2025年10月21日 トヨタは、新型車「ランドクルーザー FJ」の誕生を世界に向けて発信した。世界中で70数年にわたり、人々の命や暮らしを支え続けてきたアイコニックな存在が、新たなシリーズを展開、伝統を受け継ぎながらもかつて見たことのない「ランクルワールド」の扉を開く。(写真:佐藤正巳)270mmもホイールベースを短縮。悪路走破性、機動性が違う2023年8月、新型ランドクルーザー250のワールドプレミアの壇上で、サイモン・ハンフリーズCBO(チーフ ブランディングオフィサー)は250が、新たな(ランクルという)伝説の始まりであることを明らかにしていた。生来のタフネスに「自分らしく楽しむ自由」という価値を、より多くの人々に届けるためのサイズ、形、機能を備える。今回、ワールドプレミアを果たした新型車「ランドクルーザー FJ」は、そんな伝説の新章を、さらに強烈に印象付ける存在となりそうだ。フラッグシップ「300シリーズ」、ヘビーデューティモデル「70シリーズ」、そして中核となる「250シリーズ」に次ぐ第四のシリーズが提案するのは、自分らしく楽しむ自由という新たな価値。「Freedom&Joy」をコンセプトに、より多くの人々の生活に密着し、その安心を支えながら、クルマに乗る日々を楽しむ悦びを提案している。お披露目されたプロトタイプのエクステリアデザインは、ランドクルーザーらしさが溢れるスクエアなシルエットが特徴だ。一見して優れた居住性、積載性を印象付けるとともに、力強いバンパーとフェンダーの張り出し感とあいまって、圧倒的なタフネスを強調している。全長4575×全幅1855×全高1960mm。ホイールベースは2580mmとなる。リアオーバーハングの短さは、いかにも悪路での走破性が高そうだ。(海外カスタマイズ仕様・プロトタイプ)250と比べると全長は350mm、全幅も125mm狭い(それぞれ4575×1855mm)。一方で全高は25~35mm高められている(1960mm)。モチーフはサイコロ。直球勝負のボックスフォルムは同時に無駄のない、引き締まった筋肉質な塊をイメージさせていた。コンパクトなボディサイズとともに、250比で270mmも短縮されたホイールベースが、ランクルシリーズ屈指の機動性を実現する。最小回転半径はわずか5.5m。70シリーズ同等のホイールアーティキュレーション(路面の凹凸に対する追従性)は、まさにその証しだ。ちなみにリアハッチは横開き。そのためスペアタイヤは、70と同様に背面キャリアに搭載するタイプを採用している。リアハッチが縦に開く250のようにリアボディ下に吊り下げて収納するタイプに対して、デパーチャーアングルのゆとりが違ってくるそうだ。さらに床下へのブレース追加やボディ自体の高剛性化とあいまって、FJはコンパクトなボディながら優れた悪路走破性と、頼りがいのある操縦安定性を両立しているという。横開きのリアハッチを採用。写真はカスタマイズの楽しさを提案する「海外カスタマイズ仕様」のプロトタイプだが、アウトドア用品を取り付けられるモールパネルなど、使い方に応じた装備が用意されている。自分好みにアレンジしたくなるカーゴスペースだ。優れた積載性を予感させる、スクエアなシルエット。けっして無骨ではなく、どこか未来的な感性も漂わせている。スペアタイヤは背面キャリアに搭載されているため、リアバンパー下にゆとりがある。カスタマイズの楽しさが、ランクルの世界観をさらに拡げるFJプロトタイプのインテリアは、水平方向に積み重ねられた直線的なラインが、質実剛健ぶりを強く実感させるデザイン。基本的な造形は、250の流れを汲んでいるように思えた。デザイン的には250シリーズの系譜を汲む、機能性に富んだコクピット。視点移動が少なくなるように表示や素操作系の機能はそれぞれに集約されている。水平基調ですっきりとしたレイアウトは、オフロード走行時などでも瞬時に認知、操作を可能にするための必然だ。ADASは、予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を採用する。悪路でも路面の状態を確認しやすくするように見下ろしやすさにこだわって、ベルトラインが低く設計されている。前方視界は非常に見通しが良い。リアシートは広々!とはいかないまでも、たっぷりとした肩口のゆとりや十二分な足下スペースの確保など、しっかり5人で移動できる空間性能を実現している。とくに低く設計されたカウルからインストルメント上面に至るフラットな造形は、シンプルだからこそ力感に富み、同時に前方の見通しを遮ることがない。どんな状況でも適切な視界を確保できることで、結果的にさまざまなシーンでも安心してクルマを操ることができることだろう。室内は上下方向にゆとりが確保されていることもあって居心地はよさどう。ほどよいパーソナル感も感じさせる。後席足下のスペースも十分確保されているので5人乗車での移動も快適に過ごせそうだ。パワートレーンは、今のところ2TR-FE型 2.7L直4ガソリンエンジンのみの設定で、6速ATをコンビする。最高出力は163ps、最大トルクは246Nmを発生、駆動方式はもちろんパートタイム4WDとなる。プロトタイプに搭載されていたのは、2.7Lの直4ユニット。最高出力163ps/最大トルク246Nmを発生する。基本的なパワースペックは250に搭載される仕様と同じだが、ボディの小ささによる軽量化とあいまって、活発な走りが期待できる。燃費面でも、より優れた数値を実現しているかもしれない。本格的な悪路走破性を備えつつもコンパクトならではの気軽さを備えたFJには、さまざまなカスタマイズも似合いそうだ。一般に向けて実車が公開されるジャパン モビリティ ショー2025(2025年10月31日~11月9日まで一般公開)では、「海外向けカスタマイズ」のプロトタイプとして、もうひとつの「個性」が実車で提案されている。FJの機動性をさらに高める「LANDHOPPER」に特別試乗「海外カスタマイズ仕様」でひときわ目立つのは、丸目型のヘッドランプを装着した顔立ちだろう。荷室空間の多才ぶりをさらに向上させる、アウトドア用品などを取り付けられるモールパネルも採用されている。シュノーケルなどは、「どこへでも行く」を標榜するランクルにこそふさわしいアイテムと言えるかもしれない。オフロードスタイルを極めた「海外カスタマイズ仕様」のプロトタイプもJMSに出品される。シュノーケルは、法規制や技術的課題をクリアする必要があるという。もっとも、天災級の豪雨で水没するケースが多くなっている昨今、カッコだけでなく機能的にも日本でもつけておきたい装備の筆頭かもしれない。カスタマイズに対するニーズについては地域ごとに異なるため、この仕様がそのまま日本市場に導入されるかどうかははっきりしていない。一方で、FJの「機動性」を高め、活動範囲をさらに広げてくれそうな「乗り物」が、クルマ自体の開発と並行して進められている。それが、電動パーソナルモビリティ「LAND HOPPER(ランドホッパー)」だ。ボディセンターやハンドル類を折りたたむと、FJのラゲージスペースにすっぽりと収まるサイズで企画されるなど、FJとの強い絆を意識させる。FJシリーズと並行して開発が進められてきた、フル電動パーソナルモビリティ「ランドホッパー」。削り出しのパーツが、シンプルに「機能美」をアピールしている。折りたたむと、FJのカーゴスペースにすっぽり収まる。アクセルはハンドル右手、ブレーキは左右に前後用が配される。つまりはオートバイと同じ操作感覚ということで、現在二輪には乗っていない筆者でもすぐに慣れて軽快に操ることができた。ランクルでたどり着いたその先のトレイルなど、オフロードツーリングの楽しさが体感できるという。ボディ中央のフレームには着脱式のリチウムイオンバッテリーを搭載。最高速度20km/hの設定は、特定原動機付き自転車の区分に当たる。ナンバープレートの取得と自賠責保険への加入は必須だが、16歳以上であれば運転免許は不要だ。実際に試乗させてもらう機会があったのだが、ダイレクトなモーターの立ち上がりが気持ち良い、フロント2輪ならではの優れた安定感と相まって、キビキビと走りまわることができる。レジャーエリアでの未舗装の小道などでも、アクティビティ感覚での移動の楽しさを気軽に味わうことができそうだ。高い信頼性と耐久性など、徹底的に「ランクルネス」が磨き込まれたランドクルーザーFJは、新しい「ランクルファン」層を開拓することになるかもしれない。日本国内での正式な発売は、2026年年央ごろを予定している。