モーターマガジン社が2026年2月17日に発行したムック本「GTメモリーズ15 PF60/JT150・190 ジェミニZZ/ジェミニイルムシャー」が好評だ。ここでは、そのダイジェストをお届けしよう。今回はPF60以降のジェミニの走りを支えたパワーユニットを紹介する。G180W、4XC1ターボ、4XE1の三基になるが、それぞれ個性に溢れ、魅力的なユニットだ。G180W型:PF60ジェミニZZ/Rを支えた1.8L直4DOHC1979年、PF60ジェミニのZZシリーズに、G180W型エンジンが搭載された。それまではエンジン型式はSOHCのみだったのが大幅にスポーティ度を増した。1817cc直4DOHC 8バルブという古典的な構造を採用、1シリンダーあたり吸排気1つずつのバルブを持ち、カムシャフト直動式のDOHCという構造だ。低公害システムとしては空燃比補助方式の三元触媒システムを採用し、シンプルで信頼性の高いものとしたのが特徴だ。内部も冷却水路の拡大、材質などの変更が行われている。エンジン全体で見ると、シリンダーヘッドが大きいだけでなくエンジン全体も大きめ。搭載位置も前寄りになってしまい、それが操縦性に影響を与えた面もある。補機類を見てみると、130psというハイパワーを支えるために、ラジエーターが大型化され冷却性能を確保している。具体的な放熱量は1800LSのG180型(SOHC版)の2700キロカロリーに対し、3300キロカロリーとなり、さらにファンシュラウドが装着される。電子制御インジェクション(ECGI)は、117クーペのG200型のシステムと基本的には同じだが、コントロールユニットにコールドスタート回路、水温オープン回路が追加され、コールドスタートバルブとサーモタイムスイッチが省略された。ヨーロッパ調のスタイリッシュなZZ/Rクーペ。そのスポーティな走りもG180W型の動力性能があってこそ。当時の若者層を中心に多くの支持を集めた。エンジンフィールはショートストロークの割には、レッドゾーンぎりぎりの高回転まで回して走るというよりも6000rpm当たりまでを中心にトルクを活かす方が向いている。SOHCに比べてシリンダーヘッドが大きくなったためにエンジン重量も嵩み、重心も高くなり、操縦性に与えるデメリットでパワーアップが相殺されてしまう面は否めなかった。それでも同時代ライバルと言える2T-GEU型1.6L直4DOHC8バルブエンジンを搭載したTE71カローラレビン/スプリンタートレノよりは確実にパワフルだったのは事実。いすゞ自動車のスポーツエンジンとしての人気は高かった。G180W型エンジン 主要諸元●エンジン型式・種類:G180W・直4DOHC8バルブ●排気量:1817cc●最高出力:130ps/6400rpm(グロス)●最大トルク:16.5kgm/5000rpm●内径✕行程:84.0✕82.0mm●圧縮比:9.0●燃料供給装置:電子制御燃料噴射式(ECGI)●使用燃料・燃料タンク容量:レギュラーガソリン・52L4XC1型+ターボ:FFジェミニに牙を与えたインタークーラーターボジェミニ イルムシャーのエンジンは 4XC1型 1.5L直4 SOHC+インタークーラーターボ。ベースエンジンは FF ジェミニ用に新開発され、シグナスIIの愛称が与えられている自然吸気版だ。まずはそこから解説しよう。パワースペックは最高出力86ps/5800rpm、最大トルク12.5kgm/3600rpm という控えめなパフォーマンスだが、乾燥重量で85kgというクラスナンバー1の軽量さを誇る。エアクリーナーからの吸気はターボのコンプレッサーを経てインタークーラーへ。そこからエンジン後方の吸気ポートへ導かれる。これにインタークーラーターボを装着したのがイルムシャー用エンジンになる。呼称はシグナスIIIで同じだが、エンジン型式は4XC1-T型になる。ベースエンジンと違う部分は、マイクロコンピューターにより常に最適な過給圧を得られるエレクトロターボと、空冷式インタークーラーを装着し、高い動力性能を目指したことだ。2ウェイターボモードシステムを採用したのも特徴だ。これはドライバーの選択により、手動でターボパワーセレクターを切り替えることで、マイクロコンピューターを通じてステッピングモーターを制御。ハイとローの二種類の出力が使い分けられ、走行条件やドライビングテクニックに応じた過給圧を選択できるものだ。コンパクトファミリーカーのイメージが定着していたFFジェミニだが、イルムシャーの登場によって一気にスパルタンな「マシン」として注目を浴びた。ターボによる高出力化にともなうエンジン本体のポテンシャルアップも随所に施された。クランクシャフトに8バランサーを採用。これによってスムーズなエンジン回転と俊敏なレスポンスを実現。さらに吸気マニホールドを等長化し、同時に高い冷却効率を持つ新設計のインタークーラーを装着することによって、低中速域から高速域までの幅広いゾーンで、クイックなレスポンスと出力アップをもたらしている。ターボエンジンの弱点であるターボラグの対策としては、ポート径の有効面積を広げ、無過給ゾーンを低減。違和感なく一気に回転が上昇するようなターボフィーリングを実現している。4XC1型+ターボエンジン 主要諸元●エンジン型式・種類:4XC1・直4SOHC+インタークーラー・エレクトロターボ付き ●排気量:1471cc ●最高出力:120ps/5800rpm(High)105ps/5400rpm(Low)※ともにネット ●最大トルク:18.5kgm/3400rpm(High)16.3kgm/3400rpm(Low) ●内径✕行程:77.0✕79.0mm ●圧縮比:8.5 ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射式(ECGI) ●使用燃料・燃料タンク容量:レギュラーガソリン・42L4XE1型:ハンドリング バイ ロータスの名に恥じない16バルブエンジンジェミニZZ ハンドリング バイ ロータスに搭載されたエンジンは、新開発となる4XE1型1.6L直4DOHC16バルブエンジンだ。トヨタ、ホンダ、日産などがコンパクトスポーツエンジンの主力とする「テンロクゾーン」に、いすゞ自動車も参入してきたといえる。このエンジンは、吸排気効率の向上と基本構造のシンプル化により、同クラスナンバー1の高出力と高回転まで気持ちよく吹き上がる出力特性を実現し、最高出力(ネット)135ps/7200rpm、最大トルク14.3kgm/5600rpmというパフォーマンスを得た。ハンドリング バイ ロータスのボンネット内にコンパクトに収まる4XE1型。ただし、カムシャフトによる直動式バルブ駆動のために、シリンダーヘッド自体はやや大きめだ。ポイントになるのはもちろんシリンダーヘッドだ。吸気2バルブ、排気2バルブ、センタープラグというDOHCとしての定石を踏み、コンパクトなペントルーフ型の燃焼室により、すぐれた吸気効率と燃焼効率を実現。動弁システムは、教科書どおりロッカーアームを介さずに直接バルブを駆動するダイレクトカム駆動方式を採用している。これで各部のフリクションロスを低減し、低回転から高回転にわたって安定したバルブ追従性を発揮する。ZZの名前が復活したハンドリング バイ ロータス。新型パワーユニットが与えられたことによって、いわゆるテンロククラスの主力車種となった。シリンダーブロック内に収まるピストン、コンロッドなど、主運動系の部品には高バランス化、および各部の剛性アップ、耐疲労度向上を図るなどの改善が施された。これにより、高回転域まで余裕を持って対応できるようになり、10.0の高圧縮比からレッドゾーン7700rpm以上を実現している。実際に走ったフィールは、直4DOHC16バルブらしく軽やかに吹き上がる、いわゆるスポーティなフィールは満点だ。ただ、ノンターボゆえにトルク感が薄いのも事実。もちろん一般的な走行では問題ないが、1速と2速のギア比が離れ気味のため、例えば本格的なジムカーナ、ダートラ走行などではシフトアップ時にトルク不足を感じることもあるかもしれない。必ずしも際立って高性能というわけではないが、昭和末期から平成初期の高性能エンジンとして十分な存在感を示した名機といえるだろう。4XE1型エンジン 主要諸元●エンジン型式・種類:4XE1・直4DOHC16バルブ●排気量:1588cc●最高出力:135ps/7200rpm(ネット)●最大トルク:14.3kgm/5600rpm●内径✕行程:80.0✕79.0mm●圧縮比:10.0●燃料供給装置:電子制御燃料噴射式(ECGI)●使用燃料・燃料タンク容量:レギュラーガソリン・42L