CB400Four、CBX400Fに続く空冷並列4気筒400ccスポーツの3代目として現れたCBR400Fは角パイプのフレームとトリプルディスク、2バルブと4バルブを切り替える新エンジンによってレプリカ競争が始まり激戦が続く1980年代半ばの400ccクラスで自身の役割を全うする。まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載していますホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の概要Honda CBR400F 1984年総排気量:399.1cc エンジン形式:空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:780mm 乾燥重量:176kg発売当時価格:53万9000円レーシーなムードを前面に出した意欲作1981年11月にホンダがCBX400Fをリリースして4メーカーの空冷並列4気筒が出揃い、400クラス、そして直4の人気はさらに高まる。そんな中で1983年12月にホンダ第三世代の並列4気筒400cc車、CBR400Fが送り出される。「F-3レーサーのイメージ」の開発コンセプトは、CBRに狙い通りに反映されていた。足まわりにはNSコムスターホイールほか当時としては最高の装備が与えられ、角パイプフレームによってスクエアなデザインでまとめられたスタイリングも、レーサームードにあふれて格好がよかった。そして、低中回転域は2バルブ作動で、高回転域では4バルブに切り替わるというバルブ切り替えシステムREV(Revolution Modulated Vaive Control)を導入した新設計エンジンは、空冷でありながら58PSという高出力を実現していた。この数値はVF400F(53PS)や既に販売されていたXJ400Z/Z-S(55PS)、GSX400FW(50PS)等の水冷勢を凌ぐもので、ホンダの技術力の高さを改めて知らしめた。最大トルクも3.6kgf・mと十分。ただ、発生回転数は11000rpmと高く、最高出力発生回転数と1000rpm少ししか違わなかった。当時としては異例の高回転高出力型、スポーツ性の高いエンジンだったと言っていいだろう。その高性能は、誰でもが簡単に引き出せるものではなかったかもしれない。だが、低中回転域でも扱いやすかったし、クラスダントツの高性能はやはり魅力で、CBRはクラス最強モデルとして大人気を博す。画像: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の概要そうしてハイメカで400ccの最前線を切り拓いたCBRだったが、その登場の4カ月のち、1984年3月には、スズキからGSX-Rが登場して強力なライバルとなる。CBRもデュアルヘッドライトのハーフカウルを装備するエンデュランスやフルカウル装備のF-3を加えて対抗し、人気をキープしていく。CBR400Fのスタイルは全体的にスクエアなラインでまとめられており、12V60/55Wの光量を持つヘッドライトやウインカーも角型デザインである。ヘッドライトの下にオイルクーラーを配置したのは、熱対策に苦慮する高性能な空冷4気筒ならではのことだが、これもレーサー的だ。なお、カタログ(上の走行写真はその内面の1ページ)でライダーを務めたのはTTF-3人気の火付け役、モリワキレーシングの福本 忠選手(ちなみに八代俊二、宮城 光、樋渡 治の3選手も同チームで高い人気があった)。この走行車両にはオプションのアンダーカウルも装着されている。ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説メーターまわり画像1: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説クリップオンのハンドルは幅広い走りに対応するため後のレプリカスポーツのように低くはないが、レーシーな雰囲気だ。左側のスイッチボックスが白っぽいのは樹脂の経年変化による。画像2: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説3連メーターはシンプルかつスポーティなデザイン。中央の回転計は13000rpmまで目盛られ12750rpmからレッドゾーン、左の速度計は180km/hスケールで、オド/トリップメーターを内蔵。ともにゼロを真下とするのも、レーサーをイメージしてのことか。右は燃料計で、メーターパネル下部には左から左ウインカー、速度、オイル、ハイビーム、ニュートラル、右ウインカーの各警告灯がある。燃料タンク画像3: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説フレームはスチール製だが、当時最新のコンピュータ解析による角断面パイプのダブルクレードルで高剛性を確保。そのメインパイプのラインに合わせた燃料タンク形状はレーシーで、タンク左側面に装備される燃料コックのノブもレーサーイメージのデザインだ。容量は400ccクラスとしては十分な18.0L。エンジン画像4: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブはCBX400Fと基本構成は同じで、ボア×ストロークΦ55.0×42.0mm。だが斬新なバルブ機構のREVや吸入系のレゾナンスチャンバー(燃料タンクの下にあり、エアクリーナーと連結される)、吸気系の4-2-1-2のエキゾーストシステムなどによって、大きく性能向上。最高出力はCBXを10PSも上回る58PS/12300rpm、最大トルクは3.6kgf・m/11000rpmで、発売当時、出力は水冷4気筒をもしのいだ。画像5: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説REVは、高回転域では気筒あたり2本ずつある吸排気バルブをすべて使う4バルブ作動として絶対量を稼ぎ、低中回転域では1本ずつを休止させて2バルブ作動として流速を上げるという考え方だ。センサでエンジン回転数を検知し、2分割のロッカーアームに内蔵する油圧ピストンの移動によってロッカーアームが分離/結合して、4バルブ⇔2バルブを自動的に切り替える。ステップまわり画像6: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説極端なバックステップではないが、十分なバンク角が確保されている。チェンジペダルやブレーキペダルは、軽量化のため作りが華奢に見える。左右ステップは当然バー可倒式で、バー上部にはラバーが装着される。画像7: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説フロント&リアブレーキ、ホイール画像8: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説TRAC(ブレーキトルク応答型アンチダイブ機構)を装備したフロントフォークはセミエアを併用し、インナーチューブ径はΦ35mm。前後ホイールはNSコムスターで、フロントのサイズは2.50-16インチ。ブレーキはΦ256mmの穴開きディスクとピンスライドの片押し2ピストンキャリパーをダブルで装備。取材車はフロントタイヤにブリヂストンBT-45を装着しているが、純正にはBSのG511など3種類があった。画像9: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説リアホイールサイズは2.50-18インチで、ブレーキはフロントと同じ組み合わせを1組装備。同じくリアタイヤはBT-45Rの120/90-18を履くがSTDは110/90-18とひとまわり細い。マフラーは4-2-1-2の左右出しで全体にシンメトリーな印象を作り出す。シート画像10: ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の各部装備・ディテール解説ダブルシートは車体色に応じたレザーカラーが採用され、ブラックの車体色にはレッド(この車両では変更した)、赤の車体色には黒、ホワイトの車体色にはブルーが組み合わされる。ホンダ「CBR400F(NC17)」(1984年)の主なスペック・当時価格まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING関連のおすすめ記事【コラム】ホンダ「CBR400F」 - webオートバイ【コラム】80年代のバイク市場を振り返る - webオートバイ【400cc名車解説】「CBX400F」 - webオートバイ