速さの象徴ともいうべき存在がスポーツカー。しかし、世の中には速さをウリにしていないにもかかわらず、評価と人気を得ているスポーツカーも少なからずある。今回は、そんな“遅い名車”をピックアップして見ていきたい。【画像ギャラリー】速さでは語れない名車たちをもっと見る(17枚)文:長谷川 敦/写真:ホンダ、ロータス、Newspress UK、CarWp.com見た目はスーパーカー、中身は……?●デロリアン DMC-12デロリアン DMC-12。デロリアンはアメリカのメーカーだが、ボディや車体のデザインはヨーロッパ主導で、製造も北アイルランドの工場で行われていた 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでタイムマシンとして活躍したことで一躍有名になったのが、アメリカのデロリアンモーターカンパニー(DMC)が販売したスポーツカーのDMC-12。 デロリアンの車名でも呼ばれるこのクルマは、元ゼネラルモーターズのジョン・デロリアンが1974年に創業したDMCによって開発され、1981年に販売がスタートした。 ボディのデザインはイタリアの巨匠ジョルジエット・ジウジアーロ、車体開発はイギリスのロータスが担当するという豪華な布陣で生み出されたDMC-12は、期待に違わぬ美しいデザインとともに登場するや否や、多数のオーダーが殺到した。 DMC-12の特徴のひとつが無塗装のステンレンス製ボディで、ガルウイング式のドアと合わせて他のモデルとは異なるルックスもタイムマシン感を高めていた。 エンジンはルノー製2.7リッターV6をベースに開発された独自タイプを搭載していたが、そこまでパワフルなものではなく、実際に高額なスポーツカーとしてはけして速いモデルではなかった。 DMCは新興メーカーゆえに製造品質にバラつきがあり、さらには経営上の問題にも直面して1982年には破産するという悲劇的な結末を辿った。 だが、DMC-12はその短い製造期間と独自性、そして映画での活躍によって現在でも高い人気を保っている。●三菱自動車 GTO三菱自動車 GTO。1990年登場のモデルだが、同車のセダン・ディアマンテのコンポーネンツを流用しているせいか大柄で「重戦車」というあだ名もあった 1990年に三菱自動車からリリースされたGTOは、当時では珍しい2+2の4WDスポーツカーで、その見た目が1970年代に日本でブームになったスーパーカーを彷彿とさせることでも注目を集めた。 GTOのメインターゲットは北米であり、スポーツカーならではのキビキビ感より長く広い道を安定して巡行する性能が重視されていた。 そのための4WD機構なのだが、駆動タイヤ数が多いことに加えて4WS(4輪操舵)システムも搭載されていたことが重量増加を招き、GTOの車重はツインターボモデルで1700kgに達した。 サイズも大柄で、GTOの全幅は1840mmあり、全長もデビュー時で4555mmと長かった。 これらの理由から「重戦車」という、スポーツカーとしては残念なニックネームを与えられたGTOは、その後の改良によって性能向上を果たすが、後継車を残さずに2001年に生産を終了している。 ハイテク機構を装備しながら販売価格が比較的安価(初期のツインターボモデルで398万5000円)で、一部のマニアには支持されたが、どうしても「重戦車」のイメージを払拭できなかった。コーナリングこそ命!●ホンダ インテグラホンダ インテグラ。写真はインテグラ クーペ ZXiバージョンSで1991年のモデル。インテグラでは通算2代目となり、この世代からクイントの名称が廃止された 1985年にデビューしたホンダのスポーティコンパクトカー・インテグラは、1980年登場のハッチバック車・クイントの後継車種であり、初代モデルにはクイントインテグラの名称が与えられていた。 後にインテグラは高性能バージョンのタイプRで有名になるが、実は“無印”のインテグラもコーナリング性能の高さが評価されたクルマだった。 その走りは1989年発売の2代目で磨きがかかり、高剛性ボディと適切な前後重量配分、そしてファインチューンされた足回りによってFF車であることを感じさせないシャープなハンドリング特性を発揮した。 ホンダの誇る可変バルブタイミングシステムのVTECを初めて搭載したのもこのインテグラであり、高回転まで気持ちよく吹け上がる特性は走りを重視するユーザーにも歓迎された。 インテグラシリーズは4代目が2006年まで生産され、シリーズの歴史はこれで終了とも思われたが、なんと2021年に中国でインテグラの車名が復活した。 とはいえ、この新生インテグラはシビックセダンの中国版であり、4代目までのインテグラとは系統の異なるクルマといえる。 強力なエンジンを搭載するタイプR仕様のインテグラは名実ともに速いスポーツカーであったが、無印インテグラにも十分な魅力があった。●ロータス ヨーロッパ日本ではコミック「サーキットの狼」でも有名になったロータス ヨーロッパ。高いコーナリング性能が持ち味だが、独特なボディフォルムにも人気がある 一定以上の年齢のファンには、コーナリングマシンと聞いてこのロータス ヨーロッパをイメージする人も多いだろう。 F1でもその名を知られたイギリスのロータスが1966年に販売を開始したヨーロッパは、強固なY字型フレームに軽量なFRP(強化プラスチック)製ボディを搭載するという、当時のレースカーと同じ思想で作られた2座席ミッドシップスポーツカー。 登場当初のヨーロッパにはルノー製1.5リッター直4型OHCエンジンが搭載されていたが、このエンジンの最高出力は85psと、当時の基準で考えてもパワフルなものではなかった。 そのためヨーロッパの動力性能ははっきりいって控えめなものだったが、ひとたびコーナーに入ると無類のパフォーマンスを披露してみせた。 1974年にはDOHCエンジンモデルが登場してパワーアップを果たすが、それでも最高出力は105psどまりであり、直線よりもコーナー重視の性格は変わらなかった。見た目に反した気骨あるスポーツ(?)カー●シトロエン 2CVシトロエン 2CV。42年間にわたる長い販売期間中に多少の変更はあったものの、基本デザインはほとんど変わることがなかった。写真は1981年のモデル 1948年のパリサロン(モーターショー)で、地元フランスのシトロエンから風変わりなクルマが発表された。 2CV(フランス風の発音で書くならドゥ・シュヴォー)の名を持つそのモデルは、まずは奇抜なデザインに注目が集まり「みにくいアヒルの子」や「乳母車」などと揶揄されることもあったが、実用性に振り切ったその内容は、ファニーな見た目とは裏腹に骨太なものだった。 駆動方式は当時では珍しいFFであり、その強みを生かして車体サイズのわりにゆとりのある室内空間を確保するとともに、実は農業国でもあるフランスの農業従事者が便利に使えるような工夫が各所に盛り込まれていた。 実際に2CVの開発コンセプトは「大人4人が乗れて50㎏のジャガイモまたは樽を載せられること、生卵を載せて不整の農道を走っても卵が割れないこと、燃費に優れていること、そして安価であること」というもので、それを実現した2CVは予想を上回る大ヒットを記録した。 初期モデルのエンジンは375cc水平対向2気筒で最高出力も9psだったが、車体が軽量なこともあって、荷物を載せていない時には思いのほかスポーティな走行特性を発揮し、運転の楽しさも感じさせてくれた。 ベストセラー車の2CVは、改良を重ねて最終的に1990年まで生産が続けられるロングセラーにもなった。 生産台数も多く、現在でも2CVを愛用しているファンも少なくない。