ヤマハV4エンジン搭載の新バイク、デビュー戦は”長く厳しい”スプリントに。最適化に向けて課題残る
ヤマハが新開発したV4エンジンを搭載するMotoGPバイクが初めて参戦したレースは、期待を下回る結果に終わった。ワイルドカード参戦で新バイクに跨ったテストライダーのアウグスト・フェルナンデスは、18位となったサンマリノGPのスプリントは「長く」「厳しい」レースだったと語った。
フェルナンデスは、金曜日のプラクティスでファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)から0.6秒差のラップタイムを記録。V4エンジンのプロジェクトは期待に満ちたスタートを切った。しかし土曜日のスプリントレースは全く別の展開となった。
22番グリッドからスプリントをスタートしたフェルナンデスは、最終的にトップから28秒遅れの18位でフィニッシュ。上回ったのはLCRホンダのソムキアット・チャントラだけだった。
ヤマハのベンチマークであるクアルタラロが4番手走行中に早々にクラッシュしてしまったため、現行マシンとの正確なペース差を把握するのは困難だったが、フェルナンデスは17位だったアレックス・リンス(ヤマハ)から9秒遅れ、ヤマハ陣営トップの14位だったプラマックのジャック・ミラーからは11秒遅れでのフィニッシュだった。
フェルナンデスは、新型バイクのわずかな変更が挙動を「競争力がある」状態から「完全にダメ」な状態へと揺れ動かしたと説明し、マシンの最適性能域を見つける難しさを強調した。
現行の直4エンジンとV4エンジン、どちらのバイクが乗りやすいかと問われると、フェルナンデスは「インライン(直列)だ。今のV4は調子が良い時もあれば悪い時もある。今日みたいにね」と答えた。
「バイクのバランスを見つける必要がある。ほんの少し変更を加えようとしただけで完全に狂ってしまうんだ。一見調子が良さそうに見えても、また別の変更を加えると再び狂ってしまう。そうするとタイムが全く出ないんだ」
「まだ僕たちには分からないところがあるから、作業を続けなければならない。結局のところ、これは完全に新しいバイクで、可能性は極めてオープンなんだ」
「インラインの標準バイクから得られた数値は(V4バイクで)完全に機能しないわけではないけど、今の僕たちのバイクには正しくない。僕たちは柔軟な姿勢で他の数値を探る必要がある」
「今日は試行錯誤の日だった。正直、試したことは良かった。昨日の午後のデータを、このサーキットと明日のベースとした」
「僕たちは完璧だったわけではないから、何かを見つけたいと思う。良いラップタイムは出せたし、そのラップでは感触も良かった。今日は昨日より遅かったので、何か見つけなければならない」

Augusto Fernandez, Yamaha Factory Racing
ヤマハはこれまで、V4エンジン仕様のバイクで数多くのテストを実施。レースデビューの準備が整ったと判断した。しかし単独走行が基本となるプライベートテストの性質上、ヤマハは集団走行時のマシン性能に関するデータを持っていなかった。
フェルナンデスは、集団後方で他のライダーに追従するのに苦労したことを認めると同時に、チャタリング(振動)によるタイムロスも発生した。この問題はクアルタラロの転倒を引き起こした原因でもある。
「このエンジンを搭載したバイクでの問題は、接近したり誰かと争ったりしている時、同じ速度でそこに到達して適切な乱気流を受けるのが難しいということだ。スピードが噛み合わなくて、良くない形で乱気流を受けてしまう。レース中にそれを実感した」とフェルナンデスは説明した。
「今は引き続き作業を続ける必要があると思う。明日何か見つけられればと願っている。今日は厳しいスプリント、長いスプリントだった。振動も発生したからね」
「さらに標準仕様のバイクにも振動が発生した。これはシャシーでもエンジンでもない、僕たち全員が直面している別の問題だ。今回のレースでは振動が非常に大きかった。こんな振動を経験したのは今回が初めてだ」
V4仕様のバイクは本質的に全く新しいバイクとなっており、エンジンの変更に伴いシャシーと空力設計も全面的な見直しを余儀なくされた。そのため、フェルナンデスのミサノでの任務はV4エンジンの評価に留まらず、新しいエアロパーツを搭載したマシンの挙動検証も含まれる。
新しいバイクの空力性能について問われると、フェルナンデスは次のように答えた。
「ああ、まったく別物だ。バイクの開発過程で2種類のフェアリングを試した。僕たちが今使っているモノより、大きな差ではないけど少し優れていた」
「だけど、新しいバイクは車幅が狭く、すべてが異なるからさらなる開発が必要だ。開発チームも取り組んでおり、今後のワイルドカード参戦に向けてエアロの改良を重ねていく予定だ」
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