GPZ250R以来の水冷DOHC並列2気筒モデルでストリートスポーツ路線を進んできたカワサキが初めての本格的な250cc・4気筒を持つレーサーレプリカとして市場に投入したのがZXR250である。最後発の不利を補うべく、ラムエアシステムや倒立フロントフォークといった多くの最新技術が盛り込まれていた。まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)インプレ(佐藤康郎)Kawasaki ZXR250 1989年総排気量:249cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:740mm 乾燥重量:144kg発売当時価格:59万9000円250cc4気筒クラスに遂に参入、ジェントルにしてスピーディな快感車だったZXR250水冷並列2気筒DOHCエンジンを搭載するGPX250R-IIでライバルメーカーに勝負を挑んできたカワサキ。そんな、4ストローク250cc4気筒レーサーレプリカを持たない唯ーのメーカーだったカワサキが、ついにその看板を降ろす決心を固めた。そして、やるからには最高の1台をという目標を高く掲げたのである。このモーターサイクルに乗り終わって、こんなふうに感じたのは私だけではあるまい。それほどZXR250は完成度が高く、また、乗って面白いものだった。このZXR250に採用されるエンジンは完全新設計の水冷DOHC4バルブ並列4気筒。当初から、250ccだからといってあまり小型に仕上げる意思のなかった技術陣は、当然の重量増加に対して、低速からパワフルでありながら、オーバーラン時には20000rpmをも許容するエンジン性能でこれをカバーしようとした。カムシャフトの駆動は流行のカムギヤトレインではなくチェーンによるし、バルブ作動もオーソドックスな、タペットをカムシャフトが直接押すタイプを採用している。しかし、それらひとつひとつを、ほんの少しずつだがきっちりと詰めていった結果がこのエンジンであり、ある意味ではいかにもカワサキらしいと言えるのである。画像1: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)インプレ(佐藤康郎)フレームはアルミツインチューブを採用。ホイールベースは1370mm、キャスター24度、とこのあたりは一般的な構成だが、フロントフォークに大径正立でなく、USD(アップサイドダウン=倒立)をー気に採用してしまったのが快挙である。1989モデルのモトクロッサーに採用されて以来、近いうちにどこかのメーカーが公道にこれを持ち出すことは分かりきっていた。そのー番乗りがカワサキだったのだ。担当者のひとりも「よそさんが先に出すんじゃないかと気が気ではありませんでした」と話していたが、新し物好きであるバイカーズステーションとしては、大きな拍手を送りたい。サーキットを走っての印象はとてもよかった。このクラスとしては大きめのライディングポジション(と言ってもシート高75cmは十分に低い)は長身のライダーをも受けつけるし、やや重い車重も安定感向上に役立ちこそすれ、パワフルなエンジンのおかげで鈍重な印象からうまく逃げることができている。軽快でいながらしっとりと走るといったところか。一瞬気を抜いてフルスロットルにしたら転倒していた、などということはまずもってない特性の持ち主だ。画像2: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)インプレ(佐藤康郎)19000rpmからレッドゾーンとするエンジンは、さすがにそこまでみっちりパワーがあるわけではないが、18000rpm以上までは回す価値があるし、10000rpmを超えていれば、サーキットでもかなりの加速感を見せてくれた。公道ならかなり下の回転からでも十分に走ってくれるだろう。ZXR250には、ZXR250Rという兄弟車がある。これはSPレース仕様のベースとしてのモデルであり、前後ラジアルタイヤ(ノーマルはリヤのみで銘柄も異なる)、Φ32mmと2mm口径の大きいキャブレター、ダンピング調整できるリヤショックユニット、そして1~3速までがよりクロスしたミッションなどを備える。走ってみるとその差はかなりあった。まず、前輪に装着されたラジアルのせいかよりクイックにインに向くことができる。また、ストレートで明らかにRのほうが速いのも違いのひとつだ。これはクロスレシオのミッションによって、立ち上がり加速がよりスムーズにできるのが最大の理由だろうが、どうもそれだけではないような気がする。2mm大きいキャブレターが、いくばくかの仕事をこなしているにちがいない。しかし、だからと言ってRのほうが絶対によいバイクだ、などとは思わない。しっとりとしたハンドリングではむしろZXR250のほうが上だと思えるシーンもあるし、ミッションにしても一般的にはノーマルレシオのほうが使いやすいはずだ。レース出場を前提とするか、モーレツに峠を攻めるなら話は別だが、普通のライダーはRを買う必要はないと思う。それはともかく、このクラス初参入のカワサキがこれだけのモデルを送り出したからには、250cc4気筒クラスがもうー度ヒートするのは間違いのないところだろう。 カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説サイドビュー画像1: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説カワサキ初の250cc4気筒エンジンは小型軽量であり同時に高性能。水冷DOHC16バルブは当然として、バルブ駆動系の徹底した軽量化によって、18000rpmまではパワーが出続けるようなフィーリング。超高回転を多用するエンジンにもかかわらず、低中速域での性能も確保されている。これはN次コサインカムと呼ばれる、排気系の圧力波を効率よく利用、かつ吸気効率を向上させるプロファイルを持つカムシャフトの採用によるところが主だ。キャブレターは小型軽量のダウンドラフトタイプとし、ZX-4と同サイズのΦ30mmの大口径を持つ。エアクリーナーボックスは容量8LとこれもZX-4と同等のレベルで、クイックなレスポンスに貢献する。フレーム画像2: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説ステアリングヘッドとピボットパネルを剛性の高いアルミ鋳造パーツとし、その間を90×30mmの目の字断面アルミ押し出し材で結んだe-BOXフレームはピボット部を絞っている。画像3: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説スチール製のリヤサブフレームは、レース参戦やメンテナンス性を考慮してボルトオンタイプとする。フレームの重量は、ツインスパータイプのメインが9kg、サブが3kgの計12kgで、このクラスとしてはやや重めである。スイングアームのメインは80×35mmのアルミ角パイプ材だ。メーター画像4: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説メーターユニットは、左の速度計とインジケーターが別体で取り外せる3連タイプ。エンジン画像5: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説カワサキ初となる250cc4気筒エンジンは、前傾シリンダー+サイドカムチェーンを搭載したコンパクトな設計だ。水冷DOHC4バルブは当然として、バルブ挟み角を最小限にした燃焼室を採用するとともにバルブの駆動系を軽量化することで、クラス上限の45PSを15000rpmで発揮し、レッドゾーンは19000rpm。画像6: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説ー方、N次コサインカムと呼ばれる、排気の圧力波を効率よく利用し、かつ吸気効率を向上させるカムプロファイルによって、低中回転域での実用性能も十分に確保していた。キャブレター画像7: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説キャブレターは小型軽量のダウンドラフトタイプで、ZX-4と同じΦ30mmの大口径。本文で触れたラムエアシステムのK-RASは、左アンダーカウルに設けられたダクトで取り入れられた空気が、カウル裏側のダクトとジョイントパイプを経てエアクリーナーボックス内部を加圧する新機構。その圧力はバランスチューブによってキャブレターにもかけられ、空燃比を安定させる。フロントフォーク画像8: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説倒立フロントフォークはインナーチューブがΦ41mmでアウターチューブはΦ50mm。フォークトップには、無段階のプリロード調整機構と12段階に減衰力を調整するマイナスヘッドを備える。ZXR400も同サイズの倒立フォークを装着していたが、発売日は250のほうが6日早かったため、ZXR250の方が国産ロードスポーツ初を謳う。フロントブレーキ画像9: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説ブレーキは、フロントはピンスライド式同系2ピストンキャリパーとΦ300mmの大径フローティングディスクを左右に装着。リアブレーキ画像10: カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)各部装備・ディテール解説リヤブレーキは同径2ピストン片押しキャリパー+板厚5mmのΦ230mmソリッドディスク。カワサキ「ZXR250(ZX250A)」(1989年)主なスペック・当時価格まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。関連のおすすめ記事【絶版名車解説】「ZXR250」(1989年) - webオートバイ【比較インプレ】カワサキ「ZXR250」VS「Ninja250」- webオートバイ80年代のバイク 関連の記事一覧- webオートバイ