トヨタ自動車「カローラ」といえば、誰が乗っても移動手段としては十分な大衆車だが、走りを磨いた「GRカローラ」となると話が違う。このクルマ、(モータースポーツ経験者などではない)普通の人が乗っても楽しいのか? 2025年9月に発売となった最新型「25式GRカローラ後期モデル」で試してきた。トヨタ博物館の「2000GT」に最接近! 伝説の名車が「透視図」で丸裸に? トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」で富士スピードウェイ(の構内路)を走ってきた!(本稿の写真は撮影:原アキラ) GRカローラとは? 「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を標榜して2022年に登場した「GRカローラ」(22式)。サーキットやダートなど、あらゆる環境に対応できる運動性能を盛り込むとともに、「GRヤリス」の小型で強力なパワーユニットをさらに高出力化(304PS)したものを搭載してデビューした。ボディはノーマルカローラスポーツ比で前後フェンダーを30mmずつ拡大するとともに、前60mm、後85mmのワイドトレッド化を実施。5ドア5人乗りの実用性と高い走行性能を両立していた。 23式から25式前期までの進化は? 2023年の「23式」では、ダイレクトな運転操作感やドライバーとの一体感を増すため、サスペンションやステアリングを締結するボルトの剛性やフロントバンパーダクトの形状を改善。さらに2025年の「25式前期」では、新開発の8速AT「GR-DAT」搭載モデルを追加(水冷式と空冷式のクーラーやサブラジエーターを装備)し、中速域(3,200rpm~4,600rpmあたり)のエンジントルクを370Nmから30Nmアップした400Nmまで向上させるとともに、前後ショックアブソーバーにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵したり、リアコイルスプリングとスタビライザーの見直しを行なって旋回中の車両安定性を向上させたりした。さらに、前後配分の可変制御を取り入れて4WDの最適な前後駆動力を実現する「新TRACKモード」を採用したほか、車内外の静粛性を向上するため、ECOモード使用時には排気バルブを閉じる機能を追加した。 25式後期では何が変わった? 2025年9月には、前期モデルをさらに一部改良した最新の「25式後期モデル」が登場。今回は同モデルにじっくり乗ってきた。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 これまでのさまざまな改良に加えて、25式後期モデルではスーパー耐久シリーズ参戦や独ニュルブルクリンクサーキットでの開発を通じて、「ボディ骨格」「吸気冷却性能」「サウンドづくり」を進化させたという。さらに、これまで抽選販売中心だった体制を見直すことで、多くのユーザーに提供することを決定した。 GRカローラ開発担当の橋本優氏によると、25式後期モデルの最も大きな変更点はボディ骨格の強化で、特に、ニュルブルクリンクを走った時に感じた厳しい3次元のGに耐えるため、構造用接着剤の使用領域をこれまでより13.9mも長い32.7mまで延長。これにより、限界領域の操縦安定性と街乗り領域の質感向上が両立できたとしている。 さらに、「接着剤の塗布は、実は“手塗り”なんです。ロボット化は検討中ですが、はみ出し禁止や太さの安定度など作業はかなり高難度で、現在は2直体制でそれぞれ1人ずつが担当しています(リリーフ役もいるそう)。それ専門の職人というわけではないのですが、多能工の中でもエース級の方が担当していて、元町工場で塗っています」という驚きの事実を教えてくれた。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」GRカローラ開発担当の橋本優氏 これ以外にも、エアクリーナー下側にある2次吸気口にフロントグリルから直接外気を導く「クールエアダクト」を追加して、長時間の全開走行時にエンジンルーム内の温度上昇を防ぎ、G16E-GTSエンジンの高出力を安定して維持できるよう努めた。 さらに、メーカーオプションである「JBLプレミアムサウンドシステム」にサブウーファーを追加し、ANC(アクティブノイズコントロール)のチューニングを最適化するとともに、ASC(アクティブサウンドコントロール)を追加して、加減速時や駆動力変化に応じてスポーツサウンドを車内に再現。アクセルオフ時には“バブリング音”を発生させ、街中でも「レーシングカーのようなサウンド体験」が安全に楽しめるようにしたという。 実際に走ってみると… 最初に乗ったのは、「GRカローラRZ スポーツパッケージ」。598万円の車両本体に68万8,600円のスポーツパッケージを装着した合計666万8,600円のクルマだ。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 「プレシャスブラックパール」のボディは全長4,410mm、全幅1,850mm、全高1,480mm、ホイールベース2,640mmで重量は1,510kg。搭載するG16E-GTSエンジンは排気量1,618Lの直列3気筒インタークーラーターボエンジンで、最高出力224kW(304PS)、最大トルク400Nmを発生する。GR DAT(8速AT)を介する四輪駆動だ。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 試乗したのは富士スピードウェイの構内路と外の一般道だけだったので、限界性能云々という話にはならないのだけれど、とにかく、普通の速度域で走っていても、ステアリング、アクセル、ブレーキを通してドライバーの意思を受け取り、それを実現する運動性能の高さと正確さが尋常ではないほど高いレベルにあることが伝わってくる。スポーツパッケージの赤いステッチ付きウルトラスエードシートやステアリングなど、身体に接触する部分の仕上げも快適で、大きなパドルの操作感も素敵だ。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 ダイヤルによる「NORMAL」「GRAVEL」「TRACK」(これだけはプッシュで選択)の4WD制御モード)と、トグルスイッチによる「ECO」「NORMAL」「SPORT」「CUSTOM」のドライブモード切り替えの組み合わせによって、走りとメーター表示だけでなく、ANCとASCがエンジン音やバブリング音を自在に変えてくれる(車内の音量に限る。VSCスイッチオンでエキスパートモードに入り音量は最大になる)ので、その日の気分や走行パターンに合わせて走り方を切り替えれば、より“アガる”のは間違いない。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」4WD制御モード切り替えのダイヤル トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」ドライブモード切り替えのトグルスイッチ さすがに路面が荒れた一般道を走ると、正確に路面を追従するその性格からちょっとだけ同乗者にはきつい思いをさせるかもしれないけれど、きっと、このクルマに一緒に乗ってくれる方ならば、そのあたりは納得済みのはず。一方で、ECOモードを選択するとリアのセンターマフラーからの排気がストップし、車外騒音レベルを大きく下げることができる。実際に聞いてみると違いは大きく、早朝の出発や深夜の帰宅時に、周囲にご迷惑をかけることを最小限に留めることもできるのだ。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」リアのセンターマフラー もう1台は「プレシャスメタル」の25式後期で、こちらは3ペダルの6MT仕様。GRはマニュアルじゃなきゃ、という方に向けて用意されたものだが、トヨタご自慢の「iMT」付きなのでエンストの心配もなく、気持ちよくシフトアップ&ダウンが行える。何よりいいのが、シフトダウン時に自動でプロ並みの“ブリッピング”を入れてくれること。それが気持ちよくて、ついつい不要なシフト操作をしてしまうほどだ。 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」トヨタご自慢の「iMT」付き 既販車向けアップグレードプログラムも展開 GRカローラをすでにお持ちの方(2023年発売モデルが対象)に対しては、ソフトウェアを含むアップグレードプログラムを提供予定だという。このサービスを受けるとエンジン最大トルクが370Nm→400Nmに、またGR-FOUR制御は前30:後70のREARモードから前後50:50のGRAVELに変更され、さらにTRACKモードは前後50:50固定から前60~30、後40~70の可変制御に変えることができる。 こうしたサービスを展開しているので、「いつ買ったらいい?」と悩む必要がない。さすがトヨタである。25式後期のGRカローラは5人が乗れて荷物も積める、普段使いも可能な最高のスポーツカーに仕上がっている。 【フォトギャラリー】トヨタ「25式GRカローラ後期モデル」 原アキラ 原アキラ はらあきら この著者の記事一覧はこちら トヨタが仕上げたピカピカの「S800」に遭遇! もしも買うならいくらくらい?トヨタ「A80スープラ」のレストア企画に重大な進展! 復活のインパネを実車確認5年後でも残価率85%の衝撃 - ランドクルーザーのリセールバリューが「最強クラス」な理由