドでしかもSUVとなると、スポーツとは無縁のように感じる。しかしGRスポーツは走って楽しい、使って便利なSUVと言えるだろう。「ニスモの魂が宿るプレミアムコンパクト」 日産・ノート オーラ前後左右に専用のエアロパーツを装着し、機能性とデザインを高次元で両立。ニスモのアイコンであるレッドアクセントの「レイヤード・ダブルウイング」も採用する。ボディカラーは写真のニスモステルスグレーを含む計7色を設定 ノートの派生モデルとして2021年6月に登場したノート オーラ。新デザインの3ナンバーボディや専用素材を用いたインテリアを採用して上質感にこだわった、いわばプレミアム版ノートだ。そんな上級コンパクトに走りの「ニスモ」が追加されたのは、デビューからわずか2カ月後のことだった。 コンセプトはズバリ「駿足の電動シティレーサー」。エクステリアにはレースで培った空力技術をベースに開発したエアロパーツを装着し、レーシーなルックスだけでなく高速走行時の操縦性も向上。インテリアも高揚感を高めるデザインで、専用アイテムを多数装着。レカロ製シートもオプションで設定されている。 パワーユニットは珠玉のe-POWER。標準車でもノートよりパワーアップされたモーターを搭載していたが、ニスモもそれは同じ。 ただし、力強い加速と鋭いレスポンスを実現する「NISMO」モードを設定し、その他のモードも専用チューンが施されている。 もちろんサスペンションは強化され、車体剛性配分も最適化。その結果、クイックかつスムーズなハンドリングを手に入れたのである。 2024年のマイナーチェンジでは、内外装のリファインとともに4WDモデルを設定。標準車よりもリアモーターの出力・トルクを高めるとともに、前後の駆動力配分をチューニング。圧倒的な旋回加速とライントレース性を実現するHVスポーツヨンクなのだ。「タイプRでもRSでもないハイブリッドだってスポーティ」 ホンダ・シビックフロントからリアエンドまで水平基調を低く一気につなげることで、スポーティな低重心フォルムを創出。アルミホイールは全車18インチだがハイブリッドモデルは専用デザイン。2024年のマイナーチェンジでフロントの意匠を変更した タイプRはもとより、基準車でも軽快な走りが楽しめると評判の現行シビック。それはガソリンモデルに限ったことではなく、デビュー翌年に追加されたハイブリッドモデルでも同じだ。 パワートレインはホンダ独自の2 モーターハイブリッドシステム「SPORTS e:HEV」を採用。 これは、エンジンで発電してモーターで走行する「ハイブリッドモード」を基本としつつ、バッテリーの電気によりモーターのみで走行する「EVモード」、エンジンとタイヤを直結してエンジンの力で走行する「エンジンモード」という3つのモードをシーンに合わせて使い分け、高効率な走行とともに、走る楽しさを提供するハイブリッドシステムだ。 これに組み合わせるエンジンは新開発の2リッター直噴ユニットで、直噴システムやアトキンソンサイクルなどの技術を採用することでパワーと燃費に加え、静粛性も向上している。 また、重量物であるIPU(インテリジェントパワーユニット)を、リアシート下のリアタイヤ取り付け点付近に横断させて締結させることで、ガソリンモデル比で10mmの低重心化と3%向上の高剛性化を達成。その結果、一体感のあるハンドリングや快適な乗り心地を実現したのだ。 ちなみにミッションは、ガソリンモデルと違いCVTのみだが、爽快な走りを満喫できること間違いなし。「基本性能の高さと軽さを生かして走りを楽しむ」 スズキ・スイフトボディ全体のラウンドした動きを表現したスタイリングは、先代のスポーティな印象から一変。デザイン性を維持しながら各所の形状を見直し、先代よりも空力性能が向上している。写真のクールイエローメタリックは新色 グローバルに活躍するスズキのコンパクトカー、スイフト。2023年にデビューした現行モデルは、「スポーツ」のラインナップこそないものの十二分に走りが楽しい1台だ。 核となるエンジンは新開発直列3気筒のZ12Eで、高速燃焼化や高圧縮比化などの技術を投入し、燃焼効率を高めて低燃費を達成。さらに、低速から滑らかに上昇するトルク特性とすることで軽快なドライブフィールを実現している。 そして、エントリーグレード以外はマイルドハイブリッド仕様となり、発電効率に優れるISG(モーター機能付き発電機)をドッキング。加速をアシストするとともに燃費向上にも貢献する。 ミッションは、CVTとともに5MTが設定されていることも気になるところ。ちなみに、国内のスズキ車でマイルドハイブリッドに5MTを組み合わせたのはこれが初だそう。 プラットフォーム自体は先代からのキャリーオーバーだが、ボディや足まわりは徹底的に見直され、操縦安定性や乗り心地、静粛性などが向上している。 決してハイパワーではないし、ガンガン攻めるようなクルマでもない。しかし、ライバルたちが軒並み1トンを超えるなかでそれ以下をキープしているのは立派だし(ハイブリッド4WDを除く)、シャシーの基本性能も高い。 加えてマイルドハイブリッドのアシストにより、燃費とともに走りも楽しいコンパクトに仕上がっている。