ヴェゼル販売躍進 本田技研工業(ホンダ)のコンパクトスポーツタイプ多目的車(SUV)「ヴェゼル」が安定して売れている。2024年上半期にはSUV新車販売台数1位を獲得し、2025年も月間5000台ペースを維持。いまやホンダ四輪の屋台骨となる存在感を示している。【画像】ホンダ社員は高収入? 24年「平均年収ランキング」を見る!(7枚) この販売好調の背景には、・SUV・低価格・環境性能の三本の矢があることはもちろん、都市生活から週末のアウトドアまで幅広く対応できる利便性も大きい。荷室の使いやすさや室内空間の広さ、安定感のある乗り心地など、実際の生活での使い勝手が消費者に支持されている。 また、デザイン面でもクーペライクな流麗なシルエットが街中で目を引きつつ、SUVらしい力強さを備えることで、若年層からファミリー層まで幅広い層に受け入れられている。 さらに、ハイブリッドモデルの選択肢が豊富で、燃費効率の高さと走行性能のバランスも販売を支える要因だ。こうした複合的な魅力が、ヴェゼルをコンパクトSUV以上の存在に押し上げ、安定した販売を実現している。革新を纏ったクロスオーバーの歩み初代ヴェゼル(画像:本田技研工業) 販売好調を維持しているホンダ・ヴェゼル。まずは、その歴史を簡単に振り返ってみたい。 ホンダは2013(平成25)年、SUVの新たな可能性を提示するモデルとして「ヴェゼル」を発表した。低重心な印象を与える下半身と、流麗なクーペ風の上半身を融合させることで、SUVでありながらミニバン的な実用性も備えたデザインを実現した。これにより、都市での扱いやすさとアウトドアでの走破性を両立し、日常生活とレジャーの双方に対応できるモデルとして注目を集めた。 パワートレインには1.5L直噴エンジンのガソリン仕様に加え、モーターを組み合わせたハイブリッド「SPORT HYBRID i-DCD」をラインアップ。燃費と走行性能の両立を目指し、四輪駆動(4WD)モデルも用意されるなど、ユーザーの多様なニーズに応える構成となった。実際に運転したユーザーからは、静粛性やコーナリングの安定感、加速の滑らかさが評価され、日常利用でも長距離走行でも快適に使える点が人気の理由となった。 その後、ヴェゼルはグローバルモデルへと成長し、海外では「HR-V」として展開。2021年4月にはフルモデルチェンジを実施し、ハイブリッド方式を「e:HEV」に一新。1.5Lガソリンエンジン+CVT、さらに自充電型ハイブリッドの「リアルタイムAWD」に対応するモデルを併用し、燃費と力強い走りを両立させた。この進化により、国内市場でも根強い人気を確立し、2021年8月には新車登録台数で10位に入るなど、存在感をさらに高めた。「選べる価格、拡がる魅力」ヴェゼルの価格戦略の妙2代目はより力強いイメージに(画像:本田技研工業) ヴェゼルの新車価格は、エントリーモデルから最上位グレードまで幅広く設定されており、用途や装備レベルに応じて選べる柔軟性がある。2024年モデル時点では、メーカー希望小売価格がおおよそ239万9100円から341万8800円までのレンジで展開され、2025年型では275万~396万円程度まで幅が広がった。これにより、初めてSUVを購入する層から、上級仕様を求めるユーザーまで、幅広い層に対応している。 特に注目されるのは、ハイブリッドモデルの選択肢が充実している点だ。e:HEV Xやe:HEV Z、限定仕様を含むパッケージモデルなど、多彩なグレードが揃い、駆動方式や装備による差別化も明確。上級グレードでも400万円を切る設定で、手の届きやすさと満足度の高さを両立させている。 こうした価格構造は、単にコストを抑えるだけでなく、「装備や走行性能とのバランスを重視するユーザー」に対して自由度の高い選択肢を提供する。結果として、都市生活での使いやすさやアウトドアでの実用性、燃費効率や走行性能など、ヴェゼルが備える多面的な魅力を、幅広い層が手に取りやすい形で享受できる戦略となっている。都会派と躍動感を融合したSUVスタイルクーペらしさを持つルーフライン(画像:本田技研工業) ヴェゼルは、ホンダが掲げるクーペライクなSUVという新しいスタイルを体現したモデルとして誕生した。SUV特有の力強いプロポーションを持ちながら、流麗でスポーティなルーフラインを描くボディデザインが特徴で、都市の景観に自然に溶け込みつつ、日常と冒険をシームレスにつなぐ印象を与える。 初代ではSUVの下半身とクーペの上半身を融合させた「クロスオーバーデザイン」を採用し、2代目(現行型)では水平基調のシルエットで安定感と上質感を強調。サイドにはシャープなキャラクターラインを配し、リアには一文字型LEDランプを採用してワイドな印象を際立たせた。最低地上高を確保しつつ全高を抑えることで、走破性と都市での扱いやすさの両立も実現している。 デザインは見た目の美しさにとどまらず、空力性能や居住性にも直結。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトにより室内空間を広く確保し、快適な座席配置や荷室の利便性を提供。街乗りでも長距離ドライブでも快適性を損なわない工夫が施されており、デザインと実用性が高次元で両立している点も、ヴェゼルの人気を支える要素となっている。電動とエンジンの融合が生む“知能的走り” ─ ヴェゼルのe:HEVシステムホンダ独自のe:HEVシステムにより燃費効率を最大化(画像:本田技研工業) 現行型ヴェゼルに搭載されるハイブリッドシステム「e:HEV」は、ホンダが独自に開発した2モーターハイブリッドである。モーターとエンジンの役割を走行状況に応じて自動で切り替え、滑らかかつ力強い走りと高効率な燃費性能を両立させる。 基本構成は1.5L直列4気筒エンジンに駆動用モーターと発電用モーターを組み合わせ、EV走行・ハイブリッド走行・エンジン走行の3モードを状況に応じて最適化する。市街地では主にモーターのみで駆動し、静粛性と瞬時のトルクを確保。加速や登坂ではエンジンで発電しつつモーターを補助し、高速走行ではエンジンが直接駆動する構造だ。 これにより、アクセル操作に応じた自然でリニアな加速感が実現され、ドライバーは操作感に違和感を覚えない。また、減速時には効率的に回生エネルギーを利用し、燃費性能を最大化。都市走行からロングツーリングまで幅広く対応できるため、快適性と環境性能を両立させた“知能的な走り”を提供する。 e:HEVの採用により、ヴェゼルは都市と郊外の多様なシーンでドライバーの意図に応じた走行性能を発揮するモデルとして、評価を高めている。3つの魅力を凝縮した“時代の中心” ─ ヴェゼルSUVによるアウトドア使用の想定(画像:本田技研工業) ヴェゼルは、SUVの力強さとクーペの洗練を融合したデザイン、手の届きやすい価格帯、そして先進のハイブリッド「e:HEV」による高効率な走りを兼ね備える。街乗りからアウトドアまで対応できる万能性に加え、上質な内装や優れた静粛性も特徴である。 現代の消費者が求める条件を満たすため、ヴェゼルは運転の快適性、日常の使いやすさ、環境性能のバランスを高次元で両立。荷室や室内空間の工夫によりファミリー層にも受け入れられ、都市型SUVとしての実用性を損なわずに冒険心も刺激する設計となっている。 また、手の届きやすい価格でありながら上質感を備え、幅広いグレードから選べることも人気の理由だ。SUVの力強さ、クーペの洗練、経済性と環境性能を「全部盛り」で実現したモデルとして、ヴェゼルは多様なライフスタイルに対応し、現代のスタンダードSUVとして幅広い層に支持され続けている。