
2025年2月17日に発売されたアウディの新型「A5」および「S5」シリーズ(写真:アウディ ジャパン)
アウディ ジャパンが日本向け新型車「A5」および「S5」シリーズを2025年2月に発売。新型のA5/S5シリーズは、プレミアムサイズのセダンとステーションワゴンで構成される。
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このところ、BEVにシフトしていた感のあるアウディ ジャパンだが、一転して多様なエンジンラインナップを取り揃えて市場に攻勢をかける様子がうかがえる。その尖兵となる新型A5/S5から勝機を占ってみよう。
新型A5/S5シリーズのラインナップ

セダンのS5とステーションワゴンのA5アバント(写真:アウディ ジャパン)
新型A5/S5シリーズの特徴のひとつがラインナップの整理統合だ。今回の新型投入で従来の「A4」と「A5スポーツバック」を統合し、セダンの「A5」とステーションワゴンの「A5アバント」とシンプルにまとめる。さらに高性能バージョンとして「S5」シリーズをセダンとステーションワゴンに設定している。
先代より約70mmホイールベースが延長された新型。セダンは、すっと流麗なルーフラインを持つノッチバックタイプだが、じつはハッチゲートとなっているファストバックスタイルを採用する。長い間、アウディの人気車種でありつづけたアバントは、SUVとは一線を画すエレガントさとスポーティさを併せ持ったボディデザインが魅力的にみえる。
SUVが支配的という市場のトレンドは今も続いているが、今回のアウディに乗ってみると、乗り心地のしなやかさとか、気持ちのよい操縦性とか、セダンやステーションワゴンの魅力を改めて印象づけられた。

A5/A5アバントに搭載されている直列4気筒エンジン(写真:アウディ ジャパン)

S5/S5アバントに搭載されているV型6気筒エンジン(写真:アウディ ジャパン)
新型A5/A5アバントは、パワートレインのラインナップも豊富だ。110kW(150PS)と150kW(204PS)を発揮する2種類の2L直列4気筒ガソリンエンジン(110kW版は前輪駆動)をはじめ、150kW(204PS)の2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンが用意される。S5/S5アバントは270kW(367PS)とパワフルな3L V型6気筒ガソリンターボエンジンを搭載する。
2Lガソリンエンジンには可変ジオメトリーターボチャージャーが備わり、広い回転域でトルクを出す。ディーゼルとV型6気筒は、可変ジオメトリーターボに加え、48Vマイルドハイブリッドシステム(アウディでは「MHEVプラス」と命名)が加えられ、さらなるパワーと燃費を追求している。
高性能モデルのS5アバントに試乗

試乗車として用意されたS5アバント(筆者撮影)
私が乗ったのは、もっともパワフルなS5アバント。先述のとおり270kw(367ps)の最高出力と550Nmの最大トルクを発生する2994ccV型6気筒エンジンに、7段デュアルクラッチ式変速機を組み合わせ、4輪を駆動する。
4輪駆動システムは、アウディの代名詞になった「クワトロ」。進化したところは、昨今の燃費規制を念頭に、高速道路など低負荷走行時は変速機と後輪が切り離されるクラッチAWD式となっている点だ。
技術面で特筆すべきことが多々あるのは、従来のアウディ車と共通しているといえる。ドライブフィールを表現するのは、数多の技術進化に比べれば簡単かもしれない。一言でいうと、S5アバントの走りは痛快なのだ。

S5アバントのリアビュー(筆者撮影)
ハイブリッドシステムによってモーターがトルクを上乗せするので、発進時はクルマの重さを感じさせない。加速中にエンジン回転が上がっていくと、ターボチャージャーがまわり出す。可変ジオメトリーで、エンジン回転に応じて容積が変化するので、低回転域から高回転域まで対応可能で、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、S5アバントは即加速する。
パワフルなエンジンと、エンジンパワーをしっかり引き出してくれる変速機。加えて、ステアリングとサスペンションシステムの設定が、S5アバントのスポーティな走りを支えている。
スポーツの“S”を冠する走り

S5アバントの走行シーン(写真:アウディ ジャパン)
反応が速いステアリングと、車体のロールを抑える足まわりが、力のあるエンジンとよく合っている。おかげで操縦感覚は、全長が4835mmあるステーションワゴンとは思えないぐらいキビキビとしていて、スポーツワゴンを得意としてきたアウディの伝統は生きている、と嬉しくなるほどだった。
スポーツ(Sport)の頭文字を車名に使ったS5だけに、インテリアもドライビングを楽しませてくれるデザインとなる。トップとボトムの部分が直線的な独特な形状の小径ステアリングホイールと、体を包みこむようなアウディSモデル専用のスポーツシートは、見た目の特別感と、実際の機能を両立させている。

S5アバントのスポーツシート(筆者撮影)
高速道路の巡航時は、姿勢はフラットで、路面の凹凸はサスペンションシステムがよく吸収してくれて、いたって快適。電子制御ダンパーの働きで、カーブではスポーティなハンドリングが得られる一方、プレミアムサイズのクルマにふさわしい乗り心地のよさが堪能できた。静粛性も高い。
アウディにおける作りの質感は、1994年の初代A4やA8あたりから目に見えて向上し、ボディパネルの隙間なども“こんなに狭くてドアが閉まるのか”とか“工場でこの組み付け精度を維持できるのか”など、競合を驚かせるほどだった。それを当時は”アウディ・クオリティ”などと呼んだのを私は鮮烈に記憶している。
質感の高いインテリア

S5アバントのインテリア(筆者撮影)
相変わらず室内の作りも、当時を彷彿させるものだ。質感がもっとも誤魔化しにくいとされる黒色の合成樹脂へのこだわりも健在。ドイツ人はとくに、黒色を質感の高さと結びつけているという。黒色内装は彼方の価値観とも関係あるのだろう。
加えて、新型のA5とS5は、デジタライゼーションも進めている。11.9インチの「バーチャルコクピットプラス」と14.5インチの「MMIタッチディスプレイ」、さらに助手席用に10.9インチの「MMIパセンジャーディスプレイ」(オプション)がダッシュボードにはめ込まれ、通信を使って、さまざまなアプリケーションを使うことができる。

S5アバントの後席(筆者撮影)
日本ではあいにく会話型のボイスコントロールがオンラインでつながっていないのだけれど、少なくとも、車載の機能を使うのに、聞き取り能力は高く、たとえばエアコンの温度設定やオーディオ操作などはストレスなく操作できた。
もうひとつ、ユニークな特徴は「アンビエントライティングプロ」と「ダイナミックターンインジケーター」という機能がオプションで選択できること。1ユニットあたり364個のLEDを組み合わせたランプのパターンや、室内の照明の色などをモニター画面で選べる。
なかでもリアコンビネーションランプに組み込まれた「ダイナミックインタラクションライト」は、緊急停車時にはLEDが緊急表示板を即座に連想させる三角形を作るなど、外部とのコミュニケーションに活用できる、これはこの先、ピクトグラムや文字が表示できるようになるだろうから、さらなる発展が期待できる技術だ。
この性能にしては良好な燃費性能

S5アバントのラゲージスペース(筆者撮影)
燃費はリッターあたり13.4km(WLTCモード値)なので、この性能ぶりからすると、アウディはかなり頑張ったといえる。S5アバントの価格は1060万円と安くないが、A5のベーシックモデル(110kW)が599万円から、その上のクワトロを備えた150kWのA5が681万円からと、S5とはちょっと離れたモデルとはいえ、魅力的な価格設定。ディーゼルのTDIは現時点で価格未発表だ。
■新型A5/S5シリーズ・グレード構成/価格
A5 TFSI 110kW 599万円
A5 TFSI quattro 150kW 681万円
A5 TDI quattro 150kW(ディーゼル) 後日発売
S5 1035万円
A5 Avant TFSI 110kW 624万円
A5 Avant TFSI quattro 150kW 706万円
A5 Avant TDI 150kW(ディーゼル) 後日発売
S5 Avant 1060万円
Source: アウディ新型「A5/S5」ベストセラーらしい安心感