毎年多くのモデルが登場するなかで、アドバンテージを得るには独自性が必要。それは当然メーカーも理解しており、時に斬新なコンセプトのモデルを送り出してくる。しかしそれが仇となり、注目されるものの販売に結びつかないことも少なくない。今回はそんな悲劇のクルマを紹介する。【画像ギャラリー】斬新なコンセプトで注目の的だったクルマたちをもっと見て!(13枚)文:木内一行/写真:トヨタ、ホンダ、マツダ、CarsWp.com「軽自動車よりも短い!? マイクロプレミアム」 トヨタ・iQ2985mmの全長に対して全幅が1680mmもあるため、一種異様な雰囲気を漂わせるスタイリング。ビジュアルだけでなく、前後バンパーの形状で優れた空力特性も追求している 狭い日本で活躍するコンパクトカーは数あれど、ここまで独創的なモデルが登場したのは衝撃だった。2008年にデビューしたiQは超小型ボディのマイクロプレミアムカーだ。 強烈なインパクトを与えたのがそのボディサイズで、3m以下という軽自動車よりも短い全長ながら登録車と同等の全幅を持ち、ボディの縦横比がフツーじゃないのだ。 もちろんこのディメンションは計算され尽くしたもので、前後のオーバーハング縮小やエンジンルームのコンパクト化、シートの薄型化などの効果もあり、大人3人と子供1人が座ることができる超高効率パッケージングを実現したのである。 エンジンは、当初は1リッター直3のみだったがデビュー翌年には1.3リッター直4も追加。組み合わされるミッションはCVTのみでスタートしたが、後に1.3リッター車に6MTを新設。 また、スーパーチャージャーを装着した1.3リッターエンジンと6MTを組み合わせる、GAZOOレーシング仕立てのスペシャルモデルも存在する。 iQの登場は大きな話題となり、国内外で注目を集めた。ただし、マイクロプレミアムカーとメーカーが謳うだけあり通常のコンパクトカーよりも価格が高く、税制上でのメリットもない。さらに、1名もしくは2名乗車が基本。 そういったこともあり、一般的なユーザーからの支持を得ることができなかった。そして、鮮烈なデビューを果たしたものの売り上げは低迷。話題性が先行したクルマの代表的な存在となってしまったのだ。「唯一無二の4ドア4シーターロータリースポーツ」 マツダ・RX-8外観は4ドア4シーターでありながらスポーツカーのスタイリングを表現。小ぶりなキャビンや張り出したフェンダーが特徴的だ。2008年のマイナーチェンジで前後の意匠が大きく変わった オンリーワンのロータリースポーツとして長年愛されてきたRX-7。しかし、厳格化された「平成12年排出ガス規制」に対応することができず、2002年8月に惜しまれつつ生産終了。14年の歴史に幕を下ろした。 そんなRX-7の後を継いで登場したのがRX-8だ。ロータリーエンジンを搭載したスポーツモデルということは変わらないが、パッケージングはまったくの別物。あくまでも2人乗りを基本としていたRX-7 に対し、RX-8は「New 4door Sports for 4Adults」を基本コンセプトとした4ドア4シーターのスポーツカーに生まれ変わったのだ。 一番の見どころは、独創的な高効率パッケージとともにセンターピラーレスのセンターオープン式フリースタイルドアを採用したこと。これにより、大人4人が過ごせる空間を確保するとともに優れた乗降性も実現した。 エンジンは新開発の2ローター自然吸気「RENESIS(13B-MSP)」。動力性能と環境性能を高次元で両立し、ターボのような圧倒的なパワーはないものの、ロータリーならではの伸びやかなフィーリングは健在だ。 そして、このパワーユニットをフロントミッドシップに搭載し、50対50という理想的な前後重量配分を達成。スポーツカーらしいハンドリングを手に入れたのである。 このような前代未聞のスポーツカーとなったRX-8だが、当初は好調だった販売も次第に下降し、2012年に生産終了。世界累計で20万台近くを販売し、決して不人気ではなかったRX-8だが、新型を登場させるほどの期待値はなかったようだ。「エコだけじゃ終わらないハイブリッドカー」 ホンダ・CR-Z躍動感のあるワンモーションフォルムでスポーツカーらしさを表現したエクステリア。ルーフのほぼ全面がガラスになるスカイルーフもメーカーオプションで設定されていた プリウスの登場以来、ハイブリッドカーといえば「エコ」だった。しかし、2010年に発売されたCR-Zはそのイメージを一転。「環境性能」と「走り」という相反する要素を両立するハイブリッドスポーツとしてデビューした。 その姿は、2007年東京モーターショーで披露された「CR-Zコンセプト」そのもの。躍動感あふれるワンモーションフォルムは、まさにスポーツカーだ。 ドライビングポジションにもこだわり、ヒップポイントを極限まで低くしながらヒールポイントを上げて高低差を少なくし、スポーツ走行に適した着座姿勢を実現している。 パワートレインは、114ps(MT)を発揮する1.5リッター直4に14psのモーターを用いたIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)を組み合わせた独自のハイブリッドシステム。 システム出力は124psだが、モーターのアシストを積極的に活かす「SPORTモード」を設定した3モードドライブシステムで走る楽しさを提供する。そして、世界で初めてハイブリッドカーとして6MTを採用し、CVT車にはパドルシフトが装備された。 なお、2012年のマイナーチェンジでエンジンとモーターの出力が向上。力強い加速が可能な「PLUS SPORTシステム」も搭載した。 CR-Zは初のハイブリッドスポーツとして期待値が高かったこともあり、デビュー年は順調にセールスを伸ばした。しかしそれ以降は下降線をたどり、販売終了までの累計販売台数は約4万台。2代目が登場することはなかった。「斬新な3席×2列の6シーターミニバン」 ホンダ・エディックス3×2パッケージを活かしたショート&ワイドのフォルムはミニバンを感じさせないもの。突き出し感のあるマスクやクラウチングスタイルのサイドビューなどダイナミックな印象だ 2000年代前半といえばSUVブームが本格化する前で、まだまだミニバンが主役だった頃。それゆえ各メーカーからさまざまなモデルが発売され、まさに乱立状態だった。そんななか、2004年に登場したエディックスは斬新な手法で多人数乗車を可能にし、独自性を打ち出した。 一般的にミニバンとは3列シート車のことを指すが、エディックスはホンダ自らミニバンと謳っているため、本稿でもそれに倣って進めよう。 さて、そのエディックス最大の特徴は独創的なパッケージングで、「3×2ミニバン」をコンセプトに3席×2列という6シーターを実現。 このメリットはいくつもあり、2列シートのため全長を伸ばす必要がなく、取り回し性に優れること。さらに、前後の中央席をロングスライドさせるV字シートレイアウトで、自由なアレンジが可能なことに加え前後席の一体感も創出。そして、ワイドトレッドを生かした優れた操縦安定性としなやかな乗り心地も手に入れた。 エクステリアはミニバンを感じさせないもので、「スポーティ&ダイナミクス」をテーマにショートかつワイドなスタイルを創造。全長は同時期に販売されていたエアウェイブよりも短いが、全幅は1.8m弱のため完全な3ナンバーとなる。 このような斬新な発想で生まれたエディックスだったが、コンパクトカー層にはサイズが大きく、ミニバン層にとっては室内が狭いという中途半端なクルマになってしまい、1世代で姿を消したのである。