単気筒なのに、マフラー(エキパイ)が2本? 昔のバイクは、マフラーの本数を見るとエンジンの気筒数が分かりました。基本的にマフラーの数=気筒数だったからです。 しかし1970年代中頃からは、4気筒でもサイレンサーが2本や1本の集合マフラーが増えてきましたが、エンジンの排気口から出る「エキゾーストパイプ」の本数を見れば、やはり何気筒のエンジンか判断できました。【画像】いまや希少でもけっこう多い? サイレンサー(エキパイ)が2本の単気筒エンジン車を画像で見る(25枚) ところが、単気筒エンジンなのにエキゾーストパイプが2本出ているバイクも存在します。 よく見ればエンジン(シリンダーやシリンダーヘッド)の幅は狭いのですが、一見すると2気筒エンジンに思えます。なぜ単気筒エンジンなのにマフラー(エキゾーストパイプ)が2本出ているのでしょうか?ホンダのマフラー2本出しは冷却性向上から始まったホンダ「GB250クラブマン」のエンジン。マフラー(エキゾーストパイプ)が2本出ているので一見すると2気筒だが、じつは単気筒エンジンホンダ「GB250クラブマン」のエンジン。マフラー(エキゾーストパイプ)が2本出ているので一見すると2気筒だが、じつは単気筒エンジン 単気筒エンジンの国産バイクで、初めてエキゾーストパイプを2本装備したのは、おそらくホンダが1978年に発売したオフロードモデルの「XL250S」です。 新設計の4ストロークエンジンを搭載し、当時のリリースには「高い吸排気効率をねらい、2本ずつの吸・排気弁を採用。 単気筒ながら2本の排気管を持つ。このため、高速時の出力はもち論、歩くよりも遅いような低速での長時間走行も可能な、すぐれた冷却性と、低中速でねばり強くパワーバンドの広い出力特 性を備えている」と記載されました。ホンダ「XL250S」(1978年)は空冷単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載し、マフラー(エキゾーストパイプ)は2本出しホンダ「XL250S」(1978年)は空冷単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載し、マフラー(エキゾーストパイプ)は2本出し そしてオンロードモデルでは、1980年に発売した「CB250RS」が2本出しマフラーです。こちらは「XL250S」(サイレンサーは集合した1本出し)と異なり、エキゾーストパイプからサイレンサーまでしっかり2本出しでした。 エンジン本体は「XL250S」ベースのパワーアップ版ですが、当時のリリースには「NEW F.D.S.S.ENGINE(FOUR VALVE DOUBLE EXHAUST SUPER SINGLE ENGINE)」と表記され、「中・低速のパワーアップと冷却率を高めたダブル・エキゾースト・システム」と記載されています。 このように「XL250S」や「CB250RS」で共通するのが冷却性です。それまでの4ストロークエンジンは1気筒当たり2バルブ(吸気バルブ1本、排気バルブ1本)が一般的でしたが、吸排気効率を高めるために4バルブ化(吸気バルブ2本、排気バルブ2本)しました。 すると、当時の空冷方式だとエンジンが冷えにくくなったため、それぞれのバルブの間に冷却する空気の通り道を作るために、シリンダーヘッドの排気口とエキゾーストパイプを振り分けた、と考えられます。 またエキゾーストパイプを2本とすることで1本の直径が細くなり、低速時のトルクアップなどにも貢献したと思われます。 さらにホンダは1983年にRFVC機構(Radial Four Valve Combustion Chamber:放射状4バルブ方式燃焼室)を持つ「XLX250R」(SOHC)と「CBX250RS」(DOHC)を発売します。 RFVCは吸気バルブ2本と排気バルブ2本を放射線状に配置することで、燃焼効率と吸排気効率を大幅に向上させました。ちなみにエキゾーストパイプが2本あるだけでなく、吸気側のキャブレターも、単気筒エンジンなのに2個装備しています。 その後も空冷単気筒のオフロードモデル(XLR250R、XL600R、XR250/400系など)にはRFVCのSOHCエンジンを採用し、オンロードモデルではRFVCのDOHCエンジンを「GB250クラブマン」や「CBX125F/CUSTOM」に採用します。 またクラシック路線の「GB400TT/500TT」や「CB400SS」はRFVCのSOHCでしたが、これらのバイクはいずれもマフラー(エキゾーストパイプ)が2本出しでした。 しかし単気筒エンジンが水冷化されると、マフラー(エキゾーストパイプ)は1本出しになります。これは水冷による冷却性能の向上が影響していると考えられます。スズキは燃焼室内の過流を促進 スズキは1982年に発売した「DR250S」で、2本出しエキゾーストを採用します。当時スズキは4ストロークエンジンに「TSCC(Twin Swirl Combustion Chamber:ツイン・スワール・コンバスチョン・チャンバー)」(2渦流燃焼室)というメカニズムを投入。シリンダーヘッドの燃焼室に2つのドームを設け、吸気バルブ2本と排気バルブ2本によって吸気した混合ガスに2つの過流を発生させることで燃焼効率を高めます。 この空冷単気筒SOHCエンジンは、同年のアメリカンタイプの「GN250E」も搭載し、リファインを重ねて後年の「SW-1」や「ボルティー」、「グラストラッカー」などにも使われました。1986年に発売された「NZ250」は、TSCCに加えスズキ独自の油冷システムとDOHC化され、マフラー(エキゾーストパイプ)は2本出し1986年に発売された「NZ250」は、TSCCに加えスズキ独自の油冷システムとDOHC化され、マフラー(エキゾーストパイプ)は2本出し そして1986年にはTSCCに加え、スズキならではの「SACS(Suzuki Advanced Cooling System:スズキ・アドバンスド・クーリング・システム)」の油冷システムとDOHC化した「NZ250/S」が登場します。こちらもマフラー(エキゾーストパイプ)は2本出しです。 しかしスズキの単気筒エンジンも、空冷2バルブや水冷4バルブのタイプはマフラー1本出しになります。また「ジクサー250」や「Vストローム250SX」など、近年の油冷単気筒SOHC4バルブエンジンも1本出しです。これも排気効率の兼ね合いや、冷却性能の向上によるものでしょう。水冷でも2本出しを続けたヤマハ ヤマハも1982年の「XT400」で2本出しマフラー(エキゾーストパイプ)が登場します。こちらも空冷単気筒エンジンに4バルブ(吸気バルブ2本、排気バルブ2本)を採用するSOHCですが、ヤマハ独自の「YDIS(ヤマハ・デュオ・インテーク・システム)」と呼ぶ2つのキャブレターを装備し、スワール効果(燃焼室内の過流)を最大限に引き出すのが目的です。「XT400」が装備するヤマハ独自の「YDIS」機構。キャブレターが2つでエキゾーストパイプも2本「XT400」が装備するヤマハ独自の「YDIS」機構。キャブレターが2つでエキゾーストパイプも2本 この「YDIS」&2本出しマフラーは、DOHCの「XT250T」(1983年)や、そのエンジンを転用した「SRX250」(1984年)にも採用されます。また「XT400」や「XT600」のエンジンをベースとしたシングルスポーツの「SRX400/600」(1985年)も登場して人気を集めました。 また、ホンダやスズキは単気筒エンジンの水冷化などで2本出しマフラーは消えましたが、ヤマハは「XT600」から進化した水冷5バルブ(吸気バルブ3本、排気バルブ2本)の「XTZ660テネレ」(1991年、輸出モデル)や、後継モデルの4バルブになった「XTZ660Zテネレ」でも2本出しマフラーを採用していました。 このように、国産バイクの単気筒エンジンでマフラー(エキゾーストパイプ)2本出しのバイクを見ると、基本的に空冷4バルブのエンジンに採用されていました(ヤマもは水冷単気筒にも採用)。 とはいえ、近年は国産の空冷単気筒は冷却の負担が少ない小排気量が主体になり、ホンダの「GB350」やカワサキの「KLX230」系は2バルブで、その他の単気筒は水冷化されています。 そのため国産車(国内販売)の現行モデル(競技車両除く)だと、単気筒で2本出しマフラーのモデルは存在しません。 これも技術進化で消えた機構のひとつ……と言えるかもしれません。