
高性能(そしてもちろん高価)なクルマを世に送り出し続けるブガッティ。常に生産数はごく少数で、価格も含めておいそれと乗れるシロモノではない。今回はW16気筒エンジンを搭載する最後のブガッティとなるW16ミストラルに試乗!!
※本稿は2025年9月のものです
文:木村好宏、TG(キムラ・オフィス)/写真:ブガッティ ほか
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
【画像ギャラリー】価格は日本円でおよそ8億円!! 最後のW16気筒エンジンを搭載するブガッティ W16ミストラル(16枚)
ブガッティ W16ミストラル海外試乗

ミストラルの最高出力は1600psで、0-100km/hの加速所要時間は2.3秒、最高速度は454km/hと発表されている
ブガッティは1909年にフランスで誕生した自動車メーカーだが、紆余曲折の末、2000年からVWグループの傘下に入り、2005年世界初公開された1001psの「ヴェイロン」を皮切りにハイエンドスポーツカーを生産している。
驚くべきはその価格で当時1億6300万円。ヴェイロンは日本ではわずか3台が販売されたに過ぎない。
それでも世界には金持ちがいるもので、これまでおよそ1000台が販売されている。
その20年間のモデルラインナップはヴェイロンから始まって、「シロン」へと進化してきたが、最後のW16気筒エンジン搭載モデルとして発表されたのが「ミストラル」。搭載する8LのW16ターボは1600ps/162.8kgmを発揮。なお、99台が生産予定だが、すでに完売している。
高級レザーとアルミニウムそしてカーボンで仕上げられたキャビンに入ると、500km/hまで刻まれたスピードメーターを中央に配置したコックピットや操作系はシロンを思わせる。
ブガッティの象徴である像が組み込まれた芸術品のようなクリスタル・セレクトレバーをDレンジにセットしてスタート。
助手席にはブガッティのテストドライバーでル・マン優勝経験のあるアンディ・ウォレスが同乗しており、緊張の一瞬だったが、実はほかのブガッティがそうであるようにミストラルの走りは呆気ないほどスムース。まるでVW ゴルフに乗っているかのようだ(さすがVWグループのクルマ!?)。

リアエンドのデザインはブガッティのロゴを中心に、ボディ左右に横V字のリアライトがレイアウトされている
オートルートでスロットルペダルを踏みこむと強烈な加速を始めるが、それはパワフルな電気自動車での「背中を蹴とばされる」ような唐突なものではない。
強いていえばドライバーとクルマがひとつの空間として瞬間移動するような感覚である。故にブガッティのようなハイパースポーツカーで公道を走る場合は、常にほかの交通を注視しなければならない。
追い越し車線などに出てくる相手は、こちらが一体どんな速度で近づいてくるのか読めないので、衝突の危険性が大いにあるのだ。
もちろん、ブレーキは身体全体が強烈なGで押しつぶされるほどの制動力を持っているので安心だが、注意するに越したことはない。
一方、最高速度450km/hのスポーツカーは一般道路で法定速度内での走行では充分に快適な乗り心地を見せてくれる。
また市街地での取り回しは、太く大きく傾斜しているAピラーのために斜め前方の視界が気になったが、周囲のクルマが恐れ多くて近づいてこないという利点に助けられた。
何しろこのミストラルのベースモデルの価格はドイツで500万ユーロ(約8億5800万円 ※税抜き)もするのだ。
ちなみに、ブガッティの次期モデルはV16と電気モーターを組み合わせた1800psのPHEVで、2026年に登場が予定されている。
●ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様) 主要諸元
・全長×全幅×全高:4694×2034×1209mm
・ホイールベース:2711mm
・車両重量(DINドライ):2040kg
・エンジン形式:W16クワッドターボ
・総排気量:7993cc
・最高出力:1600ps/7050rpm
・最大トルク:162.8kgm/2250〜7000rpm
・トランスミッション:7速DCT
・タイヤサイズ(前・後):285/30R20・355/25R21
Source: 1600馬力のW16エンジン搭載!! 約8.6億円もする最高速450km/hの「ブガッティ ミストラル」はどんなクルマ?