2025年度の車種別販売ランキングが固まった。首位ヤリス、2位カローラとおなじみの名前が並ぶが、これらは複数の車型を持つ一つの「ファミリー」。では単一車型で売れているクルマは何か? ここで急浮上してくるのが、ダイハツがトヨタ向けに生産するライズとルーミーなのだ。その人気の秘密を解き明かしてみよう!【画像ギャラリー】トヨタライズの魅惑のカクカクボディをじっくり見てよ!(12枚)文:渡辺陽一郎/写真:トヨタ自動車、ベストカーWeb編集部単一車型の販売ランキング1位はなに?ダイハツ ロッキーのトヨタ向け車両であるライズ(右) 2025年度(2025年4月~2026年3月)における小型/普通車販売ランキングのトップ5車は、1位:トヨタ ヤリスシリーズ、2位:トヨタ カローラシリーズ、3位:トヨタ ライズ、4位:トヨタ シエンタ、5位:トヨタ ルーミーであった。小型/普通車のトップ5車はすべてトヨタだ。 しかしトップ5車の内、ヤリスとカローラは、複数のボディを合計した販売台数になる。ヤリスには、コンパクトカーのヤリス+コンパクトSUVのヤリスクロス+スポーツモデルのGRヤリスがある。カローラは、ボディの種類がさらに多く、販売台数の多いカローラクロス、ワゴンのツーリング、セダンや5ドアハッチバックのスポーツもある。 そこでユーザーニーズに沿ってボディタイプ別に集計すると、国内小型/普通車販売ランキングの実質1位は、コンパクトSUVのライズだ。実質2位はコンパクトミニバンのシエンタで、実質3位は背の高いコンパクトカーのルーミーになる。この実質トップ3車は、すべてトヨタの5ナンバー車だ。 しかも実質1位のライズと、実質3位のルーミーは、純粋なトヨタ車ではない。トヨタの完全子会社になるダイハツが開発と生産を受け持つOEM。販売台数は少ないものの、ライズはダイハツブランドのロッキー、ルーミーもダイハツトールとして販売されている。 なぜトヨタが開発と生産を行う車種よりも、ダイハツ製が好調に売れるのか。この背景には複数の理由がある。ストロングハイブリッドを価格破壊したライズ全長4mのコンパクトSUVは確かに魅力的。しかもライズは安い! まずは商品力の高さだ。ライズは人気のカテゴリーとなるコンパクトSUVで、なおかつ数少ない5ナンバー車だ。全長は4mを下まわり、最小回転半径も5m以下だから、コンパクトカーのように運転しやすい。外観はフロントグリルの開口部が大きめで、コンパクトでもSUVで重視される存在感が相応に強い。 ライズの車内に広々感はなく、身長170cmの大人4名が乗車すると、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ少々に留まる。それでも後席に座る乗員の足が前席の下に収まりやすく、大人4名の乗車は十分に可能だ。 ライズの発売は2019年だから、すでに7年近くを経過する。そのためにステアリングの操舵感、走行安定性、乗り心地などに設計の古さも散見されるが、街中を中心に使うなら不満はない。 そして価格が安い。直列3気筒1.2Lガソリンエンジンを搭載する1.2Gは、アルミホイールやエアコンのオート機能などを装着して、2WDの価格が195万8000円だ。コンパクトカーのトヨタヤリス1.5Gが207万2400円だから、ライズ1.2Gは、エンジン排気量が少し小さいものの、価格も安く190万円台に収まる。 ライズにはストロングハイブリッドも用意され、ハイブリッドG・2WDの価格も226万3800円と安い。ライバル車となるコンパクトSUVのトヨタヤリスクロスハイブリッドG・2WDは271万2600円だから、装備に差はあるものの、ライズハイブリッドGは44万8800円下まわる。これらの相乗効果で、ライズは2025年度に1か月平均で8940台を販売した。スーパーハイトワゴンの魅力を拡張したルーミーダイハツ トールのトヨタ向け車両となるルーミー。デビューから10年が経つがまだまだ魅力的 国内販売ランキング実質3位のルーミーもダイハツ製OEMだ。ルーミーの発売はライズよりも古く2016年に遡る。 つまりルーミーは、今年で発売後10年を経過するから古さも目立つ。2020年に登場したライバル車のスズキソリオと比べると、ルーミーは、内装の質、後席の座り心地、動力性能、走行安定性、乗り心地、静粛性、燃費性能、安全装備で劣っている。 それでも2025年度の1か月平均販売台数は、ルーミーは7930台でソリオは4387台だ。ソリオも人気を相応に得ているが、ルーミーの売れ行きはその1.8倍に達する。 ここまで設計の古いルーミーが高い人気を得た理由は、軽自動車で絶大な売れ行きを誇るスーパーハイトワゴンの小型車版になることだ。軽自動車には、国内販売1位のホンダN-BOXを筆頭に、スズキスペーシア、ダイハツタント、日産ルークスなど、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着したスーパーハイトワゴンが高い人気を得ている。 それなのに小型車のスーパーハイトワゴンは、ライズとダイハツ版のロッキー、ソリオとOEMの三菱デリカD:2しかない。「スーパーハイトワゴンは欲しいが、軽自動車は避けたい」と考えるユーザーの需要がルーミーに集中した。 ルーミーは価格の安さも魅力だ。中級グレードのGは、エンジンは直列3気筒1Lだが、LEDヘッドランプ、両側スライドドアの電動開閉機能、エアコンのオート機能などを標準装着して価格は193万9300円だ。軽自動車のスーパーハイトワゴンと同程度になる。同じトヨタのコンパクトカー、ヤリスに直列3気筒1Lエンジンを搭載したGの192万1700円とほぼ同価格だから、高い天井で車内が広く、後席を格納すると自転車も積めて、電動スライドドアも備えたルーミーに割安感が生じた。ダイハツの値ごろ感をトヨタディーラーで買える安心感ダイハツの手頃さをトヨタディーラーで買える安心感は大きい そしてライズとルーミーに共通する人気の理由として「トヨタ車であること」も見逃せない。トヨタは最大規模のメーカーで、クラウン、センチュリー、アルファードなどの高価格車も豊富だからブランドイメージも高い。ライズとルーミーでは、実際の開発と生産はダイハツが受け持つが「トヨタ車を選べば間違いない」という安心感がある。 トヨタは販売網も充実する。トヨタの国内店舗数は約4300箇所で、日産の約2000箇所、ホンダの約2100箇所に比べて2倍以上だから購入しやすい。 これらの事情でライズとルーミーの販売は好調だが、同じトヨタの同クラス車とされるヤリスクロス(販売台数は1か月平均で約7200台)、ヤリス(同じく約6000台)よりも明らかに多く売れている理由は何か。 販売店は以下のように説明する。「最近のトヨタ車は、生産が需要に追い付かない。そのためにコンパクトな車種も含めて、納期が延びた結果、受注を時々停止させる。ところがダイハツから供給されるライズとルーミーは、納期の大幅な遅延や受注の停止がほとんど生じない。そのために安心して販売できる。トヨタが生産するコンパクトな車種が受注を停止している時など、お客様にライズとルーミーをおすすめしている」。 以上のようにライズとルーミーは、価格を含めて国内市場のニーズに合った商品で、しかもさまざまなトヨタの事情を考慮しても、ユーザーに対して優しいクルマだ。そのために販売も好調だ。今のトヨタにとって、ダイハツとダイハツ製の商品は、不可欠の存在になっている。