今や乗用車の世界ではオートマチックトランスミッション車(AT車)がほとんどで、マニュアルトランスミッション車(MT車)を探す方が難しい。実はバスの世界でもAT車が多くなってきている。現行モデルではAT車しかない車種もあり、普段乗っているバスがAT車である可能性は今後高まる。実際に営業運転で乗った感触から紹介していこう。【画像ギャラリー】バスのATっていろんな種類がある!古い方式も大人気?(8枚)文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)■初期のAT車は乗りやすい?初期のトルコン車は古い車両だが乗りやすいと好評? あくまでも路線車を営業運転するという前提での感想なので、こまめに停車して都度乗降がある状況での話である。記者が運転するのは主に中型車の日野レインボーである。まずは昔の乗用車ではよく見かけた「T字型」の形状をしたセレクトレバーが伸びている懐かしい形状だ。古い方式のトルコン車は概ね古いバスであることが多い いわゆるトルクコンバーター方式のAT初期の形状で、発進時や変速時のショックによる乗り心地や、スムーズでパワフルな加速性能という面では、この形状が最も過ぎれていると感じる。 素直なフィーリングで乗りやすく反応も良いので、この形状のATを搭載する車両は総じて古いが、運転士には人気がある。乗客にもさほど違和感がない変速で安心して乗れるのではないかと思っている。■不人気なのがAMTAMT車を好んでいる運転士はほとんどいない感じだ 写真のこの形状は、6速AMT車である。MTでのギヤチェンジによる変速をクラッチ操作を含めて単純に自動化したものなので、レバーを右に倒せばマニュアルモードで運転できる。マニュアル車に近い乗り心地で乗客には最も違和感がないのではないだろうか。終点で折り返すため方向幕(LED表示器)を確認した際のAMT車レインボー ただし、AMT車は変速のタイミングが運転者の意図しないところで起こるので、特に停止時に意図しないショックが大きく、要らぬ場面でエンジンブレーキがかかりすぎる。ギヤが下がる速度は落ちるがとトルクが増すので前に出ようとする力が大きくなり、停止しようとする場面では嫌がられる。 そしてシフトアップのタイミングもプログラムされた通りなので、道路状況によりもう少し引っ張ってほしい時や、早くシフトアップしてスピードに乗ってほしい時にはまったく無力である。これも嫌われる理由で、AMT車でダイヤに遅れが出始めると万事休すだ。■インターロックの方式ドアが開いているとバスは発進できない仕組みになっている 以上の2方式の共通点はインターロックの方式で、ドアが開いているとNレンジから動かせないのでDレンジに入らず、発進ができない。よって停車時にはNレンジにしてサイドブレーキを引き、ドアを開ける、発進時はこの逆の天順を取らないとバスは動かない。 ドアを閉めるのは比較的時間がかかるので、それを待ってからでないとDレンジに入らず、このたった1~2秒程度の手順が数十カ所ある停留所で積み重なれば簡単に分単位の遅れにつながる。それでもトルクコンバーター方式はパワフルなので、メリハリのある走りができるので、それほど苦にはならない。 AMT車の名誉のために言っておくと、マニュアルモードを駆使して走る運転士はもちろんいる。自分の意図したタイミングで変速しようとする猛者はまだまだいるのだ。100m以内に次の停留所がある路線では、少なくとも記者にはそのスキルはないので、AMT車に当たると複雑なのは事実である。■アリソン社製ATアリソン社製のAT操作パネルは電子式 最後に紹介するのは、米国アリソン社のATで、今のところ最新式だが方式はトルクコンバーターで、昔ながらの方式を採用する。しかし制御を電子化することにより、レバーではなく押しボタンで決定することが可能になっている。 エンジンブレーキが必要な場合は押しボタンで任意のギヤに下げるとインジケーターに現在のギヤが数字で表示されるのでマニュアル的な使用もできないわけではない。しかしトルコン方式なので、スムーズでパワフルな加速が可能で、運転士からも好評のようだ。古い車両に当たるとラッキーと思ってしまう記者 インターロックについて前述したが、アリソン製ATのインターロックはもっと便利に快適になっている。これまではシフトレバーの位置を基準に、シフトレバーを動かすことができるのはドアが閉まっているときだけで、ドアが開いていてはバスは動かせない。逆にNレンジに入っていないとドアは開かない構造だった。 アリソンATは基準をドアに置き、ドアが開くとシフトインジケーターのギヤ数字が点滅してN状態に変わる。つまりシフト操作をしなくてもドア操作をすると自動でNレンジにしてくれるのだ。パワフルさはエンジンそのものの排気量にも依存する ドアが閉まればギヤ位置は復帰するので、極論だが出庫から入庫まで走っていようが止まっていようが運転士が乗っている限りは、全部Dレンジでも自動で切り替えてくれるため触る必要がない完全なオートマチック車なのだ。 このわずか数秒の操作時間の短縮が積み重なれば大きな時分となって走行ダイヤに反映されるので、総合的には路線バスでちょこちょこ停車して乗降がそれなりにある路線であれば、アリソンATが最も運転士のストレスを軽減するATなのかもしれない。あくまでも記者個人の感想である。