11/05/2025 · 4 ヶ月前

「純血アルピナの集大成」はまさに理想のグランツーリスモ! 529馬力の直6ツインターボを搭載する「B3 GT」の走り味とは

最後まで進化の手を止めない“アルピナマジック”とは?

 2022年にBMWグループがアルピナブランドの商標権を取得すると発表してから3年。ついに今年2025年がラストイヤーとなりました。アルピナの名を冠したモデルは今後も残り続けますが、アルピナのマイスターたちが丹精込めて磨き込んだモデルは2025年12月31日で最後となります。

アルピナ「B3 GT」

【画像】「えっ!…」フィナーレ間近でも進化の手を止めない! これがクルマ好き必見のアルピナ「B3 GT」です(30枚以上)

 そんな“純血”アルピナのファイナルモデルとなるのが本記事でフォーカスする「B3 GT」。その内容は単なるコレクターズアイテムの域にとどまらず、従来の「B3」に対するアップデート内容も車両全体に渡ります。最後の最後まで進化の手を止めることのない“アルピナマジック”とは、どんなものなのでしょうか?

「B3」から「B3 GT」への進化に際し、エクステリアはフロントにカナードとスプリッターを追加。リアにも新デザインのディフューザーが採用されています。これらは単なるアクセントではなく、より安定した高速走行性能(巡航最高速309km/h)を実現するためのもの。まさに機能部品というわけです。

 20インチの鍛造アルミホイールは、フロントスポイラーのロゴやサイドのデコライン(オプション)と同様、「GT」専用のデザインカラーであるオロ・テクニコ仕上げとなります。

 インテリアは改良版のBMW「3シリーズ」に準じてインパネ回りのデザインを刷新していますが、シフト回りは従来モデルと同じレイアウトという、アルピナ独自の仕様となっています。

 専用のメーターパネルやラヴァリナレザー仕立てのステアリング/シートの採用に加えて、各部にオロ・テクニコのワンポイントやカーボンパネルを採用。スポーティ寄りのエレガント、といった印象の空間に仕上がっています。

 筆者(山本シンヤ)はそんな「B3 GT」を、内外装ともにクールなアルピナに、ちょっとだけ“ヤンチャ”な要素がプラスされたモデルであると感じました。

アルピナ「B3 GT」

 パワートレインは従来モデルである「B3」と同じ。3リッター直列6気筒ツインターボエンジンである“S58”型をベースに、ターボチャージャー、インテークマニホールド、エアクリーナーボックス、エキゾーストシステム、制御系などにアルピナ・オリジナルのチューニングが加えられています。

 なかでも「B3 GT」専用のエンジン制御は、なんと1年以上のベンチテストと実走行テストを元にセットアップされたものだといいます。その結果、従来モデル比プラス34psとなる529ps、730Nmを発生します。

 日常域ではアクセル開度に合わせて忠実に反応する応答性、ターボエンジンであることを感じさせないシームレスな盛り上がり、そして、明らかに抵抗感がない回転フィールなど、ハイパフォーマンスなのにそれを感じさせないスマートな印象は、「B3」と大きく変わりません。

 ただし、アクセルペダルを深く踏み込みこんでいくと「B3 GT」らしさが顔を出します。それは何か? フライバイワイヤ仕様ながら、まるでアクセルワイヤーを介しているのでは? と思うくらいのスロットルのコントロール性の高さや、回すほどに盛り上がりを見せるパワー感、そして、レッドゾーンを超えていきそうな伸びのよさなど、スマートさを損なうことなく“野性味”がプラスされているのです。

 ちなみに筆者は、「B3」のエンジンは“プレミアムとスポーツが共存したもの”だと思っていましたが、新しい「B3 GT」のそれは“プレミアムとピュアスポーツが共存したもの”と表現してもいいと思います。

 フットワークは、ベースとなる「3シリーズ」の改良に伴い、リアダンパーとボディ結合部の剛性アップなど、車体剛性の見直しが図られています。

 具体的には、コアサポートとストラットとをつなぐ“ドーム・バルクヘッド・レインフォースメント・ストラット”の採用。その肉厚はもちろんのこと、位置決めの正確さ、強靭な結合方法(塑性域回転角法)などから、もはや補剛パーツというよりも車体の一部といった方がいいほどの存在です。

 この強化された車体に合わせて、バネ、ダンパー、スタビライザーの再セットアップを実施。ちなみにタイヤは、アルピナ専用スペックのピレリ「P-ZERO」(フロント=255/35ZR20、リア=265/30ZR20)を履いています。

「B3」で感じた“操作しただけ自然に、かつ素直に動く応答性のよさ”や、“ベアリング精度を変えたかのようなスムーズなクルマの動き”は不変ですが、「B3 GT」はわずかながら、よりソリッドになった印象です。

 といっても、単純にスポーツ志向の走り味に振られているわけではなく、薄皮を2~3枚挟んではいるものの、その薄皮がピーンと張っている……かのような乗り味なのです。

扱いやすいのにスッキリ爽快なハンドリング

 そんな「B3 GT」のハンドリングは、直6を搭載しながらノーズの入り方が4気筒エンジン車級に良好なことと、リアの鉄壁のスタビリティが共存していることに驚きます。この辺りは、車体剛性の最適化に合わせた再セットアップが効いているのでしょう。

アルピナ「B3 GT」

 姿勢変化は「B3」よりも抑えられていますが、ロールを上手にコントロールしながらサスペンションを巧みに沈み込ませ、クルマ全体で曲がっていく感じは変わらず。

 ただし、その際にクルマから伝わってくる情報がよりクリアかつ正確なので一体感やコントロール性が増しており、結果として“扱いやすいのにスッキリ爽快なハンドリング”だと感じました。個人的には、「B3」よりも“駆けぬけたくなる”要素が多めだと思います。

 そんな「B3 GT」の乗り心地は、しなやかな足さばきと正確な路面からの入力の伝わり方、人間の波長に合った減衰具合などから、20インチのタイヤ&ホイールを履いていることを忘れてしまうほどの快適さ。ただし走り味と同じく、「B3」と比べればソリッドな印象が強まっています。

 ちなみに、ドライブモードに連動してサスペンションの味つけは変わります。

「コンフォート・プラス」モードは“ちょっと引き締められたフランス車”のよう。デフォルトの「コンフォート」モードは“フラットライドな万能グランツーリスモ”的。そして「スポーツ」モードは“クールなピュアスポーツ”風といった具合にそれぞれの違いは明確ですが、個人的には足のセットアップは1種類で、速度域や用途に合わせ、例えば、ボディコントロールや入力の収め方、そして収める時間などをアジャストしているのではないかと分析しています。

アルピナ「B3 GT」

 そんな「B3 GT」で驚きだったのは、タイヤの指定空気圧がなんとデフォルトで3.4バールという高さだったこと。ちなみに前身の「B3」は、250km/h以下では2.7バール、それ以上の速度域では3.4バールでした。

 なぜこれほど指定空気圧が高いのか? それは、5名乗車時でも巡航最高速で安全に走り続けるため、だといいます。しかも、この高い空気圧ながら上質な乗り心地を実現できている辺りは、素直に「なぜだ?」と思います。

「B3 GT」の上質な乗り心地は、サスペンションやタイヤ&ホイールだけでもたらされるものではなく、AWD制御やボディ、ブッシュなど、総合的なバランスによって成り立っているものなのでしょう。

* * *

 総じていうと、「B3 GT」はアルピナが目指してきた“真のグランツーリスモ”に対するひとつの集大成であると同時に、アルピナの原点であるモータースポーツへの想いも込められた1台であると感じました。

 現時点でまだ発注可能ですが(多くの人がステーションワゴン版の「B3 GT ツーリング」をセレクトしているのだとか)、残念ながら本当に、次の“純血”アルピナは存在しません。迷っている暇などないのです。

“味”で勝負できる最後のクルマであるアルピナ「B3 GT」は、多くのクルマ好きにぜひご賞味いただきたい1台です。

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