最新フェーズのデザイン要素とインターフェイスを導入
中国の大手自動車メーカー・BYDの新しいフラッグシップSUV「シーライオン7」の日本導入がスタート。最新BEV(電気自動車)の実力を早速、公道で試すことができました。
BYD「シーライオン7 AWD」
【画像】「えっ!…」否定的な意見も多い中国車ながら実力はハイレベル! これがBYDの新クーペSUV「シーライオン7」です(30枚以上)
「シーライオン7」は「東京オートサロン2025」で初披露された5人乗りのミッドサイズSUV。BYD車のラインナップではミッドサイズセダンの「シール」に近しいポジショニングで、同等性能の電気モーターや同容量の駆動用バッテリー、そして充実した装備が与えられています。
ネーミングの“シーライオン”とはアシカの意味ですが、海中をアシカが自在に泳ぐ姿をイメージしているのでしょうか、「シーライオン7」はクーペSUVのような流麗なスタイリングが特徴です。
これは、スポーティさを強調するための演出ではありますが、Cd値(空気抵抗係数)を0.28に抑えることで電費や静粛性に貢献するという機能面での意味合いも大きいようです。また、張り出したリアフェンダーやリアゲート上下に配されたスポイラーなど、デザイン上のアクセントは走りのよさを予感させます。
フロントマスクには、“Ocean X Face”と呼ばれるBYDのモデル群「海洋シリーズ」に共通するデザインアイコンを導入。同じモデル群に属す「シール」との共通性も感じさせます。
「シーライオン7」のボディサイズは、全長4830mm、全幅1925mm、全高1620mmと、ミッドサイズSUVの上限といえるもの。また全幅は「シール」より50mmワイドと、日本で展開されるBYDの乗用モデルでは最大サイズとなっています。
室内長を左右するホイールベースは2930mmと、「シール」より10mm長く、室内高にもゆとりがあることから、日本で展開されるBYDの乗用モデルでは最もキャビンが大きいのも魅力のひとつです。
BYDの最新モデルということで、「シーライオン7」はインテリアも「シール」などと比べて進化。ダッシュボードデザインは従来のBYD車とは異なり、張り出しを抑えたシンプルなスタイルとなり、メーターパネルは内蔵式に変更されています。
BYD「シーライオン7 AWD」
その結果、BYD車の特徴であるインフォテイメント用15.6インチ回転式タッチスクリーンの存在感がより高まっています。同時にインターフェイスも進化しており、車載用チップもより高性能なものにアップグレードされています。
前後シートは、フロントがヘッドレスト一体式のスポーティなデザインとなる一方、リアはヘッドレストの高さ調整が可能な独立式で、リクライング機能まで備わるなど、快適性が高められています。
ラゲッジスペース容量は、標準時で500リットルを確保。リアシートの背もたれを倒すと最大1769リットルまで広がります。さらにフロントのボンネットフード下にも58リットルの収納スペースが用意されているので、レジャードライブなどでも活躍してくれそうです。
そんな「シーライオン7」は、フロア下に82.56kWhの駆動用バッテリーを搭載しています。
駆動方式の違いで、後輪駆動の「シーライオン7」と4WDの「シーライオン7 AWD」という2モデルが設定されていますが、いずれも後輪用モーターは共通で、最高出力312ps(230kW)、最大トルク380Nmを発生。加えて4WD車には、最高出力217ps(160kW)、最大トルク310Nmの前輪用モーターが追加されます。
注目の航続距離は、後輪駆動が590km、4WDが540kmと、いずれも500kmオーバーを達成。また、ロングドライブ時に頼りになる急速充電機能は105kWまで対応と、最新の急速充電器のメリットを活かせます。
そうしたBEV性能に加えて、「シーライオン7」シリーズは装備の充実ぶりも見逃せません。
全モデルにナッパレザーシート、前後シートヒーター、フロントシートのベンチレーション、ステアリングヒーター、電動シェードつきグラスルーフ、フロント3面の防音及び熱吸収ウインドウ、ナビゲーションシステム、DYNAUDIOのオーディオシステムなど、充実の内容を誇ります。さらに新機能として、スマートフォンによるデジタルキー対応やドライバーモニタリングシステムも追加されています。
後輪駆動でも十分以上の加速性能を確保
今回は後輪駆動の「シーライオン7」の4WDの「シーライオン7 AWD」をともに試乗することができました。
BYD「シーライオン7 AWD」
後輪駆動と4WDは、キャビンやラゲッジスペースの広さ、そして、装備レベルなど全く同じですが、駆動方式とモーター性能の違いから、タイヤの仕様とサイズが異なっています。
後輪駆動は、フロント235/50R19、リア255/45R19のコンチネンタル「エココンタクト6」を装着するのに対し、4WDは、前後同サイズとなる245/45R20のミシュラン「パイロットスポーツEV」を装着しています。
上記したように「シーライオン7」のボディは大柄ですが乗降性は良好。キャビンに収まるとゆとりあるフロントシートが体をしっかりと支えてくれます。ステアリングやドアトリムなどの素材も上質なもので、触感にも優れています。
コックピットは、ダッシュボードのデザインがシンプルになったこともあって落ち着いた印象。それが居心地のよさにつながっています。
シフト回りのスイッチ類が、視認性の高いデザインになったのも評価したいところ。新しいデザイン要素を取り入れたインテリアは、機能美を追求してきたな、という印象を受けます。
走り出してみると、大柄のボディサイズの割に扱いやすいことに気づきます。巨大なフロントウインドウによる見切りのよさに加え、ノーズが短いことよる鼻先の短さも効いています。車幅はワイドですが、そうした視界のよさとカメラ類によるアシストが弱点をカバーしてくれます。
乗り心地は、バッテリーをフロア下に積むBEVならではの低重心に加え、可変ダンピングショックアブソーバーの恩恵もあって路面追従性が高く、硬めの印象ながら不快な振動はありません。
一方、ステアリングを切った際のクルマの応答性は良好。市街地から高速道路まで軽快に走ることができます。
短時間ではありましたが、リアシートに座ることもできました。「シーライオン7」シリーズはフロアがフラットなことから、大人の男性でも正しい着座姿勢を取ることができます。
また、寒い季節に頼もしいシートヒーターを備えるなど、後席乗員のための装備も充実しており、ロングドライブ時もリラックスして移動できそうです。
後輪駆動と4WDをラインナップする「シーライオン7」シリーズですが、舗装路では加速性能など後輪駆動でも十分以上の性能を備えており、乗り心地についても2台の違いは少ないように感じました。
もちろん、加速の強烈さは4WDの方が格上ですが、公道ではそこまでのパワフルさを活かすことはできないことから、降雪地に住む人や4WDならではの動力性能を求める人以外は、後輪駆動でも十分満足できるでしょう。
ちなみに価格面では、同等の装備内容ながら後輪駆動の方が77万円(消費税込)安く設定されています。
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BYDの「シーライオン7」は、走りのレベルが高い上にSUVとしての実力もハイレベル。さらに、リアシートが広いので後席に人を乗せる機会が多い人にもおすすめできる電動SUVです。積載能力にも優れているので、日常からレジャードライブまで幅広いシーンで活躍してくれることでしょう。
BYD「シーライオン7 AWD」
そして何より、495万円〜というプライスタグはミッドサイズSUVの中で高い価格競争力を有しています。この先、各ブランドから多くのBEVが登場してくるはずですが、「シーライオン7」は装備レベルや価格面におけるベンチマークとなりそうな存在です。
Source: キャビンが広くて上質な“ハイコスパSUV”の真価とは? BYD新型「シーライオン7」は大柄ボディを意識させない軽快な走りが魅力的