東京オートサロン2026でホンダが提示した新たなSUV戦略である「トレイルスポーツ」。ヴェゼル、ZR-V、WR-V、新型CR-Vという主力SUV4車種を横断するこの新ラインは、単なるドレスアップ提案にとどまらず、今後のホンダSUVの方向性そのものを示す存在といえます。市販化を前提に検討が進められているというトレイルスポーツの狙いと、その中身を整理してみましょう。【画像ギャラリー】東京オートサロン2026にホンダが出展した「SPORT LINE」「TRAIL LINE」、そしてPASSPORT TRAILSPORT ELITE(13枚)文:吉川賢一/写真:HONDA、エムスリープロダクションホンダが海外で培ってきたオフロードの世界観を背景にした取り組み 東京オートサロン2026でホンダは、今後のカスタマイズ商品の軸となる2つのブランドを発表しました。ひとつは、オンロードレースへの長年の参戦で培った技術や知見を市販車へフィードバックする「スポーツライン」。もうひとつが、海外のオフロードレース参戦を通じて得た知見をSUVに反映する「トレイルライン」です。 これまでのホンダのSUVは、ヴェゼルは都会派、ZR-Vは走り重視、WR-Vは実用本位、新型CR-Vは先進性と上質さを重視するなど、車種ごとに明確なキャラクターが与えられていました。トレイルラインは、そうしたSUV群を「アウトドア×走破性」という明確な軸で束ね直す試み。 東京オートサロン2026のホンダブースには、壇上に北米を中心に販売されている同社のミドル~ラージサイズSUVの「パスポート」の最上級「トレイルスポーツエリート」が展示されていましたが、メキシコで開催されているオフロードレース「BAJA1000」において活躍しているパスポートを展示することで、トレイルラインが単なる国内向けの装飾提案ではなく、ホンダが海外で培ってきたオフロードの世界観を背景にした取り組みであることを、視覚的に示す狙いがあったようです。北米で販売されるパスポート トレイルスポーツ。日本導入は反応次第とされているすでに市販化を前提に検討が進められている このトレイルラインの思想を具現化したコンセプトモデルとして発表されたのが「トレイルスポーツHRCコンセプト」です。東京オートサロン2026では、新型CR-V、ZR-V、ヴェゼル、WR-Vの4車種が披露されました。 スレートグレー・パールで統一されたボディカラーに、ブラック基調の加飾、そしてパスポートをイメージさせる鮮やかなオレンジのアクセントを組み合わせ、フロントグリルやフロントバンパー、サイドガード、リアバンパーなど随所に専用パーツを配置。さらにフロントグリルには補助灯が装着され、足元にはブラックカラーのアルミホイールとホワイトレター入りのオールテレインタイヤが組み合わされています。アクティブでありながら洗練された、アウトドアシーンで映えるエクステリアに仕上げられました。 この4車種のトレイルスポーツ仕様は、すでに市販化を前提に検討が進められており、将来的にラインアップへ加わる予定とのこと。いずれのモデルも違和感なく成立しており、ボディサイズや価格帯、想定ユーザーが大きく異なる4車種において、共通の世界観を破綻なく成立させていることからも、このトレイルスポーツが当初から量産化を強く意識した設計であることがうかがえます。WR-Vのトレイルスポーツヴェゼルのトレイルスポーツ価格は標準車+70万程度か!?? 市販化にあたって最大の焦点となるのは、標準モデルとの価格差をどこに設定するかになると思われます。あまりに高額な専用グレードとしてしまえば、ユーザーから見向きもされないおそれがありますが、一方で、見た目だけの「なんちゃって仕様」にとどまれば、トレイルスポーツという新たなラインを打ち出した意味そのものが薄れてしまいます。パワートレインやサスペンションといった走行系まで踏み込むのか、それとも外装・内装を中心とした仕様にとどめるのかは、商品性を左右する大きなわかれ道になるでしょう。 ただし、今回の展示内容を見る限り、現時点では走行系に大きく手を入れるというよりも、デザインや世界観を重視した仕様になる可能性が高そうです。その前提に立てば、中核モデルを基準に、エクステリア加飾で約30万円、インテリア加飾で約20万円、ルーフレールで約10万円、オールテレインタイヤとブラックホイールで約10万円と、合計70万円前後の価格アップに収まると見るのが現実的でしょう。 もっとも、税込214万円からのWR-Vから、総額600万円に迫る新型CR-Vまで、価格帯に大きな開きがあるため、すべての車種に同じかたちで上乗せされるわけではなく、エントリー層向けのWR-Vでは価格上昇を抑えた簡素な仕様にとどまる一方、CR-Vでは装備内容を充実させた「完成形」に近いグレードが用意されるなど、車格に応じた差別化が図られる可能性は高いと思われます。 もうひとつ気になるのが、パスポートの存在です。ブースにいたホンダ関係者は、パスポートの日本導入について「未定」としていましたが、ホンダとオフロードの結び付きが強いとはいえない日本市場においては、トレイルスポーツの世界観を体現する象徴的なモデルがあるかどうかは重要なポイントになります。ぜひともトレイルスポーツの頂点に位置付けられる「パスポート」の日本導入も視野に入れて欲しいところです。 いずれにせよ、今回の完成度を見る限り市販化は時間の問題と見てよさそう。登場が非常に楽しみです。ZR-VのトレイルスポーツCR-Vのトレイルスポーツ