日産 エクストレイルはマイナーチェンジで価格に見合うようになった? 専門家の本音評価を徹底解説
販売が伸び悩む日産 エクストレイルが、巻き返しを図るマイナーチェンジを実施しました。価格の高さが課題とされていましたが、今回の変更で価格に見合う満足度の高い車となりました。 内外装の質感をさらに高め、日産として初採用となる「Google搭載ナビ」や、死角を大幅に減らす最新のカメラ技術を搭載するなど、利便性と安全性が大きく進化しています。 価格は大きく変わりませんが、どのようにして満足度を高めたのか、装備の変更点などをカーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが徹底解説します。
日産 エクストレイル 2025年マイナーチェンジモデル
エクストレイルがテコ入れに踏み切った理由
2022年に登場し、その上質な走りから専門家の評価も高い日産 エクストレイル。しかし、販売台数を見ると、ライバルのトヨタ ハリアーに水をあけられている状況が続いています(2024年1〜8月の登録台数は月平均で1690台。一方、ハリアーは同期間で月平均4750台となっています)。
その理由の一つとして、e-POWERと呼ばれるハイブリッド専用車であることによる価格設定が挙げられます。
ノーマルガソリンエンジンを用意せず、最も安価な「S」の2WD(2輪駆動)モデルでも384万3400円からと、先代に比べて価格帯が大幅に上昇しました。
販売店からも「現行エクストレイルは走行性能が素晴らしく、輸入車から乗り替えるお客様もいらっしゃいます。その一方で、先代のノーマルエンジン車にお乗りだったお客様からは、価格の上昇をご指摘いただくこともあります」といった声が聞かれます。
こうした状況を受け、今回のマイナーチェンジでは、安価なモデルが追加されたわけではありませんが、高級感と機能性を向上させることで、価格に見合った満足度の高いクルマへと進化しました。
高級感・利便性がさらにアップ! 外観・内装の変更点
マイナーチェンジ前のエクストレイルのフロントグリル,マイナーチェンジ後のエクストレイルのフロントグリル
マイナーチェンジ前のエクストレイルのフロントグリル,マイナーチェンジ後のエクストレイルのフロントグリル
まず外観では、フロントグリルのデザインが洗練された横桟調の精密なパターンに変更され、昼間でも常時点灯するシグネチャーLEDランプも採用されています。
マイナーチェンジ前のエクストレイルのアルミホイール,マイナーチェンジ後のエクストレイルのアルミホイール
マイナーチェンジ前のエクストレイルのアルミホイール,マイナーチェンジ後のエクストレイルのアルミホイール
アルミホイールのデザインも刷新され、より洗練された印象になりました。
マイナーチェンジ前のエクストレイルのインパネ,マイナーチェンジ後のエクストレイルのインパネ
マイナーチェンジ前のエクストレイルのインパネ,マイナーチェンジ後のエクストレイルのインパネ
内装に目を向けると、インパネの上部がブラックで統一され、上級グレード「G」にオプション設定されるナッパレザーシートは、落ち着いたブラウンへと変更。標準グレードのシートにも、日本のモダンさを感じさせる上質なクロスが採用されています。
マイナーチェンジ前のエクストレイルの前席,マイナーチェンジ後のエクストレイルの前席
マイナーチェンジ前のエクストレイルの前席,マイナーチェンジ後のエクストレイルの前席
また、USB電源ポートは、現在主流のタイプCに更新され、利便性も高められました。
日産初! “Google搭載ナビ”と“透けるカメラ”を標準装備
今回のマイナーチェンジでは、機能装備面も大きく進化しています。
まるでスマホ感覚!便利な「Google搭載ナビ」
Google搭載のインフォテイメントシステム
大きなトピックは、日産の車種として初めてGoogleを搭載したインフォテイメントシステムが採用されたことです。
これにより、「Google マップ」をナビゲーションとして利用できるほか、音声アシスタントによる目的地の検索や各種装備の操作が可能になります。
さらに、普段お使いのアプリをダウンロードできる「Google Play ストア」も利用可能。もちろん、ワイヤレスのApple CarPlayやAndroid Autoにも対応しているので、スマートフォンの機能をよりシリムレスに活用できます。
死角を減らす”3Dビュー”と“透けるカメラ”を搭載
安全装備の進化も見逃せません。最新の「インテリジェント アラウンドビューモニター」は、以下の機能で死角を徹底的に減らします。
3Dビュー機能
3Dビュー
クルマの周囲360度を、立体的な映像で確認できます。発進時の障害物確認などを力強くサポートします。
インビジブルフードビュー機能
インビジブルフードビュー機能
運転席からは死角になる前方の路面を、まるでボンネットが透けているかのように表示。狭い道でのすれ違いや駐車で、うっかりボディを擦る不安を大きく軽減してくれます。
これらの進化は、運転が苦手な方や大きなクルマに不慣れな方にとって、非常に心強い味方となるでしょう。
マイナーチェンジでグレードの選択肢も豊富に
今回のマイナーチェンジでは、標準モデルに加えて個性豊かな3つのモデルが用意され、選択肢が大きく広がりました。
本格的な走りを楽しむスポーツ仕様「NISMO」
エクストレイル NISMO
NISMO(ニスモ)は日産のレース技術を投入した、本格的なスポーツモデル。専用のサスペンションやタイヤ、空力性能を追求したエアロパーツを装備し、SUVとは思えないシャープな走りを楽しめます。「SUVでも走りは妥協したくない」という運転好きのための、特別な一台です。
上質さとスポーティさを両立したプレミアム仕様「オーテック/オーテックスポーツスペック」
エクストレイル オーテックスポーツスペック
高級感とスポーティさを高い次元で両立させた、プレミアム志向のモデルです。オーテックには、上質さを追求した標準仕様と、乗り味をより爽快に仕立てた「オーテックスポーツスペック」の2種類が設定されています。
内外装に専用のブルーアクセントや上質なレザーシートなどを採用し、洗練された大人の雰囲気が演出されています。
アウトドアが似合うタフなデザイン「ロッククリーク」
エクストレイル ロッククリーク
ロッククリークはエクストレイルが持つ「タフギア」としての魅力をさらに高めたモデル。専用のグリルやバンパー、防水シートなどを装備し、ワイルドなスタイルを強調しています。「キャンプなどのアウトドアシーンで気兼ねなく使いたい」という方にぴったりの仕様です。
専門家による採点と評価まとめ
専門家としてエクストレイルを採点し、長所と短所をまとめました。
モーター駆動による走行性能はライバルを圧倒する一方、スポーティな味付けやボディサイズから、運転のしやすさや乗り心地は乗り手を選ぶ側面もあります。購入を検討する際の参考にしてください。
エクストレイルの良い点
・SUVながら良く曲がり、峠道などでスポーティな走りを味わえる
・アクセル操作に対するモーターの反応が機敏で力強く運転しやすい
・オーテックスポーツスペックやロッククリークなどの選択肢も充実
エクストレイルの気になる点
・スポーティなグレードを中心に、路面の状態によっては乗り心地に硬さを感じることがある
・3列シート仕様はXグレードやロッククリーク、オーテックなど一部に限られ、多人数乗車時は窮屈になる
・NISMOなどは価格が500万円を軽く超えて割高感が生じる
まとめ:価格以上の価値は生まれたか? 進化したエクストレイルは「買い」なのか
今回のマイナーチェンジで、日産エクストレイルは内外装の質感向上、Google搭載ナビによる利便性、そして最新の安全装備を手に入れ、総合力を大きく高めました。
「価格の高さ」という課題は残るものの、それを補って余りあるほどの付加価値が生まれたと言えるでしょう。
専門家の評価でも明らかなように、モーター駆動ならではの卓越した走行性能は、ライバルにはない唯一無二の魅力です。今回の進化で、特に「質の高い走りと最新機能を求めるユーザー」や「輸入SUVからの乗り換えを検討している層」にとっては、非常に満足度の高い選択肢となったはずです。
燃費やコストパフォーマンスを最優先するなら他の選択肢もありますが、エクストレイルが提供する上質な走りと先進性は、価格だけでは測れない価値があります。
購入を迷っている方は、ぜひ一度試乗して、その進化を肌で感じてみることをおすすめします。
【筆者:渡辺 陽一郎 画像提供:日産自動車】