「A4」に代わる主力モデル「A5」の実力はいかに アウディのミッドサイズモデル「A5」シリーズが、2025年2月より日本導入を開始しました。 「A5」シリーズでは第3世代となる最新型の最大の特徴は、新開発の車両への切り替えのタイミングに合わせて、モデル群自体がリニューアルされたことです。アウディ新型「A5」(画像:アウディ・ジャパン)アウディ新型「A5」(画像:アウディ・ジャパン) 従来型までの「A5」シリーズは、ミドルサイズセダンとステーションワゴン「アバント」で構成される「A4」シリーズとデザインや基本構造を共有する2ドアクーペ、2ドアオープンカーのカブリオレ、テールゲート付きの4ドアクーペ「スポーツバック」で構成されていました。【画像】超カッコイイ! これが新型「A5」です! 画像で見る(30枚以上) しかし新型では、A4にこのA5を統合することに。その結果、従来型のA4セダンとA5スポーツバックの持ち味を融合した進化系となる「A5セダン」と、A4アバントの後継モデル「A5アバント」の2本立てとなりました。 また世界的なSUV人気の影響から、2ドアクーペの市場も縮小しているため、正統派の2ドアクーペとカブリオレは、このままラインアップから消滅するとみられます。 その新型のトピックといえば、プラットフォームの刷新とデジタル化の強化でしょう。 プラットフォームは、新世代内燃機関向けの「PPC(プレミアムプラットフォームコンバッション)」を初採用。 急速な電動化シフトでエンジン車の今後に注目が集まっているアウディですが、エンジン車用のプラットフォームもしっかりと開発していたというわけです。 最新の情報では、エンジン車の販売終了も後ろ倒しになるようなので、PPCによる新型車の行方も注目されます。ちなみに、欧州ではPPCを採用したミッドサイズSUV「Q5」も登場済みです。アウディ新型「A5アバント」アウディ新型「A5アバント」 日本仕様のラインナップは、セダンとアバントともに、ガソリン/ディーゼルそれぞれで基本的に1エンジンとなっています。 ガソリン車では、FF車で2リッター直4ガソリンターボエンジンの110kW仕様「A5 TFSI」と、4WD車で同エンジンの150kW高性能仕様「A5 TFSIクワトロ」の2タイプを設定。いずれもピュアエンジン車となります。 人気のディーゼル車は4WD車のみで、マイルドハイブリッド機能付きの2リッター直4ターボエンジンの150kW仕様「TDIクワトロ」を設定(日本にも投入予定)。そして、より高性能車を求める人向けに、4WD車で3リッターV型6気筒ガソリンターボを搭載する「S5」があります。 新型よりトランスミッションは、全車DCTタイプの7速Sトロニックとなりました。また人気のスポーティ仕様「Sライン」もオプションとして用意されるのでご安心を。 実用性に大きく影響するボディサイズですが、従来型のA4と比べ、一回り拡大されています。 セダンが全長4835mm×全幅1860mm×全高1455mm、アバントが全長4835mm×全幅1860mm×全高1470mmとなり、スタイルの違いから、全高のみが変化。ホイールベースは共通の2895mmになりました。 従来型と比べ、全長が80mm拡大されていますが、そのうち70mmはホイールベースなので、その分室内が広くなったともいえます。 デジタル化の強化では、自慢のデジタルライトとデジタルコクピットを大きく進化させています。 LEDヘッドライトは、標準でデイタイムライトの表示を複数から選択できるカスタマイズを可能としており、愛車の表情に変化をつけることを可能になりました。またロック解除や降車時のライトによる表現にも新たな工夫が施されています。 デジタルコクピットは、各社に先駆けて多くのモデルでディスプレイメーターを採用してきたアウディの“第2フェーズ”と呼べるものとなり、現在、欧州車に多いダッシュボード上部にフレームレスの大型カーブディスプレイを配置したものとなりました。 さらにドライバーを中心したデザインとなっており、メカニカルスイッチもより削減されました。 新機能としては助手席用のタッチスクリーン「MMIパッセンジャーディスプレイ」も採用。ナビやオーディオなどの一部車載機能の操作に加え、走行中も助手席で映像作品が楽しめるようになり、エンタメ性も強化されています。 その一方で、ドアトリムやシートなどのデザインや質感は、アウディらしい上質な設えとなっており、ドイツ高級車の伝統もしっかりと受け継いでいます。新しい「5ドアセダン」と「5ドアステーションワゴン」の違いは? 今回の試乗では、セダンとアバントともに同グレードであるTFSI クワトロに乗ることができました。エンジン性能は、最高出力204ps、最大トルク340Nmを発揮。車両重量は1800kgほどであり、意外にもセダンとアバントでは、20kg差に留められています。 スタイリングは、いずれもスポーティさと低重心さを感じさせるスタイリッシュなもの。 セダンは、従来のA5スポーツバックの後継でもあるため、4ドアクーペのフォルムを持ちますが、アバントも実用ワゴンではなく、「シューティングブレーク」と呼ばれるクーペライクな美しいシルエットを意識した流麗なデザインとなっています。アバントにおよぶ十分なラゲッジ容量を持つ新型「A5」アバントにおよぶ十分なラゲッジ容量を持つ新型「A5」 ラゲッジ容量は、4WD車だと標準時でセダンが417リッター、アバントが448リッターとなっており、大型テールゲート付きのセダンが健闘。その万能ぶりをうかがわせますが、テールゲート開口部の高さや荷室の長さでは、アバントに分があります。 さらにルーフ形状の違いから、ヘッドクリアランスがアバントの方が広いため、後席のゆとりも増しています。 ただし、セダンも後席に男性の筆者(大音 安弘)が着座しても十分な広さが確保されているため、スタイリングの好みでボディタイプを選んでしまっても良いでしょう。 アウディが得意する走りは、男性が3名乗車した状態にも関わらず、機敏な動きと力強い加速を見せてくれました。ピュアエンジンのリニアな加速感もエンジン好きにはたまらないポイントでしょう。 試乗車は、オプションで用意されるスポーツサスペンション搭載車でしたが、減衰力調整機能も備えるため、しっかりとした操作性や走行安定性を確保しながらも、乗員に不快な振動を感じさせない、高級車らしい味付けとなっています。 PPCプラットフォームの採用でボディ剛性も高まっているようなので、標準サスペンション搭載車の乗り味にも期待が高まります。残念ながらその確認は、次回の宿題となりました。アウディ新型「A5」アウディ新型「A5」 ボディサイズのアップで懸念される取り回しですが、街中や首都高速などの試乗では、全く大きさを意識させることなく、従来型同様の感覚で扱うことができます。 今回の同仕様比較では、大型テールゲート備えながら、アバントよりもボディ剛性の高さを感じさせ、アバントに迫る使い勝手を備えるセダンに軍配を上げたいと思います。 内外装がよりスタイリッシュとなり、機能も向上されたA5は室内も広いため、より上位のミドルサイズモデル「A6」では大きすぎるという人にもオススメです。 デジタルコクピットも、流行の巨大なセンターディスプレイもないため、運転席周りのデザインに雑味がないことも好印象でした。 現在のところEV(電気自動車)に熱心なアウディですが、磨き続けてきたエンジン車にも、まだまだ期待が膨らむ試乗となりました。