スズキ ジムニーに三菱 パジェロに……国産四駆が駆けた冒険の記憶

クロカンと呼ばれるモデルが登場した当時、普段使いを考える人はほぼ皆無。世界的にみてもユーザーは限られた層に留まっていた。親しまれるきっかけを作ったのは国産車の台頭。そこから、我々のよく知るSUVブームが始まるのだ!!
※本稿は2025年8月のものです
文:九島辰也/写真:トヨタ、日産、三菱、スズキ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年9月26日号
【画像ギャラリー】「クロカン」が多くの人に親しまれ「SUV」へ!! ブームのきっかけを作った日本の四輪駆動車(16枚)
国産クロカンブームが世界のトレンドを作る

スズキ ジムニー(2代目・1981年登場)。初代からラダーフレームや副変速機付きパートタイム4WDなどを引き継ぎつつも、ふたり掛けの後部座席を設置して4人乗りに。後にEPIターボ装着モデルも登場
現代ではSUVと呼ばれる背の高いクルマだが、かつては“クロカン”や“四駆”、“フォーバイフォー”なんて呼ばれていた。
SUVという呼称の歴史は浅く、2000年にボクが「アメリカンSUV」という雑誌を立ち上げた時は、「SUVって何?」とほぼ全員に聞かれたもの。
クロカンと呼ばれるモデルが一般的になったのは、戦後のジープからだろう。このクルマに影響され、ランドローバーなどが生まれたのは有名な話である。
日本では1951年に開発されたトヨタ BJ型ジープが始祖とされる。まだJEEPのライセンスが確立する前の話だ。
ジープはブランドではなく、カタチとして認知されていた。三菱だけがジープを名乗ったのはウイリス社と提携していたからで、1953年からCJ3のノックダウン生産を開始した。
ただし、今日のように広く普及し始めたのは、1980年のランクル60誕生以降。ジムニーで言えば2代目から。ランクル40のようなワイルドでカッコいいモデルも登場してはいたが、一般的ではなかったのは事実だ。
1980年代に入ると、前述した2台のほかに、三菱 パジェロやトヨタ ハイラックスサーフ、いすゞ ビッグホーンなどが出てくる。
三菱はすでに三菱 ジープでこの分野の信頼性を得ていただけに、パジェロはすぐに人気に。スーパーローギアで他を圧倒する。パリダカでの好成績も背中を押した。

三菱 パジェロ(初代・1982年登場)。乗用車のように扱いやすく、四駆ブームの牽引役として確固たる地位を確立
その意味ではハイラックスサーフと、それを追うようにリリースされた日産 テラノは少し毛色が違った。こちらのベースはピックアップトラック。走破性よりも積載性を目的にして作られた。
ピックアップトラックにリアシートを付けて、ベッドをFRPのキャノピーで覆ったのが原形であり、2代目フォード ブロンコに準じている。要するにアメリカを意識したモデルだ。
そんな国産クロカンに影響を受けて誕生したと言われるのが、1989年デビューのランドローバー ディスカバリー。世界中でヒットする日本製クロカンを見て、レンジローバーよりも安価でカジュアルなオフローダーの必要性を見出し、発売に至った。
よってランクルが80系から100系に進化する1990年代になると、国内でもだいぶクロカンが浸透した。2代目パジェロも、2代目サファリも絶好調。
ただ、新たな潮流が見え出してくる。発信源は1998年誕生のトヨタ ハリアー。世界初モノコックボディベースの背の高いクルマである。
2000年以降は、その潮流に乗って各社乗用車ベースのモデルを発売。ポルシェをはじめ、背の高いモデルとは無縁だったブランドが次々と新型車を発表する。ハリアーもレクサス RXとして日本に上陸。そして呼び名もSUVへと変わる。
その後のブームは皆さんの知るところ。ランクルとジムニーはもはや簡単には手に入らない。個人的にもランクル70を買えなかった傷はまだ癒やされていない。
●九島辰也氏が選ぶお気に入りの国産クロカン/SUV
・いすゞ ビッグホーン(初代)
・三菱 パジェロ (初代/2代目)
・スズキ ジムニー(2代目と現行型)
・トヨタ ランドクルーザー40系(1960年)
・トヨタ ランドクルーザー60系
・トヨタ ランドクルーザーワゴン
・日産 サファリ(全世代)
・スズキ エスクード(初代)
・日産 テラノ(初代)
・トヨタ ハイラックスサーフ(初代・1984年)