カワサキ「ZZ-R1100」の系譜|300km/h時代の到来を告げる世界最速グランツーリスモ!【バイクの歴史】
1990年に初代が登場した「ZZ-R1100(ZX-11)」。この記事では同車と、その前後に登場したカワサキ製スポーツツアラーについて紹介しよう。
まとめ:オートバイ編集部
カワサキ「ZZ-R1100」の特徴

Kawasaki ZZ-R1100(ZX-11) 1990年・輸出車総排気量:1052cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:780mm 乾燥重量:228kg
メガスポーツの嚆矢は使い勝手も抜群だった
GPZ900Rで250km/hの世界に足を踏み入れ、世界最速の座を掴んだカワサキだったが、1986年にはリッターバイクを求める欧米の声に応えてGPZ1000RXを、1988年にはZX-10も投入した。
しかし、1990年代が近づくと、欧州などではこうした超高性能車に対する最高速度や出力の規制などを求める声が高まりつつあった。
そんな中で1990年に産声を上げたのがこのZZ-R1100だった。「世界最速」にこだわるカワサキの意地と情熱が詰まった意欲作である。
エンジンはZX-10用のボアを拡大した1052cc。これにラムエアシステムを組み合わせ、147PSという未曽有の大パワーを獲得。車体もこれに見合った高剛性のアルミペリメターフレームを採用、市販車でありながら300km/hの世界に肉迫できる卓越した高速安定性とともに、ワインディングでスーパースポーツを追い回せるほどの軽快なフットワークも両立。
世界中で爆発的なヒットとなり、後のメガスポーツブームのきっかけを作る存在となったのである。
カワサキ「ZZ-R1100」の注目ポイント

撮影車両は北米仕様のZX-11。デザインは前モデルのZX-10からの流れを感じさせるものだったが、メカニズムはまるで別物だった。

最高速の向上に不可欠な、優れた空力特性を実現するため、ボディワークは空力特性を考慮した滑らかなものとなっている。

空気の流れを意識した、フラッシュサーフェスデザインのフロントマスク。ヘッドライト下には世界初となるラムエアシステムの吸気口が見える。

インパネは素っ気ないほど実用重視。ただフルスケール200mph(320km/h)の速度計が、ZZ-Rがただ者ではないことを静かに物語っていた。

ZX-10のボアを2mm拡大し、カムやコンロッドを新作、バルブも大径化。これにラムエアを組み合わせて147PSをたたき出す。

ZX-10の構成を継承するアルミペリメターフレームは、ツインチューブにスチール製ダウンチューブを締結して高剛性を確保。

フロントフォークはΦ43mmの正立。十分な制動力を求め、ブレーキはΦ320mmのダブルディスクに4ポットキャリパーの組み合わせ。

極太のスイングアームはフレームのメインチューブと同様に五角形断面のアルミ製。チェーン調整はエキセントリックカム式。

超高速でのロングランも視野に入れたシートは肉厚で快適。テールカウル左右には荷掛け用のバンジーフックも備え、実用性も高くなっていた。

左右のウインカーを張り出したボディにビルトインした、独特なデザインのテールまわり。まるでウイングのようにも見える形状もZZ-Rの特徴。
カワサキ「ZZ-R1100」の系譜
GPZ1000RX/1986年

輸出車
GPZ900R用エンジンのボア、ストロークを拡大した997ccエンジンをダブルクレードルフレームに搭載する大型スポーツツアラー。
ZX-10/1988年

輸出車
GPZ1000RX用をベースにヘッドを新作、吸気をダウンドラフト化したエンジンをアルミe-BOXフレームに搭載。最高速も270km/hに達した。
ZZ-R1100(C)/1990年

輸出車
1989年の東京モーターショーでデビューを果たしたZX-10の後継モデル。ラムエア吸気も取り入れたエンジンはムービングパーツの大半を新作とした1052ccの4気筒で、これをアルミツインチューブとスチールアンダーチューブを組み合わせたペリメターフレームに搭載する。空力特性に優れるデザインのカウルとの組み合わせで、最高速度は300km/hに迫る好記録を達成、世界中で高く評価された。
ZZ-R1100(D)/1993年

輸出車
C型をさらに発展させたモデル。アルミプレス材をメインスパー部に用いた新設計フレームを採用、ラムエア口は2本になった。
ZZR1200/2002年

輸出車
ZRX1200の1164ccエンジンを新設計のアルミペリメターフレームに搭載。落ち着いたルックスで人気は思うように伸びなかった。
NINJA ZX-12R(A)/2000年

輸出車
アルミモノコックフレームに新設計の1199ccエンジンを搭載。最高出力は181PSに達し、世界最速の座をハヤブサと争った。
NINJA ZX-12R(B)/2002年

輸出車
ビッグスーパースポーツ的な走りのキャラクターを前面に出し、スポーティな外装デザインに変更。主要諸元に変更はない。
ZZR1400/2006年

輸出車
完全新設計の1352ccエンジンをアルミモノコックフレームに搭載。ラムエア加圧時のパワーはついに200PSに到達した。
NINJA ZX-14/2008年

輸出車
フレアパターンをあしらったツヤ消しブラックの車体に、メタリックレッド塗装のフレームを組み合わせた、北米仕様のみの限定車。
NINJA ZX-14R/2012年

輸出車
ZZR1400の正常進化モデル。エンジンは排気量を拡大し、ラムエア加圧なしでついに200PSを達成。ボディデザインも洗練された。
NINJA ZX-14R ABS OHLINS EDITION/2014年

輸出車
リアにオーリンズ製TTX39ショックを装備した上級仕様。豪州と東南アジア向けにはフレアパターン入りのホワイトの車体色も登場。
NINJA ZX-14R ABS/2016年

輸出車
オーリンズ製リアショックとブレンボ製ラジアルマウントキャリパーを標準装備した「ハイグレード」仕様が登場。塗装も専用色。
NINJA ZX-14R 30th Anniversary Edition/2016年

輸出車
ニンジャ30周年を記念したスペシャルエディション。初代ニンジャ・GPZ900Rをオマージしたグラフィックを採用する。
NINJA ZX-14R HIGH GRADE/2020年

輸出車
排出ガス規制の関係もあり、国内で購入できるファイナルモデルとなった。専用グラフィック入りのホワイトとグリーンの2色が用意された。
NINJA ZX-14R 40th Anniversary Edition/2024年

輸出車
ZX-14Rが継続販売されている北米仕様のみにラインアップされたニンジャ40周年記念車。ZX-4RRやZX-10Rと同様のZXRカラーを採用。
まとめ:オートバイ編集部
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