17/09/2025 · 2 日前

フォルクスワーゲンの新型「ID.Buzz」、スタンダード&ロングホイールベースを乗り比べ!

6月に注文受付を開始したEVミニバン「ID.Buzz」

1モーターで駆動方式は後輪駆動のみ

“ビートル”と並んで愛されるフォルクスワーゲンのアイコン“ワーゲン バス”が、「ID.Buzz」(アイディ・バズ)として2024年に復活を果たした。そしていよいよ2025年6月に日本導入となり、今回はそのベーシックモデルである「Pro」と、「Pro Long Wheelbase」を同時に乗り比べることができた。

そんなID.Buzzは、まだ市場では珍しい「EVミニバン」だ。もっとも本国には商用バンの「ID.Buzz Cargo」(カーゴ)もラインアップしており、“Type 2”から続く多目的バンの歴史をきちんと踏襲しているわけだが、EVとなったことで乗用車としてのドライバビリティが格段に上がった。だからミニバンのキャラクターはより一層高まったと言えるだろう。

その概要をおさらいすれば、日本仕様は全て3列シートとなる。ベーシックモデルの「Pro」は4715mmの全長に、2990mmのホイールベースを収める6人乗り。一方の「Pro Long Wheelbase」はその全長を4965mmにストレッチすることで、3240mmものホイールベースを確保した7人乗りとなっている。ちなみに全幅はともに1985mmとかなり大きい。サイズ感はワイドなLLサイズミニバンという印象だ。

今回はID.Buzzのロングホイールベース仕様で2-3-2レイアウトの「Pro Long Wheelbase」(997万9000円/写真左)と、スタンダードホイールベース仕様で2-2-2レイアウトの「Pro」(888万9000円/写真右)を乗り比べてみた

写真の「Pro Long Wheelbase」のボディサイズは4965×1985×1925mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは3240mm。「Pro」のボディサイズは4715×1985×1925mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは2990mm

写真の「Pro Long Wheelbase」ではフロント235/50R20、リア265/45R20サイズを、「Pro」ではフロント235/55R19、リア255/50R19とモデルによってサイズが異なる

パワートレーンは1モーターで、駆動方式は後輪駆動のみ。モーターは定格出力89kW(約121PS)、最高出力で286PS、最大トルクは560Nmとかなりの力持ちだ。これを動かすバッテリの容量はProが84kWhで、航続距離は524km。対してPro Long Wheelbaseは91kWhに容量が増やされ、その分だけ航続距離が554kmと少しだけ長くなっている(ともにWLTC値)。

となると6人乗りの3列シートで888万9000円のプライスを付ける「Pro」の方が、997万9000円となるPro Long Wheelbaseよりも現実的? かわいいフリしてお値段はさほどかわいくないから、しっかり乗り比べてみた。

「Pro Long Wheelbase」のインテリア。ワンタッチ操作で遮光が可能なパノラマガラスルーフやプレミアムサウンドシステム“Harman Kardon”を組み合わせた「ラグジュアリーパッケージ」(29万7000円)を装着する。走行モードは「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「カスタム」から選択可能

「Pro」の2列目と3列目。ProにはLEDマトリックスヘッドライト“IQ. LIGHT”や運転席/助手席にリラクゼーション機能を備えたパワーシート、3ゾーンフルオートエアコンディショナー(運転席/助手席/後席独立調整)、シートヒーター(2列目左右)といった快適装備をパッケージとした「アップグレードパッケージ」(70万円)を用意

スタンダードとロングホイールベースで乗り味が違う?

両モデルの違いは?

まず最初に走らせたのは、「買うなら本命?」のベーシックモデル「Pro」だ。床下にバッテリを敷き詰めることからフロアは高く、乗り込むには「よいしょ!」のワンステップが必要になるのは、日下部さんのレポートと同じだった。

当日はかなりの猛暑だったから、撮影の合間に乗ったり降りたりするのは50代の筆者でもちょっと億劫だったが、乗り込めば目の前に広がる明るい室内空間に「ワーゲンバスに乗っている!」と気分はアガる。

ID.Buzzは乗り込むだけで気分が上がる

インテリアの第一印象は、プレミアムというよりもファンシー。水平基調のダッシュボードはラウンドせずにドアパネルのギリギリまで伸ばされていて、ウォークスルーも併せて室内が広々としている。ドアパネルを含め内装は樹脂然としているけれど、2トーンの配色が爽やかで、ウッドパネルが雰囲気をキリッと引き締めている。

ちなみにID.Buzzからフォルクスワーゲンはシートカバーや天井の内張り、カーペットの断熱層にリサイクル材を多用している。グリーンのカラーリングもサスティナビリティをイメージしているというから、こうした理由を知ればちょっと若作りなカラーセンスも納得だ。フォルクスワーゲンならではの質素さや実直さと、いまっぽいエシカルさが上手にミックスされていて、2代目ワーゲンバスもサーフィンやアウトドアとの親和性が高いクルマになりそうだと感じた。

街中での取りまわしは、この大きさにしてはなかなか良好だ。フロントのグラスエリアが広く、Aピラーを二分割した巨大な三角窓で側方視界も確保できている。ドライビングポジションはアップライトで、まさにバスを運転している気分。シートは小ぶりでやや硬めだから、最初は座りがわるかったけれど、座面を伸ばすと収まりがよくなった。でも、これでドイツ人のお尻は収まるのだろうか?

Proの街中での取りまわしはなかなか良好

EVだけに基本的な走りは滑らかだ。路面からの入力はフロアがきちんと受け止めており、車体重心の低さに対して着座位置は高めだけれど、全幅の広さのおかげで頭が横揺れする感じもない。

ただ、かなりアクセルを丁寧に踏んでいても後輪駆動の影響か、ときおりピッチングが起きる。普通に走っている限りはリアアクスルの剛性不足などまったく感じない。しかし「ID.4」の反省も含めて足まわりをソフトにしているのか、アクセルのオン/オフで前後ピッチが出てしまう。そういう意味ではもう少しだけトルク制御の洗練がほしい。

アクセルをオフしたときの空走感もかなり高い。今後こうした制御は燃費や電費節約のトレンドになっていくと思うが、街中だとちょっと速度が乗りすぎてしまうところがある。シフトレバーを「B」モードに入れれば滑かな回生ブレーキが得られるから良いけれど、パドルシフトで任意に回生ブレーキを操作できるのが一番いい。

ブレーキはきちんと効くけれど、回生ブレーキとの兼ね合いだろうペダルタッチがかなりソフトだ。その車重はショートホイールベースでさえ2560kgもあるから(マルチフレックスボード装着車)、安心感という点でもドイツ車らしいソリッドさがもう少しあってもいいと思う。

ID.4もそうだったが、ID.Buzzにも電費を徹底して節約するドイツ気質が強く出ており、そこに対してまだシャシーワークがまとまりきらない印象だ。ひいき目も手伝ってその“ぴょこたん”とした乗り味を愛らしさと取れなくもないが、走りにおいてはまだまだ熟成を期待したいところである。

熟成を期待したいと感じたProの走り

なんて辛口な評価をしたあとロングホイールベース版を試乗したら、特にピッチングがきちんと抑え込まれていたから思わずうなってしまった。7人乗りであることや、ラゲッジスペースが2123Lから2469Lに増やされていることだけでなく、その乗り味さえもが断然上質なのだ。

ちなみに3列目シートの乗り味はベーシックモデルも良好だったが、ホイールベースが250mm長い分だけ、こちらの方がこぶし2つ分膝まわりに余裕がある。シートの取り付け剛性がしっかりしている2列目の良好な乗り心地と併せて、全てのシートに長距離ドライブできる実力が備わっていると感じた。

Pro Long WheelbaseはスタンダードホイールベースのProとは異なる印象を受けた

スライドドアが開くときの“バンッ!”と弾けるロック解除音の大きさや(それだけ頑丈にロックしているということだろう)、外したら車内に置き場のない大きなトノカバー、取り付け剛性は高いけれど折りたたむのがひと苦労な3列目シートなど、国産ミニバンと比べてしまえばその造りはかなりザックリしている。

それでもI.D.BUZZを運転していると、気持ちがワクワクしてくる。トコトコとゆっくり走りながら充電を繰り返し、どこまで行けるか冒険してみたくなる。

実用車というには価格が高く、いまID.Buzzを購入するようなユーザーは比較的裕福な人たちだろう。そしてこうした人たちには、サイズの問題がなければロングホイールベースをおすすめする。

一方、ワーゲンバスの登場を長年待ち焦がれていた熱烈なファンでショートホイールベースがほしいなら、もう少し熟成を待ってもよいと筆者は思った。それでもやっぱりガマンができない! というのであれば、ぜひ両者をディーラーで乗り比べてみてほしい。

サイズの問題がなければロングホイールベースがおすすめ

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