近年多く見られる銀色の車両。こちらはステンレス製車体を採用した車両(東急9000系)です(編集部撮影、以下同)電車をはじめとする鉄道車両では、車体を塗装せずに金属の質感をあらわにして走っているものが数多くあります。 銀色の車両の多くは、車体の材質にステンレスやアルミ(アルミニウム合金)が用いられています。ステンレスやアルミは腐食(さび)に強い性質があり、車体を塗装して保護する必要がありません。そのため、ステンレスやアルミの車両の多くは無塗装のままとしています。 このうち、ステンレス車両(ステンレス製車両)の車体では、車体の凹凸が目立っています。この凹凸は、理由があって設けられています。 コルゲートとビード 南海高野線を走る車両。左の新しい8300系は側面がなめらかですが、右の6300系では「コルゲート」が付いており、側面がデコボコしていますステンレス車両の凹凸の最たる例が、「コルゲート」と「ビード」です。ステンレス車両のコルゲートはステンレスの板に波型の加工が施されたものですが、ビードは「ひもだし加工」とも呼ばれるように、金属の板(ステンレス車両の場合はステンレス板)へ部分的に凹凸が施されたものです。 ステンレス車両の歴史を見ると、世代としてはコルゲートがもっとも古く、次いでビードに移行し、現在はさらに進歩してどちらもなくなっています。 コルゲートが付いたのはなぜ? 日本の鉄道車両のうち、通勤電車のような大衆向けの電車でステンレス車体が本格的に採用されるようになったのは、1960年代からです。この当時に造られたステンレス車両ではコルゲートが採用されています。 先の通り、ステンレスは腐食に強い利点がありますが、一般的な鋼材よりも加工や溶接が難しいという課題があります。車体は数々の部材を溶接して組み立てられていますが、ステンレスを溶接すると歪みが目立つという問題があります。この歪みを目立たなくする目的で、コルゲートが用いられました。 軽量ステンレス車と「ビード」 東急8090系シリーズの譲渡車である秩父鉄道7500系。東急8090系は、量産車としては日本で初めて軽量ステンレス車体を採用した形式でした鋼製車体の車両では、車体の腐食を考慮して車体の外板に厚みを持たせています。これは、腐食によって外板の強度が落ちるためです。ステンレス車両では外板の腐食を考慮する必要がなく、その分だけ車体の外板を薄くすることができます。これにより、鋼製車体よりもステンレス車体の方が軽くなっています。 しかし、さらなる軽量化が求められたことで、ステンレス車体の構造が見直されます。車体強度の解析技術が向上したことと、ステンレスの鋼材の改良とあわせて、1970年代後半に軽量ステンレス車両として登場します。 この際、コルゲートに代わって取り入れられたのがビードで、車体の強度が求められる箇所に施されています。 紙を例にすると、折り目のない紙に左右から力を加えると簡単に曲がってしまいます。しかし、紙を折って広げた場合、折り目と平行な方向に力を加えると、折っていない状態よりも曲がりにくくなります。これは、金属の板についても同じことが言えます。凹凸の加工を施すことによって、薄い板でも強度が出るようにしています。 ビードではコルゲートよりも凹凸が少なくなり、車体の清掃がやりやすくなっています。さらに、平面の部分が増えたことで側面にラインを施すことが容易になり、デザインの自由度が増しています。 軽量ステンレスのコルゲート 軽量ステンレス車体とあわせて導入されたビードですが、軽量ステンレス=ビードではありません。コルゲートにも凹凸があり、ビードと同じく強度を持たせることができます。コルゲートを用いた軽量ステンレス車両もあり、京成3600形のほか、2026年5月に復活運転が行われた東急8500系8637編成もコルゲートの軽量ステンレス車両です。 東急電鉄の車両はステンレス車体を長らく採用していますが、8500系では増備過程で軽量ステンレスに移行しています。東急の車両では、8000系の増備車での試作を経て、8090系や9000系で本格的にビードが採用されていますが、9000系のなかでも増備過程で車体の制作方法が変わっています。 東急9000系は西武7000系として再スタートを切りますが、最初に改造された編成は東急9000系の初期の車両で、車体側面の赤い帯の部分にステンレス板が添えられています。後期の車両ではステンレス板がなくなり、帯の部分で車体の出っ張りがなくなっています。 軽量ステンレスは国鉄・JRの205系が登場した際に技術が公開され、以後はステンレス車体が一気に広まっています。 凹凸が少ないステンレス車体 1990年代になると、さらにステンレス車体が改良されてビードもなくなります。車体制作の機械化による「つくりやすさ」が求められたことが主な理由で、車体の内側の補強によって強度が確保されています。室内側から補強のステンレス板を溶接することで、外側は平らにするというものです。 この構造は、JR東日本の通勤電車209系の試作車にあたる901系で導入され、2000年前後にはJR以外でも一般的になります。ただし、長期間に渡って増備された車両ではビードのままの車両もあり、JR東海の313系などが2010年代になってもビードのステンレス車体でつくられています。