モーターマガジン社が2026年2月17日に発行したムック本「GTメモリーズ15 PF60/JT150・190 ジェミニZZ/ジェミニイルムシャー」が好評だ。ここでは、そのダイジェストをお届けしよう。今回は、歴代ジェミニのシャシとパワートレーンについて紹介する。FR時代のダブルウイッシュボーンとクロスレシオMT、FF時代の名門チューナーによるサスペンションの味付けなど、モデルライフを通しての革新性が目立つものとなっている。PF60ジェミニZZ:すべてにおいてスパルタンな仕様アンダーステアからオーバーステアへの挙動変化は激しい。ここをねじ伏せて乗りこなすことこそジェミニZZ/Rの走りの楽しさと言える。PF60ジェミニZZのシャシを見ていこう。まず動力を伝えるドライブトレーンから。トランスミッションは5速MTのみだが、2種類のギアレシオから選べるのが特徴だ。標準タイプはスプリントレシオという通常仕様のギア比で、発進加速と2・3速のトルク&パワーを重視したタイプ。もうひとつGTレシオというクロスレシオが選べた。これは、全体的にハイギヤードとなるが、1・2・3速ギア比が4速寄りとなっている。ファイナルドライブはともに3.909と同様だ。リアデファレンシャルは4ピニオンのリミテッドスリップデフ(LSD)をオプションで装着される。そのためにSOHCエンジン搭載車からデフ自体の容量を拡大している。LSDの差動制限の効きも強力で十分な駆動力を確保している。サスペンションはフロント:ダブルウイシュボーン、リア:トルクチューブ付き3リンクというものだ。この設定は1974年10月に登場したPF50ベレットジェミニから引き継ぐ、かなり古典的なスタイルと言える。率直にいうと時代遅れになりつつあった。リアはラテラルロッドを含めて3リンク。デフの回転反力はトルクチューブを通じてリアフロアで抑える。これが独特の挙動を生み出していた。フロントサスペンションにダブルウイッシュボーンを採用したことは、スポーティさを考慮したもので間違いない。対地キャンバーを適正なものに保ち、操縦性を向上する。ただし、アッパーアームの上からフロントフェンダー上部にショックアブソーバーをつなげるという独自の形態のため、サスペンションストロークを長く確保できないというデメリットがある。リアサスペンションは独特のものだった。構成は2本のトレーリングリンクで縦方向の位置を決め、ラテラルリンクで横方向の位置決めをする。ただしこれだけでは、駆動力の発生にともなう反力でデフ自体を回転させてしまいトラクションを正確に伝えることができない。そこで、リアデフからリアボディ下部までのプロペラシャフトを覆うトルクチューブでつなげ、デフの回転を抑える構造とした。言い換えれば4リンク(+ラテラルリンク)の2本のアッパーリングをトルクチューブに置き換えた構成といえる。操縦性は基本はアンダーステア。しかし、それを腕でねじ伏せ、テールをコントロールしてコーナーを抜けることに面白みもあった。PF60ジェミニ シャシ 主要諸元●ステアリング形式:ラック&ピニオン式 ●サスペンション形式(前):ダブルウイッシュボーン式 ●サスペンション形式(後):トルクチューブ付3リンク式 ●ブレーキ(前):ソリッドディスク式 ●ブレーキ(後):ソリッドディスク式 ●タイヤサイズ:175/70HR13(ZZ/R)JT150ジェミニ イルムシャー:ドイツの名門チューナーによる硬派仕様FFジェミニになってスポーティバージョンのイルムシャーが登場。オペルなどのチューニングで有名な同社により、ハードな走りが可能になった。先代のスタンダードなFR方式から、JT150ジェミニはFFとなった。トランスミッションはいわゆるトランスアクスル方式で、5速MTと3速ATとなる。特に5速MTでは、このクラス最大のシンクロ容量とし、1速ギア歯面にスラストニードルベアリングを追加することにより、低温時から高温時まですぐれた操作フィーリングを確保した。エンジンルーム内にあるトランスミッションからシフトレバーを室内に導くため、リンク式に比べチェンジレバーへの振動伝達の少ないケーブル式を採用した。操作も軽く節度のあるシフトフィールとしている。ABCペダルの配置もオフセットのないレイアウトを実現、運転中の違和感を感じさせない自然なペダル配置となっている。堅牢なボディに備え付けられたサスペンションはフロントがストラット式独立式となっている。ロアアームとショックアブソーバー一体型のストラットで構成されるこの方式は、小型乗用車のスタンダードとも言える構成。イルムシャーの場合、標準のFFジェミニと比較して、ワイドトレッド(標準:1395mm→イルムシャー:1410mm)、ネガティブキャンバー(標準:+20→イルムシャー+30)、キングピン角(標準11度50→イルムシャー12度10)とした。これにより、ロールしたときにタイヤができるだけ路面に対して垂直に近く保たれるジオメトリーとしている。リアサスはコンパウンドクランク独立式を謳ったが、現代的に言えばツイストビーム式のリジッドサスペンション。半独立懸架とも言える形式だ。リアサスペンションはコンパウンドクランク独立式を標榜しているが、いわゆるトーションビーム式で、半独立式というのが実際のところ。この辺はマーケティング戦略と捉えていいだろう。メリットは常に路面に対しキャンバー角を一定(垂直)に保つこと。ボティが傾いてサスペンションに影響がないとも言える。またトーションビームはスタビライザーの役目を果たし、安定したロール特性を確保。さらにタル形ミニブロックコイルスプリングを採用。小型でかつ十分なストロークを確保しすぐれた乗り心地と操縦安定性を示した。ただしショックアブソーバーは前後とも標準車ではオイル式だったのがイルムシャーではガス封入式に変更し、それに合せて減衰力もスポーティな方向に最適化している。スタビライザー径はフロント20mm、リア18mmと変わらない。実際の走行フィールは、当時のレベルとしてはかなり洗練されたものとなっていた。インタークーラーターボのパワーを上手く路面に伝えながら、ファントゥードライブを実現しているのはイルムシャーの手腕と言えるだろう。JT150ジェミニイルムシャー シャシ 主要諸元●ステアリング形式:ラック&ピニオン式 ●サスペンション形式(前):ストラット式 ●サスペンション形式(後):コンパウンドクランク式 ●ブレーキ(前):ベンチレーテッドディスク式 ●ブレーキ(後):LT式ドラム ●タイヤサイズ:185/60R14 82HジェミニZZ ハンドリング バイ ロータス:英国ロータスによる上品な走り名門中の名門「ロータス」がサスペンションチューニングをした「ハンドリング バイ ロータス」。ハードよりも洗練を優先させたものとなった。1988年に登場したジェミニZZハンドリング バイ ロータス。ロータスという英国のスポーツカー、レーシングカーメーカーがその「足」を手掛けたということで大きな話題となった。ロータスはいすゞ自動車の要求に沿って、徹底的にテストを行った上で「ハンドリング バイ ロータス」の名を冠した。サスペンション形式はイルムシャーを含めたFFジェミニと共通のフロント:ストラット、リア:コンパウンドクランクを引き継ぐ。このサスペンション形式をベースに、ド・カルボンタイプリヤショックアブソーバーの採用等、ロータス社のチューニングにより、しなやかな乗り心地と高い操安性を実現した。ロータス社がまず手を入れたのは、ショックアブソーバーだった。このパーツはスプリングの不快な振動を吸収するだけでなく、コーナリング時のロールスピードを決めるという重要な役割を持つ。ロータスは、フロントには低圧ガス封入/リアに高圧ガス封入式ショックアブソーバーを採用した。ショックアブソーバーのガス室に封入した熱膨張率の小さなガスの働きがポイントで、激しくピストンがストロークしても、常に安定した減衰力を発揮することができる。サスペンションパーツ一式。下方にあるのがメインサスペンションアーム。一本の梁で構成されているいわゆるツイストビームになっている。特にリアは大容量でありつつ、ピストンを通してのオイルの流動を促す単筒式(ド・カルボンタイプ)ショックアブソーバーや、フルバンプした時の底づきを防ぐ発泡ウレタン製ヘルパースプリング(バンプラバー)の働きとともに、常に最適の減衰力と衝撃吸収性を発揮。ロールスピードを絶妙にコントロールするものだ。ジオメトリーを見ていくと、フロントサスペンションのキャスター角は2度15と大きく設定した。これにより直進安定性が向上し、特に高速クルージング時に圧倒的な直進性を実現していた。またキャスター角を大きく取ることは、転舵初期にアウト側タイヤがネガティブキャンバー方向に向くために機敏なハンドリングをもたらす効果がある。イルムシャーはモータースポーツベース車として使ったり、峠を攻めるような激しい走行を前提にした走行特性だったのに対し、ハンドリング バイ ロータスは普段から上品に乗っていてもいざとなったら・・・というような実力を秘めていたと言えるだろう。ファミリー層からスポーティカー好きな若者層まで幅広い人に受け入れられるような操縦性、そして乗り心地を持ったクルマといえる。JT190ジェミニ ハンドリング バイ ロータス シャシ 主要諸元●ステアリング形式:ラック&ピニオン式●サスペンション形式(前):ストラット式●サスペンション形式(後):コンパウンドクランク式●ブレーキ(前):ベンチレーテッドディスク式●ブレーキ(後):LT式ドラム●タイヤサイズ:185/60R14 82H