走りの良さや優れた燃費、美しい外観や荷物をたくさん載せられる利便性など、クルマへのニーズは多様化しているが、欲張りすぎるとどれもが中途半端になってしまうことも。どっちつかずで短命に終わった悲運のクルマ、4台を振り返る。【画像ギャラリー】狙いは二兎、結果は空振り!?(11枚)文:井澤利昭/写真:ホンダ、CarsWp.comどっちつかずが響いた!? 一代限りで終了 「ホンダ CR-Z」FFライトウェイトスポーツの名車CR-Xを彷彿させるネーミングとスタイルで、2010年に誕生したCR-Z。新時代のハイブリッドスポーツとして、大きな話題を呼んだ 環境にも配慮した新時代のハイブリッドスポーツカーとして、2007年開催の第40回東京モーターショーでコンセプトモデルが展示。 その2年後となる2009年の第41回東京モーターショーでは市販を前提としたコンセプトモデルが披露され、翌年2010年の2月に販売が開始されたのが、ホンダ CR-Zだ。 全長約4mというコンパクトなクーペボディに、1.5リッター直4エンジンとホンダのハイブリッドシステム「Honda IMA」を搭載し、フロントタイヤを駆動するFFスタイルを採用。 ハイブリッドカーでは珍しい、シフトストロークが短い専用6MTを搭載したグレードも用意され、走りを強くアピールしたパッケージは、その名の通り往年の名車であるCR-Xを彷彿させるものだった。 発売当初は目標月間販売台数の10倍という1万台もの受注を達成し、その年の年末には日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど大きな話題を呼んだCR-Zではあるが、その後の販売は苦戦が続くことに……。 これは、スポーツカーとしてはやや見劣りする非力な1.5リッターエンジンやハイブリッド車の宿命である約1.2トンという車重の重さなど、基本性能の中途半端感がどうしてもついて回ったからにほかならない。 また、簡易的なハイブリッドシステムは、もういっぽうの売りであるはずのエコ=燃費の面でも、初期モデルのカタログ燃費で6MTで22.5km/L(CVTは25.0km/L)という、いまいちインパクトに欠ける数値にとどまり、ハイブリット車として見ても若干、中途半端な印象に。 2012年のマイナーチェンジではスポーツ性を重視した方向へと舵を切り、ハイブリッド車の要であるバッテリーをそれまでのニッケル水素から、ホンダ初のリチウムイオンを変更するとともに、V6 3リッター並みの加速を実現するPLUS SPORTシステムも追加されたものの、スポーツカーの走りを期待するユーザー層にはイマイチ刺さることはなかった。 このマイナーチェンジとほぼ同じタイミングで登場したトヨタ 86などの人気の影響もあってか低迷する販売が上向くことはなく、2017年1月、CR-Zは後継モデルが登場することもなく一代限りで販売が終了することとなった。高級セダンは大きいという常識を覆せなかった 「トヨタ プログレ」5ナンバーサイズのボディにセルシオ並みの品質をパッケージした「小さな高級車」プログレ。保守的なデザインのエクステリアやインテリアには賛否両論があった いまやSUVやミニバンが台頭する国内のクルマ市場だが、かつては乗用車の代名詞として、高級車から大衆モデルまで数多くの車種を街中で見ることができた4ドアセダン。 そんな転換期の真っ只中であった1998年、「小さな高級車」というキャッチコピーを掲げて市場に投入されたのが5ナンバーサイズの4ドアセダンがトヨタのプログレだ。 そのコンセプト通り、車体サイズは全長4500mm、全幅1700mmとコンパクトながら、ホイールベースは当時のクラウンに匹敵する2780mmとし、長さ1950mm、幅1465mm、高さ1165mmという、広々とした室内空間を実現していた。 また、高級車を謳うだけあって、その仕上がりや装備はかなり力が入っており、すべてのグレードで5層コートのボディ塗装が施されていたほか、本革シートや高機能オーディオ、レーダークルーズコントロール、ナビとの連動で運転を支援するNAVI・AI-SHIFTシステム、カーテンエアバッグなどなど、高い質感や最新のテクノロジー、安全装備といった、すべての面での最上級の装備がてんこ盛りにされていた。 さらにオプション設定である「ウォールナットパッケージ」では、通常は木目調となるインストルメントバネルやドアトリム、センタークラスターなどに加え、ハンドル、シフトレバー、ウインカーレバー、ワイパーレバーなどにも本木目を採用。その品質の高さはクラウン以上のセルシオ品質とまで評されるほどだった。 こうした品質の高さに加え、直列6気筒自然吸気のエンジンとFRレイアウトという組み合わせが生む素直で落ち着きのあるハンドリング、コンパクトな車体ならではの取り回しの良さもあって、プログレはシニア層を中心に一定の支持を得ることに。 いっぽうで、4ドアセダンの人気低迷の影響や、高級感を追求したがためにコストがかかり、当時のクラウン以上となってしまった価格に割高感があったためか売り上げは低迷。保守的なエクステリアは高級感こそあったものの地味という声もあり、登場からほぼ10年が経過した2007年に販売を終了することに。「高級セダン=大きい」というこれまでのイメージを覆すまでには至らなかった。セダン並みの車高と室内空間は両立せず!? 「ホンダ ジェイド」全高1530mmというセダン並みに低いボディフォルムがスタイリッシュなホンダ ジェイド。メインターゲットである中国市場に先行して投入され、2015年から国内販売がスタートした 中国市場を中心としたグローバルモデルとして2013年に誕生し、2015年から国内での販売をスタートしたのがホンダ ジェイドだ。 ストリームとオデッセイを統合する位置付けとされたジェイドは、全高をセダンに迫る1530mmに抑えることで実現したスタイリッシュな外観と、立体駐車場も利用できる使いやすさを両立。 さらに低床化と6人乗り3列シートを採用した居住性の高さを狙うとともに、ワイドかつ低重心な安定性の高いボディと動力性能に優れる1.5リッターの直噴ターボまたは直噴ハイブリッドというパワートレインとの組み合わせで、ファミリー層から走りを重視するユーザーまで狙った作りとなっていた。 ところがこうしたコンセプトがユーザーの目には「ミニバンとしては中途半端」と写ってしまってせいか、販売の方は低迷。 補助席的な扱いの3列目シートは足元も狭く窮屈で実用性に欠けるうえ、2列目のシートも1列目と比べて座面の奥行きが短く居住性や快適性に乏しいのがその主な原因で、ラゲッジスペースも積める荷物の大きさに限界があり、ファミリーユースとしては、ライバルと比べて使いづらい印象を与えてしまった。 2018年に行われたマイナーチェンジでは、そうした点を考慮してかスポーティなガソリンモデルである「RS」に2列シートの5人乗りを新たに追加。 安全装備である「Honda SENSING」を全グレードで標準装備とするなどのテコ入れも行われたが、1.5リッタークラスのミニバンとしてはやや高額なこともあってかその後も売り上げが上向くことはなかった。 その2年後の2020年をもって姿を消すこととなったジェイド。5年間での販売台数は3万台に及ばないものだった。貿易摩擦解消という大任を背負わされた不運なクルマ 「トヨタ キャバリエ」GM製のシボレー キャバリエを輸入するカタチでのOEM供給を受け、右ハンドル化やウインカーレバーの移設など日本仕様へと変更。“トヨタのクルマ”として展開されるも、販売はふるわなかった 自動車をはじめとするさまざまな品目で、日米間の貿易摩擦が問題となっていた90年代。その緩和を図るという大きな使命を背負い、1996年に日本市場へと投入されたのがトヨタのキャバリエだ。 前年に登場したシボレー キャバリエをGMから輸入するカタチでトヨタへとOEM供給し、日本国内向けに右ハンドル化やウインカーレバーの右側への移設などの仕様変更を実施。4ドアセダンと2ドアクーペという2つのボディスタイルが用意されていた。 4ドアセダンで全長4595mm×全幅1735mm×全高1395mm、2ドアクーペは全長4600mm×全幅1740mm×全高1355mmと、アメ車にしては比較的コンパクトなサイズで、ある意味日本の道路事情には適していたとも言える。 さらに150万円を切るグレードも設定された割安感のある価格に、トヨタならではの安心のサービス体制、加えてアメ車といえばこの人と言える人気タレント、所ジョージをCMキャラクターとして起用するなど、その販売にはあらゆる面で万全の体制で揃っていたものの、セールスの方はなぜかさっぱり……。 年間2万台とされた販売目標の半分も達成することができず、予定していた販売期間である5年間を前倒しするカタチで、2000年をもって国内での展開を終了することに。 その理由はさまざま考えられるが、アメ車のなかでも廉価モデルという位置付けであったキャバリエの品質が、ライバルとなる日本車と比べるとどうしても一段落ちる印象が否めなかった点。 また、車格が小さく保守的な作りのキャバリエは、日本人が持つ、大きく、個性的で存在感のあるアメ車のイメージとはほど遠く、目の肥えた日本のユーザーには刺さらなかった点も大きい。 日本車ほどの品質の高さもなくアメ車しての魅力にも欠けるという中途半端な存在であったことも人気がなさにつながってしまったというわけだ。 クルマに対するニーズは、時代背景や市場の動向、技術的な面など、さまざまな要素に大きく左右されるもの。 今回紹介した4つの車種は、そのコンセプトがユーザーに理解されず、どっちつかずの中途半端なモデルとして不遇な扱いを受けたのは事実だが、すべてが悪いかったり劣っていたわけではない。 同様のコンセプトを受け継いだクルマが再び現れ、時代にマッチする日が、もしかしたらある……かもしれない。