フェラーリ創立50周年記念で登場した「F50」は、正真正銘の「公道を走るF1」だった【スーパーカークロニクル・完全版/033】
伝説として始まり、革新へと至ったスーパーカーたち。1970年代の懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまで紹介していこう。今回は、フェラーリ F50だ。

フェラーリ F50(FERRARI F50:1995〜1997)

F40よりはるかに大きなリアウイングがそそり立つF50のスタイリングは、空力性能に特化した結果だ。
F40の登場から8年後の1995年、フェラーリの創立50周年を記念して世に送り出されたスーパースポーツカーが「F50」だ。ちなみにF40は、フェラーリと名のついたクルマが世に出てから40周年を記念したモデルだったので、発表は1987年だった。
F50は車名からも推察できるようにF40の後継にあたるモデルだが、「フェラーリの本領は過給にあらず」と、パワーユニットには自然吸気のV12エンジンを縦置きミッドシップ搭載する。過給器を装着しないぶんは排気量を4.7Lにアップし、5バルブDOHCのシリンダーヘッドを組んで、最高出力は520ps、最大トルクは48.0kgmというパワースペックを得ている。
興味深いのは、フェラーリではF50をロードカーというよりはF1マシンに近い、まさに「公道を走るF1」と位置づけたことだ。これはF40のプロデュースを最後に鬼籍に入った総帥エンツォ・フェラーリの息子、ピエルルイジ・フェラーリのアイディアが基になったといわれている。

65度V12 DOHCの後端にデフとトランスミッションが搭載される。ギアボックスはメインマフラーに挟まれている。
その結果、すでに20世紀末ではスーパーカーといえども装着されるのが当たり前になりつつあった、ステアリングのパワーアシストやブレーキのサーボアシスト、そしてABSなどはドライバーの正確な制御を阻害するからという理由で装着されることはなかった。
モノコックのシャシはカーボンコンポジット材で製作され、エンジンそのものにシャシのストレスメンバーとしての機能を持たせるため、カーボンファイバー製のパッセンジャーセルの後部にエンジンを直接ボルトで留めている。そこにサスペンションアームを取り付けるなど、構造は当時のF1マシンそのものだった。
レーシングカーのように無骨だったF40に比べると、はるかに洗練されたF50のスタイリングはピニンファリーナの作。バルケッタのスタイルは、「ミトス」の影響も受けている。

計器パネルはコンベンショナルなメーターではなく、マルチカラーで表示されるディスプレイパネルを採用した。
●全長×全幅×全高:4480×1986×1120mm
●ホイールベース:2580mm
●車両重量:1230kg
●エンジン種類:65度V12 DOHC
●総排気量:4698cc
●最高出力:520ps/8500rpm
●最大トルク:48.0kgm/6500rpm
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・105L
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前245/35ZR18、後335/30ZR18