まずは、見た目から比べてみよう。新型のデザインを「2代目からの正常進化」と思っている人が少なくないだろう。 たしかに、写真や映像だとそうした印象を持つかもしれないし、また「ジャパンモビリティショー2025」で実車を見た人の中にも、そう思っている人は少なくないかもしれない。 ところが、実際に新型と2代目を並べて比べると、明らかに違うクルマだと感じる。 最も大きな違いはウエストラインが低く見える点だ。そのため、サイドウィンドウが大きく見えるのである。 新色「ネイビーブルーマイカ」の新型「CX-5」(筆者撮影) ただし、寸法をこまかく見るとフードの高さが50mm高くなっている。それでもウエストラインが低く見えるのは、ボディ全体が大きくなっているからだ。 新型CX-5は2代目と比べて、全長で115mm増の4690mm、全幅は15mm増の1860mm、全高が5mm増の1695mmだ。ホイールベースは115mm増で、その分で全長が伸びた形である。 それでも「CX-5らしさを凝縮し、リアタイヤへのトラクションを強調する動きを取り入れた」(担当デザイナー)とのことで、パッと見ただけでは先代との違いがつかみにくいのかもしれない。 CX-60との違いはサイズ感より車格感 CX-60と比べると、CX-60のほうが新型CX-5よりも全長で50mm、全幅で30mmそれぞれ大きいが全高は10mm低い。 「CX-60」は直6エンジンを縦置きすることもありボンネットが長い(写真:マツダ) フロントマスクの押し出し感がCX-60は強いこともあり、新型CX-5とのサイズ感の違いというよりも、マツダラインナップでの上位モデルとしての存在感が強い。 次に、インテリアを比べてみる。2代目はダッシュボードが立った造形であり、表皮が厚く車内全体の重厚感がある。 対する新型CX-5は、水平基調の2段構えの流れがドアトリムまで及び、さらにAピラーを細くしたこともあり前方視界がスッキリした。 また、15.9インチもしくは12.9インチの大型タッチパネル式センターディスプレイを採用したことで、操作方法がセンターコンソールのダイヤル式から刷新された。 一方、CX-60のインテリアは高級・エレガントといった雰囲気が強く、そうした雰囲気の中で物理スイッチとのバランスが良い。 シンプルに徹した新型「CX-5」のインテリア。写真の白・黒タイプはオプション(筆者撮影) 「CX-60」のインテリアは素材感などで上級感を訴えてくる(写真:マツダ) つまり、新型CX-5のインテリアは、これまでのマツダSUVとはかなり違うという印象だ。 後席に座ると、膝の前の空間(ニークリアランス)が広いことを実感する。ホイールベースを延長したことで、64mm広くなった。後席ドアの開口部も広がっており、乗り降りが楽だ。 また荷室も広がっており、2列目を倒すと車中泊ができると感じるくらい伸び伸びできる。 CX-60と新型CX-5を乗り比べてみると? では、乗り味、乗り心地、ハンドリングはどうだろう。比較した印象を正しく伝えるため、試乗した順番で紹介する。 まずは、CX-60(ディーゼル・マイルドハイブリッド・4WD)からだ。ユーザーとして最も気になるのは、乗り心地であろう。 初期モデルでは「リアサスペンションが硬い」という市場の声があり、結果的にマツダはサスペンションの大幅改良を余儀なくされた。改良によってリアサスペンションを介した路面からの突き上げは、かなり角(かど)が取れている。 「新型CX-5」の後席。突き上げなど乗り心地は良好(筆者撮影) ハンドリングは、まさにFR(後輪駆動)がベースであり、首都高速の細かいコーナーはハンドルの操舵角度を一定に保ったままアクセルを踏んで曲がる感じだ。4WDで重量は1950kgあるが、クルマ全体が重ったるい印象はない。 次に、新型CX-5のFFだ。エンジンは2.5Lマイルドハイブリッドで、ディーゼルのような強いトルク感はないものの、アクセルレスポンスとクルマ全体の動きのバランスが良い。 開発主査の山口浩一郎氏は「軽快で一体感のある人馬一体の深化」と表現するが、まさにその言葉どおり「軽快さ」が際立っている。ひと言で表現すれば「上級セダンのような走り」だ。 そもそも、乗り込みの時点でドアが軽く感じ、インテリア全体が軽快に見える。さらに走ると、気持ちがすうっとする。 軽いハンドル操作で、適度なピッチ・ロール・ヨーが起こり、クルマ全体と気持ちがシンクロ(同調)するのだ。 水平基調のインパネや広い視界により運転しやすい(同乗者撮影) だから、かなり狭い道を走っても、少し荒れた路面を通っても、高速道路で巡航しても、軽快に走ることができる。 マツダの真骨頂であるモデルベース開発により、ショックアブソーバーの動きを徹底的に追求し、初期応答性を高めた。それに伴い、前後スプリングのバネレートを下げて、しんなりする動きを狙ったという。 ホップ、ステップからのジャンプ こうした「CX-5の軽快さ」に対して、長年のマツダファンの中には「マツダらしくない」という印象を持つ人がいるかもしれない。 だが、マツダとしてはグローバルでユーザーと販売店の声をしっかり聞いたうえで、より多くの人にCX−5がある生活を楽しく過ごしてもらうために、今回の走り味に行き着いたと言える。 初代から2代目までは、ホップ、ステップ、そして今回CX-5として大きくジャンプしたと解釈するのが妥当だろう。 試乗会では初代モデル(青)も用意されていた(筆者撮影) またCX-5ではディーゼルを廃止し、マイルドハイブリッドとなっていることも特徴のひとつ。そのうえで、マツダ独自開発の「走り重視のハイブリッド」(山口主査)が2027年中に日本でも導入予定だとする。 次に、新型CX-5の4WDに乗った。同FFと比べると、乗り心地の良さはそのままに、クルマ全体のガッシリ感が増す印象だ。個人的な好みで言えば、もう少しFFよりのマイルドなハンドリングを望む。 そして新型CX-5試乗後、2日にわたって2代目CX-5に乗ってみた。 すると、乗り心地がかなり硬く感じる。首都高速の道路の継ぎ目では、フロントとリアそれぞれで突き上げを感じた。決して不快ではないが、新型CX-5の乗り心地の良さを知ってしまうと、余計に硬く感じるのだろう。 夜の首都高速を走る2代目「CX-5」(同乗者撮影) また、着座位置が高いとも感じた。ヒップポイントが高いだけではなく、着座姿勢が新型CX-5とは明らかに違う。新型CX-5では、もう少し足の位置が前になり、スポーティな走りの感覚になることを、2代目を乗って改めて感じた。 新型CX-5での学びがラージ商品群を育てる こうして3モデル(4グレード)を比較試乗したことで、マツダが「新型CX-5が果たす意義」として掲げた「世界で愛されるCX-5 各市場の多くのお客様に愛される基軸車種」という意味をしっかり感じ取ることができたと思う。 25年データでは、CX-5はグローバル販売の28%、また国内販売の25%を占める、まさに基軸車種である。 新型CX-5での開発の学びは、CX-60/80などマツダラージ商品群の開発にも十分に生かされることだろう。