BMW「2シリーズ グランクーペ」が持つBMWらしさ

2025年3月5日に日本発売となったBMWの新型「2シリーズ グランクーペ」。価格は、220グランクーペMスポーツが528万円、220dグランクーペMスポーツが548万円、M235 xDriveグランクーペが734万円(写真:BMW)
BMWが2025年3月に「2シリーズ グランクーペ」の新型を日本で発売した。2019年登場の初代に新しいOSを搭載したり、足まわりを強化したりと、商品力を上げたモデルだ。なによりユニークなデザインコンセプトを追求し続けているのがBMWらしい。
【写真を見る】BMWの新型「2シリーズ グランクーペ」の内外装を詳しく確認する(64枚)
“BMWらしい”というのは、同社は4ドアクーペを“グランクーペ”の名で、いくつも手がけてきているからだ。
この2シリーズだけ見ても、2ドアクーペとアクティブツアラーがある。少し前はセダンとクーペ、それにグランクーペという布陣もあった、多様性に商機をみているのだ。
新型2シリーズ グランクーペの概要
今回の2シリーズ グランクーペの走りは、スタイリングから期待するものを、いい形で与えてくれるという印象が強い。
2025年2月にバルセロナで試乗してわかったのは、軽快なフットワークと、使い勝手もいいインフォテインメントシステムが、スポーティかつエレガントなデザインとよく合っていることだった。
新型2シリーズ グランクーペのラインナップは、3つのモデルで構成される。
1.5リッター3気筒マイルドハイブリッドの「220グランクーペMスポーツ」
2リッター4気筒ディーゼルの「220dグランクーペMスポーツ」
もっともスポーティな「M235 xDriveグランクーペ」

2シリーズ グランクーペのスタイリング。ボディサイズは、全長4550mm✕全幅1800mm✕全高1435mmで、ホイールベースは2670mmとなる(写真:BMW)
私が2025年2月にバルセロナで乗ったのは、「220グランクーペMスポーツ」と「M235 xDriveグランクーペ」だ。
220グランクーペMスポーツは、1498cc3気筒ガソリンエンジンを搭載し、最高出力115kW、最大トルク240Nmを発揮。7段デュアルクラッチ変速機をもつ前輪駆動だ。
一方のM235 xDriveグランクーペは、1998cc4気筒エンジンを搭載し、221kWの最高出力と400Nmの最大トルク。ギアボックスは7段デュアルクラッチと共通だが4輪駆動だ。サスペンション、ステアリング、ブレーキ、それに内外装がグッとスポーティな仕立てとなる。
シリーズで共通した元気のよさ

2シリーズ グランクーペのリアビュー(写真:BMW)
ひとことで乗った感想をいうと、たいへん元気がいい。全長4.55mと日本の市街地でも扱いやすそうなサイズの車体とともに、身のこなしに軽快感がある。2モデルとも、基本的にはその美点が共通している。
BMWの特長は、車型にかかわらず、運転の楽しさを前面に押し出しているところにある。
BMW車は、XシリーズというSUVと、それ以外の伝統的なスタイルのモデルに、大きくラインナップが分けられる。さらに奇数モデルと偶数モデルが設定されている。
2シリーズは、1シリーズとプラットフォームを共用する。奇数の1シリーズが居住性を重視したクロスオーバー車型(以前はセダン)であるのに対して、機能よりもスタイルを重んじている、割り切ったモデルが2シリーズだ。

2シリーズ グランクーペの走行シーン(写真:BMW)
偶数のBMWモデルは、スタイリッシュさをセリングポイントとしていて、メルセデスが初代「CLS」(2005年)で採用したボディコンセプトを引き継ぐような形で、今は2シリーズをはじめ、4シリーズ、6シリーズ、(2024年に生産中止になった)8シリーズに採用している。
ことボディスタイリングの面において、BMWとメルセデス・ベンツの関係はおもしろい。
メルセデス・ベンツが初代「GLEクーペ」を2016年に発表した際は立場が逆だった。「機能よりスタイルを優先したSUVが市場に受け入れられるか自信がなかったけれど、BMWがX6(2008年)で成功したのをみて、発売しようって決断したんです」と、私はメルセデス・ベンツの開発者から聞いたことがある。
性能とデザインに加えて利便性が際立つ

M235 xDriveグランクーペのスタイリング(写真:BMW)
BMWの2シリーズは「スポーティで俊敏なハンドリング性能に、優雅なデザイン」を併せ持っていることが特徴だ。グランクーペでは加えて「高い利便性」をうたう。
4ドアのボディは、荷物の積み下ろしが便利で、車体が比較的コンパクトな2シリーズであっても、小柄な人なら問題なく後席に乗っていられる。そこが4ドアのグランクーペが持つ「利便性」だ。
私が2シリーズ グランクーペをじっくり眺めて思ったのは、凝縮感だ。パワーが内部から車体をぐっと押し出すような、力強さがみなぎっている。それでいて、たたずまいは、BMWの説明どおり優雅さを感じさせる。今でも魅力を失っていない初代3シリーズを連想させるモデルだ。

M235 xDriveグランクーペのエンジン。ターボと48Vマイルド・ハイブリッド・システムを組み合わせた直列4気筒ツイン・パワー・ガソリン・エンジンは、最高出力221kW/5750rpm、最大トルク400Nm/2000-4500rpmを発揮(写真:BMW)
走り出しても印象はそのまま変わらない。そこも嬉しくなるポイントだった。
220グランクーペMスポーツの1.5リッターエンジンは、スタータージェネレーターの働きをする小型モーターが備わり、発進時や加速時にトルクを上乗せする。
このパワーユニットはミラーサイクルという燃焼方式を採用しているため、燃費と引き換えに、低回転域でのトルクが細りがちだ。そこでBMWのエンジニアは、マイルドハイブリッド化し、かつ回転が上がっていくとターボチャージャーがまわりだす設計を採用した。
ドライブして感じたのは、たしかにこのエンジンは2500rpmあたりから力を出しはじめることだった。
個人的には低回転域のトルクが薄めのクルマをマニュアルシフトで乗るのも大好きなので、峠道ではデュアルクラッチ式の変速機をマニュアルで操作してギアを選び、回転を上げながらの走りを楽しませてもらった。
Mスポーツらしい走りの質感

M235 xDriveグランクーペは、標準でMスポーツ・ブレーキ、オプションでMコンパウンド・ブレーキを設定(写真:BMW)
車名にMスポーツとあるように、足まわりはスポーティに仕立てた仕様だ。荒れた路面だとタイヤがやや硬めな印象もあるが、そのぶん操縦性がよく、握りが太めなステアリングホイールを操作して、小さなカーブを右に左にと抜けていくのは、かなりいい感じだ。
M235 xDriveグランクーペは、先述のとおり、221kWとよりパワフルな2リッター4気筒エンジン搭載で、4輪駆動になる。3ケタの数字の前に「M」とつくだけあって、サスペンション、ステアリング、ブレーキ、それに内外装が、よりスポーティな仕立てだ。

M235 xDriveグランクーペのインテリア(写真:BMW)
じつは、もう1台、別のM235 xDriveグランクーペに乗った。そちらは「Mテクノロジーパッケージ」といって、エンジンやサスペンションの一部を軽量化。剛性も上げられている仕様で、タイヤはサーキット用のスリックまで用意される。試乗車はノーマルタイヤだった。
ノーマルタイヤとはいえ、足まわりのセッティングは硬めで、バルセロナ近郊のちょっと荒れた路面ではガツンガツンと衝撃が伝わってくる場面もあった。ただし、自動車専用道路に入ると、(日本よりメンテナンス状態がよいせいもあり)フラット感がうんと強くなる。
意外だったのは、低回転域のトルクがやや薄めというか、エンジン回転を高めに保ちながら走らせたくなるキャラクターだ。エンジンメーカーなどと言われるBMWだけあって、回転を高めに保つと、アクセルペダルに乗せた足とエンジンがつながったみたいな、ダイレクト感のある反応だ。音もよい。
BMWの美点は多様性にある

M235 xDriveのエンブレム(写真:BMW)
グランクーペなる車型といい、豊富なパワートレインといい、バリエーションの多さこそ、BMWの美点だ。車種を絞る動きが自動車メーカーに広がっている感があるけれど、やっぱり多品種こそ、趣味の道具である自動車の真骨頂。それがわかっている。