噂の新型モデル、フェラーリ296スペチアーレがついに登場! デリバリーは2026年春 価格は約6500万円
噂の新型モデル、フェラーリ296スペチアーレがついに登場! デリバリーは2026年春 価格は約6500万円
噂のフェラーリの新型モデルがついに発表。296GTB&GTSのスペシャル・モデル、296スペチアーレ&スペチアーレAが登場。イタリアのマラネロで行われた先行内覧会からエンジン編集部シオザワがリポートする。【写真47点】噂の新型モデル、フェラーリ296スペチアーレがついに登場! デリバリーは2026年春 価格は約6500万円の詳細画像をチェック
事前内覧会
4月29日、フェラーリが新型モデル、296スペチアーレを発表した。430や458、488といったミドシップのベルリネッタのこれまでがそうだったように、296GTBにスペシャルなモデルが登場することは多くのフェラーリ・ウォッチャーが予想していた。
登場したこと自体は予想どおりだが、どんなスペシャル・モデルになっているのかが問題だった。
2021年の登場以来、翌2022年にスパイダーの296GTSがデビューし、その後はレース用ホモロゲ・モデルの296GT3、そして2024年にはワンメイク・レース用の296チャレンジへと続いた。この流れからすれば、レース・イメージを色濃く打ち出したスペシャルになるのではという予想もあった。事実私も、どんなに迫力のある296になっているのだろうとワクワクしていたくらいだ。
それがどうだ。正式発表に先立ってイタリアのフェラーリの本拠地、マラネロで行われたジャーナリスト向けの内覧会でアンベールされた296スペチアーレには、攻撃的なフロント・スポイラーもなければ、巨大なリア・ウイングもなかった。がっかりした? いや、その逆だ。驚きのあまり、しばらく呆然と見つめざるを得なかった。なぜなら、目の前にある296スペチアーレがあまりに美しく、エレガントだったからだ。
ホワイトのレーシングストライプとゼッケンがあしらわれた見た目はレースをイメージさせるが、ヴェルデ・ニュルブルクリンクと呼ばれる鮮やかなグリーンのボディ・カラーを纏った姿に似合うのはワインディングロードだと思った。
想像は同時に発表されたスパイダーの296スペチアーレAを見て確信に変わった。ルーフが開けられたスペチアーレAはクーペよりもさらにスタイリッシュでかっこいい。このスポーツカーが似合うのはどう考えても公道だろう。
しかし本当に驚いたのは、この後だ。プレスカンファレンスで次々に語られた296スペチアーレに注ぎ込まれた最新技術と秘められた能力を知って愕然とした。レースをイメージするような派手なフロント・スポイラーもリア・ウイングもないと書いたが、296スペチアーレに用いられたテクノロジーはそのほとんどすべてがレースからのフィードバックだという。
たとえばパワートレインで言えば、エンジン・ブロックとクランクケースはル・マン24時間レースで優勝した499Pのエンジンと同じ手法で余分な部分を切削し、シリンダーブロックとシリンダーヘッドのネジやスタッドボルトをチタン製にして軽量化するというレース用エンジンの手法を使っているが、公道モデルに採用したのはフェラーリ史上初だという。
さらにレース・テクノロジーを多く採用したF80からも強化されたピストンやチタン製コネクティングロッドなどを採用して、エンジンは296GTBより約9kg軽量化されている。
またエンジン制御のプログラムは296チャレンジのパワートレインのノウハウを取り入れ、ターボチャージャーも変更して過給圧を高めた結果、内燃エンジンではベースの296GTBから37馬力アップの700馬力にアップしている。
一方、V6とギアボックスの間にあるモーターは、冷却性能を高めることで13馬力アップの180馬力になり、ハイブリッド・システム全体では50馬力アップして880馬力となっている。
前例のないレースからのフィードバック
レースからのフィードバックは、動力系だけに限ったことではない。エアロダイナミクスは重要なソリューションとして注目されており、296スペチアーレにも驚くべきコンセプトの新技術が多数作用されている。
その多くが296チャレンジ用に開発されたもので、ロードカーへの採用は前例がないという。
ただし最も特徴的なリアのサイド・ウイングは、FXX-Kと296チャレンジの空力技術をミックスして採用している。垂直フィンと小型のウイングはFXX-Kから、特徴的なバンパーの形状は296チャレンジから用いてひとつにまとめ、世にも不思議なリアの両隅を囲みこむように湾曲したサイド・ウイングを完成させた。ちなみに垂直フィンは後流を最適化してドラッグを低減する効果があり、小型ウイングの水平面はダウンフォースを発生する。
またリアのアクティブ・スポイラーは296GTBから受け継いでいるが、アクチュエーターの制御を見直し、作動速度を速めたほか、新たに中間位置のミディアム・ダウンフォースも加わっている。
さらに、フロントのエアロダイナミクスにも大きな変更があった。296チャレンジのエアロ・ダンパーという技術で、フロント・スポイラーの中心からアンダートレイに導かれた気流の一部を、ダクトを使ってボンネット上面に導くことで、アンダートレイで発生するダウンフォースを高め、加速や減速時にライドハイトが変わってもダウンフォース自体を安定させる効果がある。
また、ボンネットには296GT3からドラッグとダウンフォースの両方に効果があるルーバーが採用された。ちなみに、ヘッドライトの下に開けられたブレーキ冷却用のダクトの開口部も拡大されている。
そのほか、アンダーボディの見直しや完全新設計のリア・ディフューザーの採用なども含めると、エアロダイナミクスの改良でダウンフォースは296GTB比で20%も増加しているという。
デザイナーの素晴らしい仕事
レース・テクノロジーからのフィードバックについて知れば知るほど疑問に思えたのは、なぜそれを視覚化して296スペチアーレの特徴としてアピールしなかったのかということだ。
デザイン・チームを率いたフラビオ・マンゾーニ氏のプレゼンテーションでは、彼の考えた296スペチアーレのデザイン・コンセプトの凄さを思い知ることになった。
彼曰く、最も重要だったのは、296GTBが持つエレガンスを保ち続けることだったという。そのために「美しさのなかに性能を統合」したというのだ。
特徴的なリアのサイド・ウイングがまさにそれを象徴していると言っていい。フロント・スポイラーのサイド・リップも同様だが、全幅は296GTBと1ミリたりとも変えていないという。
アンベールされた296スペチアーレを見た瞬間に、あまりの美しさに電気が流れたような衝撃を受けた気がしたのは間違いではなかった。
価格は296スペチアーレが40万7000ユーロ。日本円だと約6500万円(1ユーロ160円換算)。296スペチアーレA は46万2000ユーロで約7400万円だ。デリバリーの予定は2026年の第一4半期から。
フェラーリのプロダクトカーのラインナップのなかでも、最もホイールベースが短いミドシップのベルリネッタの高性能モデル、296スペチアーレは、どうやら公道で最もスリリングなドライビング・ファンが味わえる素敵なスポーツカーになっているようだ。
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=フェラーリS.p.A
■フェラーリ296スペチアーレ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4625×1968×1181mm
ホイールベース 2600mm
乾燥重量 1410kg
エンジン形式 V型6気筒(バンク角120°)DOHCツインターボ
排気量 2992cc
ボア×ストローク 88×82mm
最高出力(内燃エンジン) 700ps/8000rpm
最大トルク 755Nm/6000rpm
最高出力(ハイブリッド・システム) 880ps
トランスミッション デュアルクラッチ8段自動MT
パフォーマンス 0-100km/h=2.8秒 最高速度=330km/h
価格 40万7000ユーロ
(ENGINE WEBオリジナル)