フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】 フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT) デイリースーパーカー フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 乗ってみたら大違い 次の冬季オリンピックはイタリアで開催される。その名も“ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック”だ。世界的な大都市ミラノと小さなスキーリゾート地、コルティナ・ダンペッツォ(および他の村)が織りなす奇跡のオペレーションであると開催前から話題を呼んでいる。世界規模のスポーツイベントの今後をうらなう新しい形態であるとも。 クルマ界でも似たようなことが起きて注目を浴びた。世界で最もブランド価値が高いといわれるフェラーリが、ブランドエントリーモデルというべき2+2のFRのV8クーペモデルを「ローマ」(大都会の名前)から「アマルフィ」(南の海岸リゾート村名)へとチェンジしたのだ。「ローマ スパイダー」(=まだ生産中)とアマルフィ クーペ(=これから本格化)が、現時点では同時にラインナップされている。 そういえばミラノもコルティナもクルマの名前になったことがある(ミラノにはミソがついてしまったけれど)。ミラノとコルティナという組み合わせを見て、マラネッロがローマからアマルフィを思いついた、のかもしれない。 どうしてアマルフィの試乗リポートをこんな話から始めたかというと、ビッグマイナーチェンジ級と思われた世代交代が、乗ってみれば、全くもってフルモデルチェンジ級であることを思い知らされたからだ。確かに街としてのローマとアマルフィくらい違っていた。ローマには“甘さ”と“厳しさ”が同居していたが、アマルフィには“温かさ”と“力強さ”があった。まるで双方の街のキャラクターそのままに。 基本路線から変えてある マラネッロのドルチェヴィータ物語第2章は大都会から田舎のリゾートへ。肝心の国際試乗会はアマルフィでは催されずポルトガルの同じく歴史ある港町ファロで開かれたが、それはわれわれメディアにとって走りやすい道を(しかも冬季に)プレスチームが選んでくれただけのこと。アマルフィに行きたかったなどという愚痴をこぼしてはいけない(私のことだ)。 かくいう私も実は、2025年7月のワールドプレミア直前にマラネッロでこの新型車を初見し、さまざまな事実(例えば開発コードやボディーサイズ、フロントスクリーンがローマと同じであることなど)から鑑みて「アマルフィはローマのビッグマイナーチェンジ版だ」と思ったクチだった。マラネッロのことだから同じ型式名を持つエンジン(F154)をはじめ、ほとんどのパートを設計し直したであろうことはハナから理解していたものの、それでも前述したように、ローマからその走りの路線を大きく変えることはないと予想していた。見た目と同様にちょっと力強く走ってくれるくらいだろうと……。 大いに覆されたのだ。 そういえば6月末のスニークプレビューで、開発責任者であるジャンマリア・フルジェンツィ氏がこう語っていたことを思い出す。 「走りだした瞬間にローマとの違いを体感すると思うよ」 まさに、そのとおりだった。 ファロ郊外の海岸に建つリゾートホテルのエントランスにずらりと並んだ、テーマカラー「ヴェルデ・コスティエラ」のアマルフィ。そのうちの一台をピックアップし走りだしてみれば、ホテルの敷地内ですでにローマとの違いをはっきりと感知したのである。 より優しく、おおらかに 「やっば!」 思わず声を出して、うなってしまった。前輪からステアリングホイールを通じて両腕に、シャシーからシートを介して尻と腰に、それぞれ伝わる動的フィールがローマとは全く異なっていたからだ。端的に言って“優しい”。大都会の冷たい美しさから、田舎のぬくもりあるたおやかさへ、包容力のある乗り味に変わった、とでも言おうか。シンプルに「これは乗りやすい」と思えた。 そう思った最大の要因はフロントタイヤから突っ張った感覚が消えたことにある。ローマでは前輪の存在が常に意識された。そのぶんフロントはナローでシビアに動くと感じたし、乗り心地も(その見た目とは裏腹に)ハードだと思ったものだった。アマルフィはその逆だ。前輪はよりワイドなスタンスになったように錯覚するほど、しなやかに動く。乗り心地にもコンフォートさが増した。一点、試乗車のシートだけは“昔ながらのイタリア車”で、クッションが足りないと思ったが(「12チリンドリ」ではそんなふうに思わなかった)。 試乗後にプロダクトマーケティングの車種担当に聞いたところでは、ローマのユーザーからのフィードバックはもとより、開発陣としてもさらに広範囲の新規カスタマーを迎えることができるよう、乗り味のレンジをよりワイドにしたかったらしい。ドライブモード「マネッティーノ」を駆使すれば、快適なグラントゥーリズモから強力なスポーツカーまで、さまざまなキャラクターを楽しむことができるというわけである。 走りの楽しさも増している 果たして、走りだした瞬間から自信をもってドライブできたせいか、半時間後にすいたカントリーロードに出たころには、まだ雨が少し残っていたにもかかわらず、かなりのペースで安心してドライブを楽しむことができた。 勘所をほとんど新設計したという3.9リッターV8ツインターボのフラットプレーン・ウエットサンプエンジンは、より自然なレスポンスでスムーズに力強さを後輪へと伝える。トランスアクスル式のトランスミッションはもちろん8段DCTで、その変速の速さと滑らかさに、むしろもう少し段をつけたほうが印象的なんじゃないかと思ったほどだ。 高回転域におけるサウンドも、ボリュームこそやや控えめとは思ったものの、音質からはターボエンジンに特有の“くぐもり”が減り、自然吸気エンジンほどではないにせよ、乾いて聞こえるようになった。クルマ運転好きの脳を刺激するには十分だ。 ハンドリング性能もローマをはっきりと超えてきた。というよりも前輪の突っ張りが消えたことで、ドライバーが自信をもって操作できる領域が増えたから、かもしれない。スポーツやレースモードでの理性的なアジリティーに感服する。 最も感動的だったのは制動フィールだった。「296」シリーズ以降の新型モデルに使われているブレーキ・バイ・ワイアと6Dセンサー+ABS Evoの最新システムが功を奏している。ファーストタッチからペダルコントロール、そしてハードなブレーキングまで理想的にまとめられた。それゆえドライビングファンは乗れば乗るほどに増していく。 全体的にみて12チリンドリ開発の知見が十分に生かされていたのだと思う。新型車アマルフィはデイリースーパーカーの雄として、カスタマーからも、そして新規ユーザーからも高く評価されることになるに違いない。 (文=西川 淳/写真=フェラーリ/編集=関 顕也) テスト車のデータ フェラーリ・アマルフィ ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1974×1301mm ホイールベース:2670mm 車重:1470kg(乾燥重量) 駆動方式:FR エンジン:3.9リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ トランスミッション:8段AT 最高出力:640PS(471kW)/7500rpm 最大トルク:760N・m(77.5kgf・m)/3000-5750rpm タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y/(後)285/35ZR20 104Y(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ) 燃費:11.2リッター/100km(約8.9km/リッター、WLTP複合モード) 価格:3418万円/テスト車=--円 ※日本国内における価格 オプション装備:-- テスト車の年式:2025年型 テスト開始時の走行距離:--km テスト形態:ロードインプレッション 走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--) テスト距離:--km 使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン) 参考燃費:--km/リッター