ミッドシップ4WDの「GRヤリスMコンセプト」に搭載された新開発の直列4気筒2.0リッターターボ「G20E型」。出力は400馬力以上であることがトヨタから明かされた10月25日~26日の2日間にわたってスーパー耐久第6戦岡山が岡山国際サーキットで開催されている。このS耐で話題となっているのが、トヨタが新開発したミッドシップ4WDの新型車「GRヤリスMコンセプト」。このクルマは、GRヤリスをベースに、新開発の直列4気筒2.0リッターターボ「G20型」をリアミッドシップに搭載。駆動方式も4WDを採用することでGRヤリスよりも高出力となったパワーを、4輪全体に伝えようとしている。 このGRヤリスMコンセプトや新型G20型エンジンに関する質疑応答が岡山国際サーキットで行なわれた。 質疑応答に応えるTOYOTA GAZOO Racing Company プレジデント 高橋智也氏(左から2番目)、同 S耐全体リーダー 江口直登氏(左から3番目)、トヨタ自動車株式会社 パワートレーンカンパニー ICE開発部 スポーツエンジン開発室長 坂井光人氏(左から1番目)TOYOTA GAZOO Racing側の出席者は、TOYOTA GAZOO Racing Company プレジデントの高橋智也氏、同 S耐全体リーダー 江口直登氏、トヨタ自動車 パワートレーンカンパニー ICE開発部 スポーツエンジン開発室長 坂井光人氏。GRヤリスMコンセプトや新型エンジンに対する質問が相次いだが、これまで分からなかったことも明らかになってきた。 とくに新型G20型エンジンについては400馬力と言われてきたが、坂井氏は「400馬力以上」と明言。400馬力を超える出力での挑戦になっているという。 また、G型エンジンという名称についても、とくにモリゾウ選手こと豊田章男会長が開発に関わっているエンジンが「Gモジュール」と呼ばれているそうで、GRヤリスに搭載されているG16E-GTS型がその代表的なもの。このG16E-GTS型は、トヨタの高効率エンジンとして知られているダイナミックフォースエンジン「A25A-FKS型」エンジンで採用されている87.5mmのボアを持ち、103.4mmのストロークで駆動。ボア×ストローク比は約1.2となるロングストロークエンジンで、熱効率は40%を達成。ハイブリッドと組み合わされるミラーサイクル版の「A25A-FXS型」では熱効率41%に達している。 岡山国際サーキットを走る「GRヤリスMコンセプト」その高効率エンジンのハイパワー版であるG16E-GTS型エンジンは、87.5m×89.7mmのボアストロークを採用。一部改良を繰り返して最高出力を224kW(304PS)/6500rpm、最大トルクを400Nm(40.8kgf・m)/3250~4600rpmまで高めている。1.6リッターで304馬力を達成していることになる。 そのことから、この2.0リッター4気筒のG20E型エンジンでは、出力は1気筒増えて400馬力がうわさされてきた。今回、その出力については公式に400馬力以上が明言された形だ。もちろん、このエンジンは現代的なターボエンジンのため、出力・トルクについては柔軟性の高い設計がされているという。 また、縦置きも考慮に入れたエンジンとしているため、縦置き、具体的にはFRなどのレイアウトでの登場も期待されるものになっている。 G型という話に戻れば、このエンジンもGモジュールと呼ばれるエンジンの一環であるとする。G型エンジンと言えば、エンジン好きな人にとってはプリンス自動車工業の「G7型」エンジンや、いすゞ自動車の「G180型」エンジンを思い浮かべる人が多いと思うが、トヨタのエンジンもスポーツ系では「7M-G型」「18R-G型」「4A-G型」「1G-G型」などGの付いているものが多い。そういったことからもGと付いているのかもしれない。 また、気になるのはGモジュールと呼ばれ、モジュール化を前提に作られている点だ。トヨタ関連ではグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで走った謎のクルマが話題となっており、V型8気筒エンジン・クロスプレーンのような音がしたのも記憶に新しいところ。これが従来のV型エンジンベースなのか、新しいGモジュール系なのかもいずれ明らかになるところだろう。 気になるボア×ストロークについて坂井氏は、「(ダイナミックフォースエンジンより)ショートストローク」という。要するに、ボア×ストローク比1.2よりショートストロークとなっており、ショートストロークとすることで、ボア×ストローク87.5×99.5mmの直列4気筒2.4リッターターボエンジンである「T24A-FTS型」エンジンよりコンパクトとして搭載性を向上。GRヤリスのリアまわりに載るほどコンパクトで大出力なエンジンとして仕上げている。 トヨタは、2024年1月の東京オートサロン2024のときに、この赤いヘッドを持つスポーツタイプの「G20E型」エンジンと、銀色のヘッドを持つ高効率タイプの「N15型」エンジンを開発表明。2024年5月の「マルチパスウェイワークショップ」で、その開発目標についての説明を行なった。 トヨタの次世代を担うスポーツエンジンが、GRヤリスのリアミッドシップに搭載されて走り出したことになる。