なぜトヨタから「センチュリー」独立? ブランド化の背景とは 2025年10月29日にトヨタは新たなブランドとして「センチュリー」を発表。同時にこれまでのセダン・SUVに加えて新たなクーペとなる「センチュリークーペ」を世界初公開しました。 これまでトヨタ自動車には、トヨタ・レクサス・GRという3つのブランドがありましたが、新たに最上位ブランドとしてセンチュリーが確立されます。 では、センチュリーとはどのようなものなのか。そして車名からブランドに独立させた背景とはどのようなものなのでしょうか。トヨタの豊田章男会長の話を交えて、解説していきます。センチュリーがブランドとして独立! その背景は?【画像】これは新たな「センチュリークーペ」です! 画像を見る!(22枚) トヨタは1967年にセンチュリーを世に送り出して以降、50年以上に渡って進化・継承してきました。 ちなみにセンチュリーと言うネーミングはトヨタグループの創設者・豊田佐吉生誕100年に由来しています。 フルラインかつグローバルでビジネスを行なうトヨタには数多くのラインアップがありますが、その中でもセンチュリーは別格の存在です。 その1つが「全ての人に移動の自由」のトヨタの中で、唯一「乗る人を選ぶ」存在である事。もう1つは開発に豊田家が強く関わっている事です。 センチュリーは初代からトヨタブランドで発売されていますが、上記の話を踏まえると、本当はトヨ“ダ”・センチュリーであるべきだったのかなと。 そんなセンチュリーは初代以降セダンボディでしたが、2023年に新たなボディタイプ(センチュリーSUV)が追加設定されました。 豊田章男氏は「私の中でのセンチュリーは『名誉会長(豊田章一郎氏)のクルマ』と言う認識です。そんな中、『僕が乗れるセンチュリーって何?』と言う回答がセンチュリーSUVです。つまり、アルファード/ヴェルファイアがショーファーカーとしての市民権を得た現在、『人と同じでは嫌』と言うユーザーに向けての提案です」と語っています。トヨタの最高峰モデル「センチュリー」から「センチュリー」として独立ブランド化された(画像は豊田章男会長とセンチュリーセダン・センチュリーSUV) そして、今回の「ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)」ではセダン、SUVに続く第3のモデルとして「センチュリークーペ」のお披露目に加えて、トヨタブランドから独立したハイエンドブランドになることを発表。 そのブランドコンセプトは「One of One」です。つまり、トヨタでもレクサスでもない“特別”かつ“唯一”の存在になる事を意味しています。 更にモノづくりの面で言うと、大量生産を得意とするトヨタが最も苦手な「少量かつフルオーダーメイド」への挑戦でもあります。 実は豊田章男氏はセンチュリーSUV登場時に、これを匂わせる話を残していました。「恐らくセンチュリーで挑戦する人は、誰もいないと思います。 最初は私だって『このクルマは挑戦できない』と思っていたくらいですので。でも、センチュリーをリブランディングしてプロモートさせないと、生き残る事はできないと思っています」 更に2025年4月に行なわれた上海モーターショーではトヨタ/レクサスとは別に、センチュリーのみの独立したブースが用意されていました。 通常モーターショーは誰でもブースに入ることができますが、ここだけは海外のハイエンドブランドと同じく、選ばれた人しか入れない空間になっていました。今思うと、今回のプロローグだったのかなと。 そんなセンチュリーのブランド化ですが、その背景について豊田章男氏は次のように話しています。「センチュリーSUVが出て以降、色々考えることがありました。 例えばアメリカのディーラー大会でセンチュリーを紹介する時やモーターショーでの展示のする時も、明確な居場所がハッキリしておらず、トヨタブースの中にポツンと1台あることもありました。 要するにトヨタの商品とは違う存在でありがらも、でもトヨタ・センチュリーと名前がついてるよねと。 そこで解ったのは『やはりセンチュリーはブランドじゃないか』と言うことです。ブランドとして、センチュリーの居場所を商品群の中でしっかりさせること。 それを出発点に、これからのセンチュリーを考えたいなと思ってます」センチュリーに加わるクーペはどのようなモデル? そんなセンチュリーに加わるクーペはどのようなモデルなのでしょうか。 多くの人が「クーペ=パーソナル」のイメージを持つでしょう。筆者(山本シンヤ)も2025年10月13日に公開されたトヨタイムズの生放送を見た時は、「センチュリーもフォーマルからの脱却を目指すのかな?」と思いました。 しかしトヨタのCBO(チーフブランディングオフィサー)のサイモン・ハンフリーズ氏に聞くと次のように話してくれました。「クーペも他のセンチュリーと同じくショーファーカーですよ。 要するにセダンは“タキシード”、SUVは“ビジネススーツ”、そしてクーペは“パーティドレス”のようなイメージですね。 どれもフォーマルですが用途に合わせた着こなしが大事です。つまり、トヨタ/レクサスのように1台で全てを賄うのではなく、役割に応じて使い分けると言うわけです」新たにお披露目された「センチュリークーペ」とは? 具体的な特徴を解説 エクステリアはフレームレスのグリルに上下2段のLEDヘッドライトのフロントマスク、ロングノーズショートデッキのプロポーション(セダンともSUVとも異なる)。 さらに変則観音開き(フロントはスライド式、リアはスイング式)の助手席ドア(運転席側は通常ドア)、大径のホイール、リアウィンドウレスのリア周りなど、セダン/SUVと共通イメージを持たせつつも独自のデザインに仕上げられています。 ちなみにボディカラーは鮮烈なオレンジですが、サイモン氏に聞くと「鳳凰復活の“炎”をイメージしました」と教えてくれました。ボディカラーは鮮烈なオレンジ。イメージは「鳳凰復活の“炎”」だという インテリアは助手席が超ロングスライド式のフルリクライニング式で、リアウィンドウレスも相まってクーペでありながら足元や頭上を気にしない快適空間を実現しています。 ちなみに運転席は隔壁ではなく織物をオマージュしたモノでカバーされており、お互い見えすぎず見えなさすぎずと運転手とショーファーの家族のような関係性が考慮されています。ちなみにシート地は“西陣”と歴代センチュリーの歴史を継承しています。 パワートレインやプラットフォームに関してはノーアナウンス。開発陣は「皆さんで想像してみてください」とニコニコするのみ。 筆者はボンネットの二つのアウトレット、そしてフロントアクスルto Aピラーの関係性から、筆者はFR縦置きレイアウト……それも「GR GT」や「レクサススポーツコンセプト」と同じプラットフォームを活用しているのではないかと大胆に予想します。 上記の2台よりも全高は明らかに高く、床下にバッテリーを搭載できる余裕もありそうなので、V8ツインターボ+モーターのPHEVだったらセンチュリーらしい“静”とセンチュリーらしからぬ“動”も楽しめると思います。 現時点では純粋なコンセプトモデルですが、開発陣は「量産するつもりで開発を進めている」と言います。クーペも他のセンチュリーと同じくショーファーカーだという ちなみにクーペのお披露目に合わせて、セダン(GRMN)はフロント周りに手が入っており共通イメージをより高めています。 歴代モデルが築き上げてきた“伝統”と“品格”を受け継ぎながらも、新たな挑戦をスタートさせるセンチュリー。 クルマからブランドへの変革は、日本の匠のものづくり、そしてクルマづくりを世界に伝える“決意表明”と言ってもいいのかもしれません。「生まれ変わる事でしか、歴史は紡げない」「日本でしか作れないモノがある」「この世界にひとつを、この国から」【画像】これは新たな「センチュリークーペ」です! 画像を見る!【画像】めちゃ豪華! これが「センチュリークーペの内装」です。画像を見る!新車235万円! トヨタ新「ステーションワゴン」発表! 高級感スゴイ「超豪華レトロ内装」がカッコイイ!