クラシカルな魅力を持つ「70」、正常進化を遂げた「300」、原点回帰を掲げる「250」。近年、相次いでラインアップが拡充されてきたトヨタのランドクルーザーシリーズ。さらに、2025年10月には比較的コンパクトな新型「ランドクルーザーFJ」も発表となりました。いずれも頑丈な車体と高いクロカン性能をもつSUVですが、そのキャラクターや生い立ちは少しずつ異なります。4つのランドクルーザー、それぞれの違いをご紹介しましょう。 ■ランドクルーザーは「3つの血統」で理解するとわかりやすい1950年代に初代モデルが誕生して以来、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」という絶対的な信頼を世界中で築き上げてきたトヨタの「ランドクルーザー」。時代や用途に応じて進化を重ねた結果、現在のランドクルーザーは、「ヘビーデューティ系」「ステーションワゴン系」「ライトデューティ系」という、大きく3つの系統に分類されます。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 1961年に登場したランドクルーザー40系。現在の70系、300系、250系の起点となったモデルだ これらはいずれも、「フレーム構造」「高い耐久性」「過酷な環境でも使える信頼性」を共通項としつつ、想定するユーザーや使われ方が少しずつ異なり、それにあわせてパッケージングや装備内容にも違いが設けられています。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 ランクスシリーズは、「ヘビーデューティ系」「ステーションワゴン系」「ライトデューティ系」に分かれる。今あるモデルは、これらの後継車にあたる ■70系|道具としての完成度を極めた「原点」1984年11月に発売されたランドクルーザー70系は、ランドクルーザーの原点である「ヘビーデューティ」を体現するモデルです。「ヨンマル」の愛称で親しまれてきた「40系」の後継として、悪路走破性、耐久性、整備性を最優先に設計され、装備や構造は極めて実直。過酷な現場で長く使い続けることを前提とした「働くクルマ」としての思想が色濃く反映されています。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 本格的なオフロード性能、強靭なフレームボディ、シンプルなパーツ構成に加えて、現代的な運転支援制御が加わったことで基本性能が大きく向上した新生「70系」 2004年に国内での販売はいったん終了となりましたが、海外では生産が継続され、日本国内でも2014年に70シリーズの発売30周年を記念して約10年ぶりに復活。このときは期間限定販売ながら注文が殺到し、短期間で完売となりました。その後も根強いファンの声に応えるかたちで、2023年に再再導入されたのが、現在カタログモデルとしてラインアップされているモデルです。ボディサイズは全長4,890mm×全幅1,870mm×全高1,920mm、ホイールベースは2,730mm。エンジンは2.8 Lディーゼルターボの1GD-FTVで最高出力は204ps、最大トルク500Nmを発揮、トランスミッションは6速ATを組み合わせたフルタイム4WD。電動デフロックに加え、ビークルスタビリティコントロール(VSC)、アクティブトラクションコントロール(A-TRC)、ヒルスタートアシストコントロール(HAC)、ダウンヒルアシストコントロール(DAC)といった制駆動系システムも新たに採用され、現代の基準に合わせた装備がしっかりと盛り込まれています。価格は税込480万円の1グレード構成。2026年1月時点では受注停止となっており、「欲しくても買えない」存在となっています。 ■300系|世界が認めるフラッグシップSUVランドクルーザー300系は、ランクルのステーションワゴン系を象徴するフラッグシップモデルです。40系の4ドアバンをルーツとするステーションワゴン「FJ55」から始まり、その後、60系、80系、100系へと系譜を重ね、2007年に登場した先代200系によって、優れた走破性を備える高級SUVとしての地位を確立してきました。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 2025年3月に一部改良が施されたランクル300。指紋認証スタートスイッチの標準化や、スマートキー測距システムの導入、サイバーセキュリティへの対応など、盗難防止機能が強化された 現行モデルの300系は2021年8月に登場。「信頼性の進化」をテーマに、伝統のラダーフレームを踏襲しながら、GA-Fプラットフォームへと刷新。最新の高張力鋼を採用することで、フレーム剛性を約20%向上させつつ軽量化を実現。さらにボディにはアルミ材を積極的に用い、先代200系比で最大約200kgの軽量化を達成しました。ボディサイズは全長4,950mm~4,985mm×全幅1,980mmもしくは1,990mm×全高1,925mm、ホイールベース2,850mmと、70系よりもひとまわり大きな堂々たる体躯を備えます。パワートレインは3.5L V6ツインターボガソリンと3.3L V6ツインターボディーゼルの2種類を設定し、10速ATとフルタイム4WDシステムを組み合わせることで、悪路走破性と高速巡航性能を高次元で両立しています。電子制御サスペンションやマルチテレインセレクトなどの先進機能も充実しており、中東地域では王族の移動車からアウトバックの足まで、用途を問わず信頼されるクロカンとして、絶大な信頼を築いています。価格は税込525.2万円から813.6万円。ランドクルーザーというブランドの哲学を体現した存在といえます。 ■250系|生活に寄り添う「いまのランクル」ランドクルーザー250系は、ヘビーデューティ系の70系をベースとしたライトワゴン、いわゆる「ライトデューティ系」に位置づけられるモデルです。機動性だけでなく、居住性やスタイル等も重視したモデルで、1990年に登場したロングホイールベースの5ドアモデルに「プラド」のサブネームがつけられたことで、その後「ランドクルーザープラド」として、70系(ワゴン)、90系、120系、そして先代の150系へと系譜が引き継がれ、長年にわたってランドクルーザーブランドの中核を担ってきました。現行の250系は、「生活実用」をコンセプトに掲げ、2024年4月に登場。角張ったデザインや水平基調のプロポーションは原点回帰を感じさせつつ、装備内容は現代のニーズにしっかりと対応したものとなっています。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 2024年4月に登場したランクル250系。メーカーオプションで丸目ヘッドライトにもできる ボディサイズは、全長4,925mm×全幅1,980mm~1,940mm×全高1,925mm~1,935mm、ホイールベース2,850mmと300系とほぼ同等のスケール。パワートレインは、2.8L直噴ターボディーゼル+8速ATと、2.7Lガソリンエンジン+6速ATの2種類が用意されています。最新の運転支援装備であるトヨタセーフティセンスやプロアクティブドライビングアシストに加えにアドバンストドライブ(渋滞時支援)まで備え、安全性と快適性も大幅に向上。家族での移動から週末のアウトドア、長距離ドライブまで幅広いシーンに対応できる現代のライフスタイルに寄り添ったランドクルーザーといえるでしょう。価格は税込520万円から735万円です。 ■FJ|既存ランクルとは系統が異なる新しいアプローチ2025年10月に世界初公開されたランドクルーザーFJは、見た目こそ40系や70系を思わせるクラシカルな雰囲気をまとっていますが、その成り立ちは既存のランドクルーザーとはやや異なるモデルです。70系、250系、300系はいずれも、ランドクルーザー専用の系譜として発展してきたフレームベースSUVですが、FJが採用するのは、世界各国の実用環境に対応するために開発されたIMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)プラットフォーム。IMVとは各国の使用環境や経済事情に合わせて「壊れにくく、安く、使いやすい」クルマを供給するための世界戦略であり、このIMV系のピックアップトラック「ハイラックスチャンプ」をベースにSUVとして再構成したのが、新型ランドクルーザーFJです。Yahoo! 配信用パラグラフ分割 ランクルFJは、ランクル250に対してホイールベースを270mmも縮小。最小回転半径は5.5mという取り回しのよさを実現した ランクルFJは、ハイラックスチャンプに採用されているラダーフレームを短縮し、リヤサスペンションはリーフ式からコイルリジッド式へと変更。ボディ各部には補強が施され、伝統の丸目ヘッドランプを採用するなど、ランクルらしい「逞しさ」が与えられています。ボディサイズは、全長4,575mm×全幅1,855mm×全高1,960mm、ホイールベース2,580mmと比較的コンパクト。パワートレインは2.7Lガソリンエンジンに6速ATを組み合わせ、パートタイム4WDシステムを採用しています。ランクルFJは、悪路走破性やフレーム構造といった「ランクルらしさ」は確保しつつも、「ランクルに憧れていた人」「これまで大きさや価格で躊躇していた人」など、ユーザー層を大きく広げ、シリーズの入り口として用意された存在です。既存モデルとは異なる立ち位置だからこそ、ランドクルーザーシリーズの“新しい入口”として、大きな意味を持つモデルといえるでしょう。 ■まとめいずれも「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」という思想を共有しながら、70系は「過酷な現場で使われる道具」として、300系は「世界基準の信頼を背負うフラッグシップ」として、250系は「生活と冒険を両立する中核モデル」として、そしてFJは「ランクルの価値観を、より多くの人へ届ける新しい入口」として、それぞれ異なる役割を担っています。どれが優れているかではなく、どれがいまの自分にもっとも適しているか。ランドクルーザーの購入を検討している人は、ぜひその視点で選んでみてください。Text:吉川賢一 Photo:TOYOTA