【VW ゴルフ クロニクル Vol.1 ダイジェスト(2)】 初代ゴルフ 2ドア GTD モーターマガジン 1983年7月号
1974年のデビュー以来、最新型は8.5世代目となっている世界的ベストセラー車・VWゴルフ。初代モデルは1975年3月から日本への導入が開始され、今年で50周年を迎える。ここでは、その半世紀の足跡を辿った「VW ゴルフ クロニクル vol.1」(2025年2月25日発売)から、モーターマガジン誌1983年7月号で取材したゴルフ1の希少モデル「GTD」の試乗記事より、冒頭部分の抜粋をダイジェストでお届けしよう。

カッコも走りもGTIなみのド迫力

まるでGTIかと思えるような出で立ちで登場したGTD。70PSを発生するターボディーゼルで、ちょっとしたスポーツモデルなみの走りを見せる。
高性能な小型高速ディーゼルとして、世界から注目されているVWゴルフ・ディーゼルについにターボチャージャーが装着された。このターボ・ディーゼルは「ゴルフGTD」といい、GTIに次ぐ最大限の呼称を与えられている。それだけにエクステリアもGTIなみで、フロントのチンスポイラーやオーバーフェンダーも迫力ある大型。とてもディーゼル乗用車の風体といったものではない。

turboと刻印されたステアリングが、GTDであることを誇示している。
通常のゴルフはすべて右ハンドル仕様になっているが、GTDはカルマンによる特製のカブリオ同様、左ハンドルだ。それにハンドル自体、カブリオやシロッコと同じ4本スポーク仕様だから、GTDの地位は相当高いところに押し上げられている。
内装に特別な変化は見られず、インストルメントパネルやコンソールも、小物を置いたり収納したりできる棚などが沢山ある便利なものだ。残念ながらタコメーターは省略されていて、代わりは時計となる。
それで計器はというと、200km/hまで目盛られた威勢のいい速度計が主で、補助には水温計と燃料計のふたつだけ、カラフルな豆電球的インジケーターランプ(5個)の中には、グローランプが含まれている。
MTの5速は超ハイギアード
ミッションは5速MTで、これは例によって恐ろしくハイギアードな設定のものだ。1588ccのSOHCディーゼルをギャレットエアリサーチのターボチャージャーで過給させて、出力は30%も向上した。つまり最高出力はオリジナルの54PSから70PS(DIN)/4500rpmと強力になった。

やや後方にスラントされた直4ディーゼルは、ギャレットエアリサーチのターボチャージャーにより70PS/4500rpm、13.5kgm/2500rpmにパワーアップ。
ターボ・ディーゼルの動力性能は、排気量の大きいガソリン・エンジンの78PS仕様にはわずかに足りないが、トルクでは完全に勝るというから、同等の性能になったといえよう。ターボの過給圧設定は0.7バールと比較的高圧。コンプレッション比はノンターボと同じ23対1であるが、出力増大のためエンジンブロックは特別に補強がなされたものを使用している。
あらかじめ暖機されていたので、エンジン始動は全くの一発スタート。心もちアイドリングの打刻音と振動が減少したようである。クラッチをミートさせ、ホイールが回転を始めた時には、もうターボが効果を見せているようなトルク感を得る。ディーゼルの特性から、やはりこのゴルフもターボによるタイムラグは少なく、聞かされていなければ、決して異質さを感じさせない素直な性格であった。
持ち前の高回転型のおかげで、市街地での走行は高いギア比を思い切り引っ張り回せる楽しさがある。それはトルクがガソリン版以上なので、中低速域では信じがたいほど活発で俊敏だからだ。(…続きはムックにて)