最近の訪日で貿易と経済投資について協議したドナルド・トランプ米大統領は、かなり意外な発見を持ち帰った。日本の小型車への愛着だ。「軽自動車」は小型で燃費が良い車両で、トヨタの高級セダン「カムリ」より車体が約30%短く、幅はスマートカーと同程度だ。価格も安い。人気モデルの日産「ルークス」やホンダ「N-BOX(エヌボックス)」などは、日本では1万ドル(約155万円)強から購入できる。トランプ氏は先週、記者団に対し「とても小さく、本当にかわいい。わが国ではどうだろうかと思った」と語った。軽自動車が米国の購入者を魅了する可能性があることを示す兆候の一つは、その印象的な外観と実用性に魅了され、年数のたった軽自動車や軽トラック(軽トラ)を輸入する米国人が近年増えていることだ。米首都ワシントン、メリーランド州、バージニア州を中心に活動する「キャピタル軽自動車クラブ」の創設者、アンドリュー・マクソン氏によると、軽自動車は人目を引き、実用的であるため、米国人の間で人気が高まっている。ダイハツの「ミゼット」やスズキの「マイティボーイ」など、風変わりな名前を持つ車種もある。2021年に設立された同団体には約100人の活動会員がおり、毎月、この地域周辺でカーミーティングを開催している。日産の軽自動車ルークスマクソン氏は「もし米国で軽自動車や軽トラなどの販売を始めるなら、相対的なサイズ、相対的な効率性、相対的なシンプルさを維持できれば、成功するだろう」と述べた。トランプ氏が軽自動車を支持するのは、政権が手頃な価格の自動車への対応を試みている中でのことだ。新車の平均価格が5万ドルを超えるため、多くの米国人は自動車を購入する余裕がない。ショーン・ダフィー運輸長官は先週、米CNBCに対し、企業が軽サイズの自動車を製造できるよう「障害を取り除く」作業を運輸省道路交通安全局(NHTSA)が進めていると明らかにした。軽自動車は現在のNHTSAの衝突基準を満たしていない。報道官は、進行中の取り組みの詳細についてのコメントを控えた。同報道官は「ダフィー氏は、ガソリン車であれ電気自動車(EV)であれ、米国人が家族のニーズに合った車を購入できるよう取り組んでいる」と述べ、メーカーは衝突安全性と乗員保護に関する連邦安全基準を満たすことが義務付けられていると付け加えた。日本では都市部でも地方でも小型車が人気NHTSAの元当局者によると、NHTSAは一部の安全基準を改正して新しい軽自動車を免除するか、より小型の車両を規制するための新しい車両カテゴリーを設ける可能性があるという。より大きな問題は、米国の自動車メーカーがこれまでにも小型車を試みたが、普及しなかったことだ。10年余り前、トヨタの北米若者向けブランド「サイオン」は小型車「iQ」の販売を開始し、独ダイムラーの小型乗用車ブランド「スマート」は2人乗り小型車「フォーツー」で注目を集め、欧州の自動車大手ステランティス傘下のフィアットは「500」で米国での販売記録を樹立した。これらの車両は日本の軽自動車とほぼ同じ長さだが、幅はわずかに広い。2010年代にこれら3種の小型車を販売していたネブラスカ州の自動車ディーラー、ミッキー・アンダーソン氏は「米国の消費者は依然として大型車に魅力を感じている」と話す。業界調査会社コックス・オートモーティブのデータによると、ホンダの「FIT(フィット)」のようなサブコンパクトカーの販売台数は過去10年間で86%減少した。昨年はわずか8万8500台で、総車両販売台数の1%未満だった。米国のサブコンパクトカーは軽自動車よりやや大きく、日本の主力車種に最も近いセグメントだ。これまでのところ、自動車各社はトランプ氏の提案にほとんど反応を示していない。フォードはコメントを控えた。ゼネラル・モーターズ(GM)の広報担当者は、発表すべき新製品情報はないとしながらも、現在3万ドル未満のベース価格で6モデルを販売中だと述べた。トヨタと日産は、消費者の需要があれば、米国で新しいタイプの車両を提供することに前向きだと表明した。欧州の自動車大手ステランティス傘下のフィアットは最近、超小型EV「トポリーノ」を2026年に米国市場に投入すると発表した。フィアットの広報担当者は、発表のタイミングはトランプ氏の発言とは無関係だと述べている。しかし、この車両はトランプ氏が言う小型の概念に合致している。トポリーノはイタリア語で「小ネズミ」を意味し、その小型パワートレインは時速28マイル(45キロ)までしか加速できない。フィアットは2026年に米国でトポリーノを販売する予定